農家の姉と、お互いの専門分野と。
私には3歳上の姉がいる。
私から見ると、姉の人生は中々に個性的なように見える。
大阪で生まれ、よくある会社員家庭で育ち、短大を卒業した春に、姉は一言こういった。
「私、北海道行ってくる」
この言葉を聞いた時、旅行でもしてくるのかと思ったら、その春から現在に至るまで20年以上、姉は北海道で生活をしている。
北海道に移住した姉は、最初はファームステイをしながら、いくつかの農家を巡っていたらしい。
どうやってそんなツテを見つけたのか、ハタチそこらの若者が、中々の行動力だと身内ながらに尊敬する。
その巡りあわせのどこかで、現在の旦那さんと知り合って、結婚して 農家の嫁 になった。
大阪の実家で暮らしていた頃は、植物や動物に全くと言っていいほど興味がない人だったので、私にとってはかなり意外な選択に感じた。
姉が嫁いだ農家は、十勝地方の大規模農家で、姉の家から隣の家まで、数キロ離れているという。(家と家の間は畑)
以前に畑の広さを教えてもらったけれど、ケタが大きすぎて忘れてしまった。野球場〇個分みたいな広さだったと思う。
主に、じゃがいもや豆類を栽培しているらしい。
約20年もの間、農家として生活しているので、当然と言えば当然だけれど、その道のプロである。
家庭菜園程度のことであれば、何を聞いても大抵のことはすぐに教えてくれるし、十勝でとれたジャガイモがどのような製品に使われているかとか、誰もが口にしたことのある有名商品が、実は十勝でとれたジャガイモで作られているとか、流通の裏側なども教えてくれる。
ちなみに、夏場においしいトウモロコシがそこそこのお値段で売られているのは、手摘みされているかららしい。こういうのを付加価値事業と呼ばれているらしい。
一方、コンビニなどで売られているコーンパンなどに使われているトウモロコシは、機械でガーッっと収穫するので、安価で流通しているらしい。
さて、そんな姉には、高校3年生になる娘がいる。
大学進学させる予定らしいので、まだ少し早いとは思うが、就活のことを姉から聞かれることがある。
こんなLINEが唐突に送られてきた。
「新卒採用(就活)の時に、履歴書にインターン経験ありますって書いた方がいいの?」
ちなみに私の回答はこちら。
「インターンの経験があって、そのことを突っ込まれたいなら書いた方がいいし、聞かれたくなければ書かなくてよい。 あと、経験がないのに書くのはアウト。面接のときに、嘘は結構すぐバレる。」
前述のとおり、姉は学生生活を終えて、すぐに農業の道に入ったから、就職活動の経験は一切ないし、一般的なビジネスの経験もない。
しかし、娘には農業以外の道も選択肢として持たせたいようで、就職活動のことなどをたまに聞かれる。
私は、キャリアの大半で、採用や採用に付随する業務に携わってきたので、姉が農業のプロであるのと同様に、私は採用のプロ(だった)と自認している。
そういう点で、姉にとって、私の話は専門家の解説というような位置づけで興味深いらしい。
逆に、私は姉から豆の収穫から出荷までの作業工程の話を聞いたり、加工食品の流通の話を聞いたり、いわゆる 生産者の声 をじかに聞くのが面白い。
姉弟でこれほどキャリアが正反対に異なることは珍しいのかもしれないけれど、互いに専門領域があるというのは、中々ありがたいことなのかもしれない。
実家で一緒に暮らしていた頃は、仲が悪くてロクに会話もしなかったけれど、お互い大人になってこうやって話せるようになったのは、距離感が変わって、それぞれの立ち位置が変わって、コミュニケーションの取り方がうまくなったり、相手をリスペクトすることを覚えたからなのかもしれない。
姉は北海道で、私は九州なので、実際に顔を合わせるのは年に1回あるか無いかくらいだけれど、つかず離れずの距離感を維持出来たらいいなと思う。
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