USBの紛失事故についての元人事の見解
尼崎市で市民の個人情報が入ったUSBメモリを紛失したという騒ぎがあったらしい。
結局、USBは見つかったらしいのだけれど、なんとも言い難い事故だ。
このニュースを見たときに、妻が私に聞いた。
「このUSBを紛失した社員って懲戒解雇になるかな?」
これは非常に難しい問題だと思った。
考えるために、まず事象を整理したところ問題点は下記の5つくらいだろうか。
・許可なく個人情報の入ったUSBを持ち出した
・泥酔してUSBを紛失した
・紛失に気が付いた後も適切な報告を怠った
・結果として依頼元である尼崎市と市民46万人に多大なる迷惑と不安を与えた。
・受託企業の信頼を失墜させた
さらに、今後の争点となりそうなのは下記の3点くらい。
・実際に個人情報の漏洩があったかどうか(パスワードの変更履歴はなかったと報じられているが、実際は?)
・当該のUSBの紛失による、実害がどの程度発生しているか
・受託企業のビジネス上のインパクトはどの程度のものか
あとついでに、実際に処分を考える際のポイントが下記の3点くらい。
・会社組織として、適切なルールや規則が設けられていたか
・ルールに即した指導がなされていたか、管理体制は機能していたか
・当該社員にこれまでに類似の失敗履歴はあるか、指導履歴はあるか
もし私が、このUSBを紛失した社員が所属する企業の人事だったとしたら、ここに挙げたようなことを確認したり、考えたりするわけです。
あと一般的な裁定なんかについても調べます。
「個人情報の漏洩 懲戒」で検索
するとこんなサイトが出てきました。
ボリュームはしっかりありますが、非常に分かりやすく解説されています。
特に今回の事案に関係が深そうなところを抜粋してみます。
すなわち、一般的には懲戒処分による解雇は難しいという事です。
ただ、今回の社員の対応としては、無断でデータを持ち出していたり、問題が発生していたことを適切に報告しなかったり、しかもそれが重大な過失であるにも関わらず・・・というわけで、結構責任としては重たい印象です。こんな場合、元人事の視点としては、情状酌量の余地を見出すのか、さらなる"事故"のリスクを回避するためにシビアな対応するのか・・・ということを考えます。
シビアな対応というのは、ストレートに表現すると退職勧奨です。
言葉を選ばずに言ってしまうと、会社に在籍させておくことをリスクと考え、自主退職してもらうように社員に働きかけることです。
もっとも、懲戒解雇ではありませんので退職勧奨に強制力はありませんし、度をこえて執拗に行うとパワハラとなってしまうリスクもあります。
まぁ、この辺は人事の力量というところでしょうか。
もちろん、この社員が普段はマジメで一生懸命に仕事に取り組む方で、反省も十分していて、改善の見込みがあるということであれば、情状酌量として、軽めの懲戒処分(戒告や減給など)でとどめるという判断もあり得ます。
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久しぶりにザワっとする事故だなと思いました。
今回の事件はUSBメモリの紛失でしたが、PCや携帯など個人情報メガ盛り端末を持ち歩いている人は、明日は我が身と思って気を付けなければ・・・と背中がヒヤっとした感じです。お酒はほどほどにというのはよく言ったものですが、まさにという感じですね。
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