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採用の現場で見る優秀な人とは?


採用担当者であれば一度は取り組むミッション「優秀な人を採用セヨ」

さて「優秀」とはどういうことだろうか。どのように見極めているのだろうか。結論から言うと、企業によって、職種によって「優秀」の定義は異なる。ではどのように異なるのか、特に中途採用においての「優秀」について考えてみる。

そもそもなぜ採用活動を行うのか。
企業体としての至上命題は組織を拡大し、成長し続けること。そのために事業や売上(利益)の拡大が必要であり、実現のために人的リソースが必要になる。

従って、採用計画は事業計画の中に織り込まれている。事業計画では、いつ、どの領域で、どのように攻め手を打つかの戦略が描かれている。その戦略をもとに実現のための組織図を描く。既存のメンバーやリソースを組織図の中に配置していき、不足する部分が採用必要枠となる。もちろんこの採用必要枠については、既存メンバーの昇格や派遣社員での充足、或いは業務自体の外部委託なども併せて検討されるが、中長期的な観点での必要性が見込まれる場合に外部採用という判断に至る。

従って、採用枠には必ず明確な役割や求められるスキル、経験が要件としてあらかじめ定義されている。

例えば、採用担当者であればこんな感じ。
・年間で50名程度の採用経験がある
・SNSを使ったダイレクトリクルーティングの経験がある
・対人コミュニケーション能力に長けている
・社内外の調整業務を円滑に行うことが出来る
・パワーポイントを使ってプレゼン資料の作成が出来る
・エージェント管理の経験がある
・向上心があり自発的な行動が出来る
・変化に対して柔軟に対応出来る
・ビジネスレベルで日本語でのコミュニケーションが出来る

選考の中ではこれらの要件をどの程度満たしているか、面接や場合によっては課題提出や実技試験などを用いて確認を行う。

もちろん要件をより多く満たしている人の方が“優秀”な候補者となるが、難しいのは項目数での比較ではないところだ。前述のケースだと9項目の要件があるが、9項目全て満たしている人が、6項目満たしている人よりも必ずしも優秀とは判断されない場合がある。

どういうことか。
例えば「年間で50名程度の採用経験がある」という用件に対して、1メンバーとしての経験なのか、プロマネを全て行っていたのか、予算計画まで担当していたのか、どういう立場や役割を担っていたかによって、経験値は異なる。また50名の採用を1年かけて行っていたのか、半年で行ったのかといった時間軸の観点でも経験値やスキルレベルを判断できる。

こういった経験であったり、資格の有無といったものはハードスキルと呼ばれ、評価方法や基準を具体的に設定することが出来るので判断しやすい。

一方で「対人コミュニケーションスキル」や「向上心」といったものは、ソフトスキルと呼ばれ、抽象的な要素も多くスキルの高低を図ることが難しい。もちろん、コミュニケーションスキルであれば、論理性であったり、理解力であったり要素分解して評価することは出来る(というかそうしないと印象評価になってしまう)が、それでもハードスキルと比較すると評価が難しく、候補者同士の比較となると尚のことだ。

さらには採用の“要件”とは明示されていなくとも、組織との相性や志望熱意のようなますます曖昧な要素の有無も、“優秀”かどうかの判断に影響を与え、惑わせることも多い。実際にどれだけ高いスキルの人であったとしても、企業の風土や理念と個人の価値観がかけ離れていれば、早期離職などお互いにとって不幸な結果となることも少なくはない。「優秀だけれど、うちではない」という判断があるのはこのためだ。

また別の観点で言及をしておくならば、絶対的な必要要件を満たしているかどうかだ。先程の9つの要件の中で、これを満たしていなければ他の項目を全て満たしてたとしても採用しないという要件が“絶対的な必要要件”である。
例えば、日本国内の採用であれば「日本語」は必須となることが多い。これもまた「優秀だけれども採用しない」となる要因の一つだ。

ちなみに満たしていなくても採用にいたるような要件については「あれば尚可」などと捕捉されていることが多い。

突出した特定の要素を重視するのか、或いはバランスを求めるのかは、採用時点の状況、将来の計画、既存メンバーのスキルセットなどによって判断が異なる。

自分が採用された際にどのようなことを期待されているのか、自分の特徴と組織がマッチするのかが不安な場合は、スペシャリストとジェネラリストのどちらを求めているのかを質問したり、その職種にとって重要なスキルとその理由を確認してみると確認がしやすいだろう。

さて、採用担当の目線で考えてみる。
採用の要件に見事合致する候補者が現れたとしよう。(実際に要件に完全合致する候補者が現れることは非常に稀だ)
そういった候補者が現れた場合、選考における選ぶ側、選ばれる側の立場は逆転する。ある企業にとって非常に優秀なと評価するされる候補者は、同時に他の企業でも高い評価を受けることが多く、候補者側に選択権がある状態になる。

そもそも採用活動は企業と候補者がフェアに選び選ばれる関係性であるべきと考えているが、候補者側からするとまずは内定を得なければ、選択肢は限られる。一方、企業側からすれば内定を出したからといって必ずしも承諾を得られるわけではないし、魅力訴求は内定を出した後に行っても効果は低く、選考の初期段階から継続的に行う必要性がある。

私が採用を行なっていた際には、面接は情報交換の場だと捉えていた。候補者と企業がお互いの手の内をオープンにし、フラットに会話することでミスマッチを無くし、長い目線でのお互いの幸せに繋がると考えていた。

今もその考えに変わりはないが、どちらも目先のキラキラに捉われすぎないようにいずれの立場であってもサポートできるようにしたい。

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