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超高齢社会の日本でお買いものを楽しみ続られるように

こんにちは、ふくだと申します。

2020年10月にKAERU株式会社(旧 株式会社みまもりペイ)を設立し、認知機能の低下に不安のある方がより安心してお買いものを楽しみ続けられるためのアシスタントアプリKAERUの開発を行っています。

高齢化社会という言葉は耳慣れた表現だと思いますが、日本はすでにその水準を超え、現在は「超高齢社会」に突入しています。
その超高齢社会において我々のVISIONである「誰もがお買いものを楽しみ続けられる世の中にする」ために創業に至った経緯や想いをnoteにしてみたいと思いペンを取ってみました。(ペンというかキーボードというか。)

0.長いので最初にサマリー

・日本は継続的に高齢化が進み、認知機能の低下が起きたとしても幸せに、自分らしく生活できるような社会インフラの整備は重要性を増しています。

・日本のFintech・キャッシュレスは拡がりを見せ、今後はマス向けではなくバーティカルな領域に向けたサービスが面白いと思っています。


・KAERU株式会社は「誰もがお買いものを楽しみ続けられる世の中にする」ことを目指し、高齢化×Fintechの領域にチャレンジしています。

・ご興味持ってくださる方、一緒に挑戦してくださる方いたらぜひ!


1.日本における高齢化と認知症を取り巻く環境

高齢化率とは総人口に占める65歳以上の方の比率のことです。全人口に対して7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれます。

日本は1970年代に高齢化社会に入った後、急激に高齢化比率が上昇、2020年時点で28%を超え、2位のイタリア、3位のポルトガルはおよそ23%程度なので5ポイント以上の差がついています。

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<令和2年版高齢社会白書(概要版) より>

高齢化に伴い、認知症当事者の数も増加を続けています。
認知症とは脳の細胞が死んでしまう、または働きが悪くなることによって記憶力や判断力に障害が起きる状態です。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html

認知症当事者の数は2020年時点推計値で600万人、2025年には700万人に達するという予測が出ています。さらに、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)の方を含めると、その数は合計で約1,300万人に達します。
これは高齢者のおよそ3人に1人、全人口の10%に該当し、もはや認知機能の障害は決して珍しいものではなく、加齢とともに誰にでも起きる病気なのです。

こうした中で、年齢を重ね、認知機能の低下が起きたとしても幸せに、自分らしく生活できるような社会インフラの整備は重要性を増しています
また、認知症の人の金融資産は2017年で143兆円、2040年には215兆円に上る(第一生命経済研究所調査より)ことが想定されているおり、認知症になっても適切に経済活動を続けてもらうことはマクロな観点でも重要であると言えます。
自立的な生活を送ることは身体的弱化を予防し、医療費・介護費といった面でも正の影響があります。

2.認知機能の低下によって起きているお買いものに対する課題

認知症の症状は、中核症状と行動・心理症状の大きく2つに分けられます。

中核症状とは、脳の細胞が死んだり働きが悪くなることによって起こるもので、「記憶力の低下」「見当識の低下」「理解力・判断力の低下」「実行機能の低下」などが症状として現れます。
行動・心理症状とは、中核症状によって引き起こされる二次的な症状です。それぞれの方の正確であったり周囲の環境によって変わり、心が落ち込んでしまう方や焦りや怒りを感じてしまう方などさまざまです。

これらの症状は本当に人によってそれぞれであり、症状の進行度合いによっても変わります。同じ認知機能の低下といっても、軽度認知障害の方(MCI)と重度の認知症の方では症状が違いますし、またアルツハイマー型、レビー小体型といった原因の類型によっても違いがあります。

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<健康長寿ネット:認知症の中核症状
(https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/chukaku.html)より>


認知機能の低下はお買いものにおいても不便を生じさせます。
我々はこれまで150名以上の認知症当事者、そのご家族・サポーター、介護従事者、支援者の方などにお会いし、お話を伺ってきました。

短期的な記憶の障害は、買おうと思っていたものを買い忘れ、昨日買ったものを再度買ってしまう多重買いに繋がります。小銭の判別が難しくなったり、買うものの価格を足し上げる計算が難しく、レジの支払いで頻繁に紙幣を使った結果、おさいふの中身が小銭でパンパンになる方もいます。財布をなくしてしまうことにも気を配り、処理すべき情報で頭の中は埋め尽くされ疲弊してしまいます。

小さな失敗だと思いますか?確かに小さな失敗ではありますが、当事者の方は大きな不安を感じています。
レジでモタモタしたら後ろに並んでいる人に悪く思われるのではないか。失敗をしたら店員さんや家族に迷惑をかけてしまうのではないか。自信を失ってしまうには十分な出来事です。

サポートをするご家族にとっても当然他人事ではありません、介護負担を事由に仕事を休職・退職せざるをえない状況も増えていくのではないかと思います。
自立的に経済活動を続けることで体力の衰え、身体機能の低下や認知機能低下を抑制し、また、認知機能が低下しても出来得る限り自立的な生活を送り続けることは、ご本人のみならず周囲のサポーターの方にとっても極めて大事です。

3.私自身のこれまでのキャリア

私はこれまで、京都市役所→BCG→ネットプロテクションズ→メルカリ・ソウゾウ・メルペイ→フリーランスというキャリアを辿ってきました。
ウロウロと散らかったキャリアではありますが、ここ10年ほどはベンチャー、そしてFintech・決済というドメインでお仕事をさせていただく機会に恵まれました。

物やサービスの対価としてお金を払うという、決済自体はシンプルなものではありますが、ここ数年でも大きく環境が変わってきました。
2019年には国の政策としてキャッシュレスポイント還元事業が行われ、従来から利用されていたクレジットカードに加え、電子マネーが普及し、スマホを利用したQRコード決済もメジャーになってきています。

より簡便な支払い行動、お得なポイント還元、後払いを用いたキャッシュフローの自由度の向上など、人々の生活を豊かにしてくれていると感じています。
そして、他国に目を向けると日本のキャッシュレス普及率は相対的には決して高くなく、今後まだまだ伸びていく分野だと期待されます。
変化も大きく、今後も伸びるであろう、とても面白い分野だと思っています。

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<⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会:キャッシュレスロードマップ2021より>

ITリテラシーが高い方々を中心に多くの人に使ってもらう「マス向け決済」はここ数年で色んな会社がチャレンジし、普及が進んできています。
個人的な所感としては、今後はある特定のセグメントに着目し、そのセグメントの方が抱えている深い課題を解決する「バーティカル領域の決済」が注目されるのではないか、と考えています。

4.高齢化×Fintechに取り組みたいと思った理由

認知機能が低下した方向けのサービスというのもそのバーティカル領域の一つです。既存のキャッシュレスサービスでは、操作面の難易度、紛失のリスク、金銭管理の難しさといったいくつものハードルが存在します。

私はもともとシニア領域・認知症領域に強い思い入れがあって事業領域の選定をしたわけではありません。始まりは、Fintechや決済というこれまで関わってきた分野のどこかで誰かの役に立てるものをつくりたいというフワフワとした状態でした。

海外の事例を調べたり、いろんな方にお話を伺って課題を探したりという日々を過ごしている中で、認知症の診断を受けた方のお話を直にお聞きする機会がありました。
お金を払う際に非常に苦労されること、買ったことを忘れて同じものを何度も買いすぎてしまうこと、近所のコンビニがセルフレジになり操作がわからず行けなくなってしまったこと、家族に過度に心配され買いものに行かせてもらえなくなること、などなどお伺いするどれもが手触り感がありました。

当たり前になっていて普段あまり意識していませんが、買いものをすること、自分の意思でお金を使うこと、というのは楽しいことです。逆にそれを制限されるのは尊厳や自信を傷つけてしまうものです。

アメリカにはTrueLinkFinancialというスタートアップがあり、自身でお金のコントロールをすることが難しい方に向けた管理・制限機能付きのプリペイドカードを発行している事例があります。
世界で最も高齢化が進む日本でこそ必要になってくるサービスであると確信し、この高齢化×Fintechの領域でチャレンジすることを決めました。

5.これから

我々は現在、認知機能の低下に不安のある方がより安心してお買いものを楽しみ続けられるためのお買いものアシスタントアプリの開発を行っています。
決済サービスに閉じず「お買いものアシスタントアプリ」としているのは理由があって、認知機能が低下した方のお買いものにおけるペインは決済だけでは解決できないからです。

2021年9月にiOSで、10月にAndroidでβ版のKAERUをリリースしました。
β版には決済機能はまだついておらず、短期記憶の障害を補助するお買いものメモ機能のみが利用できます。お店に近づいたらお知らせがくるので、せっかくメモを書いたのにその存在を忘れてしまうということにもう悩まされずに済みます。幸いなことに我々のサービスをヘビーに利用してくださる方もでてきました。
β版のリリースにあたってもたくさんの方にインタビューさせていただき、そこで得たインサイトを元に細かい部分にこだわったものとなっています。もしよろしければ触ってみていただけますと嬉しいです。
https://kaeru-inc.co.jp/service

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今冬にはKAERUアプリに決済機能を実装していきます。家族等のサポーターと連携しながら利用できる決済サービスで、基本的な利用は本人で行いつつも、難しい操作や緊急時には適切にサポーターにサポートをお願いできるものです。簡易な操作性や紛失リスクの低減など、特有の課題にもアプローチしたサービスで、お客さまの課題解決をしていきます。

6.さいごに

長文になってしまったにも関わらず、ここまで読んでくださりありがとうございます。
初めての起業で、一筋縄ではいかない領域へのチャレンジだと感じていますが、良い仲間とともに少しずつでも前に進むことを楽しめています。
共同創業の岡田はネットプロテクションズ時代の同僚で腹を割って話せる友人です。他のメンバーも決済領域に精通しお客さまへの圧倒的Empathyを持ったエンジニア・デザイナー・BizDev、高齢化・認知症の領域で多くの方とお話し信頼を築いてきたコミュティカルティベータなど素敵な仲間に囲まれています。

KAERU株式会社では「誰もがお買いものを楽しみ続けられる世の中にする」ことを目指し、一緒にプロダクトづくりしてくださる仲間を探しています。特に直近ではプロダクト開発・仮説検証速度をあげるためにエンジニアの方の力がより必要だと思っています。

もし我々のチャレンジに共感してくださる方がいらっしゃいましたら、カジュアルにお話させていただけるととても嬉しいです。
https://en-gage.net/mimamoripay_career/work_1772541/
※2021年7月に社名を「みまもりペイ」→「KAERU」に変更したため名残が残っております

これまでいろんな機会を与えてくださった方に感謝するとともに、少しでも良いサービスをつくって社会に還元していけたらと思います。
いつか大きなチャレンジを振り返って仲間とともに美味しいお酒を飲める日が来るように引き続き頑張ってまいります!

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