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小論文の講座 第8回 表現④文末表現

小論文、というよりむしろあらゆる文章を書くときに悩むのが、文末表現です。同じ文末を繰り返さないということですら、書くのに慣れていない人にとっては悩みの種です。小論文では「〜です。」「〜ます。」の敬体では書きませんが、「〜だ。」「〜である。」の常体であれば何でも良い訳でもありません。小論文にふさわしい文末というのがあります。頻出の文末表現を確認していきましょう。


「思う」「考える」

自分の考えを述べるときに思いつきやすい表現として、「思う」「考える」があります。特に「思う」は感想文や討論で使うことが多いので、小学生から馴染みのある文末表現と言えます。
しかし、「思う」は小論文では用いない方が良い表現なのです。使用は避けるべきでしょう。

思うと考えるの違い

ともに精神的な活動を表す語であるが、「考える」は知的に分析することであり、「思う」は情的、感覚的な心の働きや瞬間的な判断などを示すのに用いる。「クイズの答えを考える」とはいうが「思う」とはいわない。◇大音響を耳にしてすぐ口にするのは「雷が落ちたかと思った」であり、「考えた」ではない。◇「彼女のことを思う」は、思慕したり、心配したりすることを表すが、「彼女のことを考える」と言えば、より分析的理性的にその状況について思いめぐらすことを表す。「将来は医師になろうと考えている」といえば具体的な手だてまで含めて計画していることであり、「思う」では漠然と希望しているだけという感じがする。

『デジタル大辞泉』

このように、「思う」は情緒的、感覚的な心の動きを示す語なので、論理的に述べる小論文には適さない表現となります。漠然と希望しているだけというように、主張文に使うには根拠が乏しく、自説の自信の無さを露呈しまう表現なのです。
だからこそ、知的に分析する「考える」のほうがふさわしいと言えるでしょう。

「考えられる」


一方で、「思う」「考える」はともに主語が「私」となります。自分の考えをはっきりと示せる点では良いですが、主観的な思考も強くなります。客観的な視点を求められる小論文では、主観的な「考える」は多用できません。そこで、「考えられる」という、主語(筆者)の存在を消して、客観的な印象を強めていきます。
ただし、この表現は根拠がある場合でないと客観的であることを強調できません。

その他の主観的表現


「〜と感じる」などの感性に基づいた表現も主観的なのでふさわしくありません。

「〜ではないだろうか」は、問いかけることで判断や責任の一部を読者に委ねています。自信のない表現の裏返しとも捉えられてしまいます。また、反語として使われることもあるので、意味の取り違えが起こり得ます。

「〜という気がする」「〜と願いたい」は、かなり弱気な表現なので、小論文には不適です。


実現可能性

課題解決が求められるタイプや、将来の事柄を述べる小論文の場合、これからの推測を述べることが求められます。推量の「〜だろう」がよく使われますが、実現可能性の違いで使い分けるのが良いでしょう。


「〜はずだ」・・・ある事実から当然導き出される事柄について使われる。

「〜に違いない」・・・「はずだ」に比べて直感的判断を伴う場合に使われるので、実現可能性が低くなる。

「〜と推測される」・・・事実やデータから導き出される事柄について使われる。

「〜の可能性がある」・・・こちらも客観的に可能性がある場合に使われる。

「〜かもしれない」・・・直感的に可能性がある場合に使われる。


これらの表現は副詞「きっと」「おそらく」「もしかすると」などを用いると、より実現可能性の差がはっきり出ます。


一般論

小論文は一般論に対する独自の意見を述べるという性質上、一般論や現在の社会の状況を述べることが多いです。よくある間違いとして、「〜をニュースで見た」「調べると〜ということがわかった」など、主語が「私」となる主観的表現があります。

✕ 教員志望者の減少は教員の勤務時間外労働が多いからということをニュースで見た。
✕ 調べていくと、日本では合計特殊出生率が年々減少しているということがわかった。


「される」「言われる」

主語「私」を消して、客観的に表現していきます。「される」「言われる」は、主語が「人々」や「社会」となるため、客観的描写に見えます。学術論文では、そこの根拠となる事実やデータを示す必要があるので、使用は控えられていますが、字数制限のある小論文では、そこまで示す字数の余裕もないので、「される」「言われる」で一般論であることを示しておくだけで構わないでしょう。

〇 教員志望者の減少は教員の勤務時間外労働が多いということが一因とされている。

事実として述べる

事実は「だ」「である」を用いて表現していきましょう。私が知っているかどうかは論文では大事ではありません。

〇 日本では合計特殊出生率が年々減少している。


まとめ

・「思う」ではなく「考える」「考えられる」を使うこと。

・推測する場合は、実現可能性の程度によって使い分けること。

・一般論は主語「私」を排して、客観的表現をしていくこと。



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