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あれからまもなく10年㉓ 〜命について(2)〜
私が病院に駆けつけた時は、普通に会話ができた母でしたが、時間の経過とともに、寝ている時間が増え、会話は徐々に少なくなっていきました。
母に付き添って二日目、主治医が訪れ、こう言いました。
「Kさん、明日から個室に移っていただこうと思います」
すると母はこう応えたのです。
「先生、私、個室に行きたくない。だって先生、個室に移動して、戻ってきた人いないじゃないですか!」
沢山の入院仲間を見送った母は子どものように駄々をこねましたが、主治医の熱心な説得に折れるしかありませんでした。
個室に移る前、父と私と弟は主治医に呼ばれました。
「個室に移ると、酸素マスクを装着するため、会話が難しくなりますから、今のうちに話したいことを話してください」
母の命の期限を頭では理解しながらも、「母が亡くなるわけがない!」と矛盾する心がぶつかり合い、私は混乱し、結局は何も言えないまま個室に移りました。
個室に移るとほぼ24時間母は寝たきりとなりました。
私は発熱する母のために、水枕とタオルを交換するのが日課となりました。
それ以外、私が母にしてあげられることはなく、ただただ母の横で日に日に弱り果てていく母を見守るしかない無力さに苛立ち、父や弟とぶつかることが増えていきました。
「ちょっと外の空気が吸いたい。」
私は弟に母を任せ、一人実家に戻り、誰もいないリビングで号泣しました。
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