読書感想文「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」

システム開発に携わることが多い職業柄、みずほの件は噂ベースで色々聞いていた。現代のサグラダファミリアと揶揄され、その時は笑って聞いていたが、実際の数値を見ると背筋が凍る思いである。

総工数35万人月
費用4500億円(スカイツリー7本分)
期間8年
開発関連会社1000社

もはやわけがわからない。

超大規模システムをゼロから要件定義から構築する過程、外的要因として3行合併に伴う銀行自体と既存ベンダーを含んだ争い、既存システムの全容を知る者がいないなど、胃が痛くなる前提が多すぎた背景。

正直読んでいて耐えられなかった。

自分が経験してきたシステム開発は全てみずほの縮小版でしかなかったのではないか。それでもあんなに苦労していたのに。

本書では構築の過程から、研修など業務移行の方法まで詳細に説明されており、非常に勉強になる。システム開発に従事する者には必読書になるであろう。

2025年の崖と形容されるが、まだしばらくは(みずほほどの巨大案件はなさそうだが)基幹システムの刷新に向けたプロジェクトがでてくるであろう。個人的にはできれば踏み込みたくない領域ではあるが、コンサル会社としては仕事があるということであり、個人としては成果を挙げるフィールドがあるということだ。

で、きっとこれがひと段落すると仕事なくなるんだろうな。

UFJ,SMBCはまだシステム刷新をしていないという事実も気になる。
FinTeckが流行るこの時代、システムを最大限に活用した銀行業務はみずほの独り勝ちになるのだろうか。
あるいは、そもそもメガバンクという銀行形態が不要となり、みずほ含め3メガもろとも滅びるのか。業界外の人間としては非常に楽しみである。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?