クリエイターの寿命について。

先日のこと。弊社が契約している税理士さんから「なんだか吹っ切れたように攻めてますね」と言われた。その背景には、左ききの道具店の仕入れ増と公庫からお金を借りる決断などがあるのだけれども、攻めている、と言われると、本当にそうなのか実はよくわかっていない。

もしかしたら、逃げているだけなのかもしれない。迫り来る、僕のクリエイターとしての寿命から、逃げて逃げて、逃げ切るために、ただ足掻いているだけなのかもしれない。

こういう気持ちは年齢ごとに湧き上がってくるもので、今の気持ちは36歳の僕だけのものなので、ここにメモしておこうと思う。もしかしたら誰かの参考になるかもしれないし。

僕のコピーライターの寿命は45歳。

いくつかの決断をして、税理士から「攻めてますね」と言われるには理由があって。それは独立からずっと考えていた自分の職業寿命について、僕なりの結論が出たのだ。

僕がコピーライターとして現役でいられる年齢は45歳。つまり、あと9年で終わる。

もちろん、人生は続いていくし(そうあって欲しいし)、仕事も続けていきたい(70まで働きたい)。でも、おそらくそれはピュアな意味でのコピーライターの仕事ではなくて、もっと複合的で、別の言い方をすれば手を動かすことが減る。

手を動かさなくなったコピーライターは、もはやライターの範疇にはない。想像すると悲しいけれど、その流れはすでに生まれていて、たぶん止めることができない。

実は、会社員時代から職業寿命の短さについては思うことがあった。僕が20代の制作者だったころ、仕事を依頼する相手のほとんどは20代半ばから30代中盤。ときどきもっと年上の方もいたけれど、その多くは上司からの要請で。若い僕らがお願いしたい人の多くは、同じく若いクリエイターだった。新しいものを作りたいのだから、新しい人に頼みたかった。それはそのまま、自分が候補から外される理由になっていく。

もちろん、例外はある。強固な信頼関係があれば仕事は続くし、年を経るごとに深まる味もある。自分の名で仕事をする専業ライターは、一生の仕事だと思う。

しかし、クライアントのお金を預かってチームで制作をするケースにおいては、「呼ばれる」ことがすべてだ。現場に呼ばれなければ、仕事にならない。そして、大体の制作現場は若いのだ。

年を重ねても自分をアップデートして、現場で活躍し続けられる人もいる。でも、そういったスペシャルな人は稀だ。多くは、知らぬ間に消えている。引退宣言をするわけでも、転職報告があるでもなく、ひっそりと、いつの間にか、現場で声がかからなくなっていく。

この事実に、おそらくほとんどの制作者たちは気づいている。でも、あまりにも生々しいから、目の前の仕事に逃げるのだ。僕もそうだった。ただ、独立してしまったからには、目をそらすわけにはいかない。

ひとまず僕は、コピーライターという肩書きの現役を45歳と決めた。これは全然悲観的なことじゃなくて、この歳までに、その後の人生を費やす自分だけの仕事を作るという意思表示だ。45歳までは制作の仕事で売上をあげる自信もある。だから借金もできる。投資もする。おお、それってなんだか楽しいぞ。

人生100年のスパンで考えたら、9年という年月は短すぎるけれども、よく考えたら意外と長い。自分のここ9年を振り返れば、転職を2回して、結婚して、マンションを購入して、独立して、娘が2人できるぐらいの時間だ。

さて、これから9年、どんな面白い場所にたどり着けるのか。そしてこのエントリーを、未来の僕が見て、どんな感想を持つのか。今から楽しみで仕方ない。


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