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適量って何?~美味しいパンケーキを食べながら~

同じことを繰り返してしまうのは何故だろう?
美味しいはずのパンケーキを食べながら、お腹をさすり考える。

リヨンの一角にあるブランチのお店。いや、ブランチっておしゃれな言葉を使っては見たけれど、京都の実家では朝ごはんでも昼ご飯でもない時間に食べる食事に『ブランチ』なんておしゃれな言葉は使ったことがない。『朝昼兼用』と中々渋い呼称を使っていた母親を思い出してブランチの中で頼んだチャイを飲みながら吹き出しそうになる。

それはさておき。
実はこのお店に来たのは2回目。前に来た時は開店前のお店の前で待ち構えて「1人なら。1時間後にはお客さん来るけどそれでもいい?」と優しい定員さんに何とか席をゲットしてもらって入ったお店。その後から次々にお客さんが入って来る大人気のお店だった。
笑顔の素敵な恰幅の良いお姉さんが笑顔で窓際の席に通してもらったのがなんだか誇らしくて、嬉しかった。

接客もすごく丁寧で親切。それに、久しぶりに食べたパンケーキが美味しかった。フランスではパンケーキを食べたことがなかったのだけれど、これも今の時代なのだろうか、町を歩いているとベーグルやらタピオカやら、何だか日本でも流行っている他国の文化が入り込んでいる。

注文時にはブランチのセットが想像していたより高くて、顎が外れるかと思ったけれど、せっかく席を確保できたのだからと、豪勢なセットを頼む。
何度も注聞き返されながらも、たどたどしいフランス語で注文し終えた料理は、想像以上の速さで机の上に並んだ。
ジュースにチャイ(ホットドリンクは選択式)フランスパンにジャム2種、ヨーグルトにはブルーベリーとこれでもかと言う程のシリアルが乗っていた。これにさらにパンケーキと、注文時に文字では見ていたけれど、実際に出てくると結構なボリュームがある。
2枚重なったパンケーキに半熟卵の目玉焼きもさも当たり前かのように2枚重なっている。これがフランススタイル! ……いやそんなわけはないか。
カリカリのベーコンとバターも乗っかって、メープルシロップもお皿の底にたまる程たっぷり。

パンケーキは一口食べるとちょうどよい塩気にメープルの甘さがたまらない。甘いのと塩辛いのを交互に食べつつ、ヨーグルトのシリアルは身体にいいはずと、そこだけ無駄に健康志向を発揮する。
食べ終わる頃には満足を通り越してスポーツ後のようにへとへとになって口から今にも脂分が飛び出しそうだった。

チャイも日本で出てくる同じかそれ以上にまったりしたチャイミルクティーで、パンケーキのバターの上にさらに重くのしかかってくる。

うぅ……めっちゃおいしかったはずなのに、なんで辛くなってしまっているのだろう。
次来るときはチャイもやめるし、ブランチセットを注文するのをやめよう。
そう決意して1回目を終えたはずだった。

それなのに……
私はバカなのか?

気付けば同じセットを注文していた。
だって、ジュースにホットのドリンク(選択式)、パンケーキとヨーグルト。フランスパンは毎日のように食べているから食べなくてもいいけど、久しぶりだし、やっぱりブランチにしよう! しかもフランスでチャイを見かけることが少ないからやっぱりチャイだよねーって。

いや、自分で言っていても悲しくなるけれど、
やっぱり自分はバカなのか?

今回は大丈夫だろうと。フランスに来て半年は経つから胃も大きくなっているし、バターにも口が慣れているだろう。なんて、どれだけ自分に甘いのだろう。

初めに出て来たフランスパンも少しぐらいならと、もしゃもしゃ食べる。1かけだけと思いつつ、2種類のジャムが出てくるとついつい両方食べたくなる。
確かに始めは好調なのだ。でもそれは前回も同じ。
しばらく美味しく食べ続けるのだが……

あの感覚が蘇る。残り3分の1を過ぎたあたりだろうか? ふとした瞬間に、
あれ……おかしい。美味しさを感じられなくなってきている……
それからは修行のよう。

なんで同じことを繰り返しているのだろう。
1回目に来た時は「初めてだから」と自分に言い訳が出来るのだけれど、2回目ともなるとそうもいかない。分かってたはずなのにと、せっかくの美味しいパンケーキを前に、自分で自分を叱咤する結果になってしまった。

けれど、この学習のしなさは今に始まったことではない。
出てきたものはすべて食べる! の精神で育てられてきた私は、飲み会や誰かの家の鍋パーティーなんかでも料理を残すと言うことが出来ない。
みんな自分の食べたい分を調整しながら食べているようなのだけれど、私はどうもそれが出来ない。特にお酒を飲まないこともあって、食べることだけが楽しみなのもある。みんなが食べ残した料理を一人ひたすら食べ続けて最後には苦しくなる。

このお店でも、食べられるだけ食べて、それ以外は残しても誰にも文句は言われないはずなのだ。そんなことは分かっているのだけれど、私にはどうにもそれが出来ない。

いつになったら自分に必要な量が分かるのだろう?
注文するタイミングで考えることが出来るようになる日はいつか来るのだろうか。それは遠い未来のように感じてしまう。

やっぱりコーヒーにしておけば良かったと思いながらチャイミルクティーの甘ったるい感覚を存分に口に含ませながら、一人おしゃれなカフェで反省会を開くのであった。

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