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真っ白なキャンバスに描こう!:調べる前に考え抜く

はじめに

魂がこもった、とか、血が通った、という表現があります。温かみとか配慮がありつつ、しっかりと役割があり機能するもの、という意味合いだと思います。

社会の問題もそうですし、個人や悩みや組織の課題について、その解決策を考えることは大事なことです。そして、そこに魂がこもり、血が通っていることが理想でしょう。

私は、まだ解決できていない複雑な問題に対して、初めから理路整然と解決方法を考えて、完ぺきな計画を立てて進めることは、良くないと思っています。そもそも、現実的でも合理的ありません。

もちろん何も考えないで進めることも良くないので、考えつつ、できることから始める。ある程度大胆な事でも、小さな事から試してみて実際の効果と影響を確認する。時には失敗したりやり直したり、全く違うやり方を試してみたりも必要でしょう。そういう試行錯誤の末に出てくるやり方には、自然に魂がこもり血が通います。

こうして実現した解決方法やノウハウは、属人的で、どこが重要なポイントなのかが把握しにくいものになっている可能性が高いです。このため、大きく拡張したり、他の人や組織に広げたりするためには、改めて手順にまとめたり、試行錯誤の中で気が付いたポイントやコツを他の人にも分かりやすく整理することが大切になってきます。

このように最初は実践的に試行錯誤し、そこで培った方法やノウハウを整理して広げるという方針を重視する考え方を、私は再構造化主義(リファクタリズム、Refactorism)と呼んで提案しています(参照記事1, 参照記事2)。

この記事では、さまざまな問題を考える際に、私が日頃から心がけていることについて紹介します。今まであまり自分の中でも意識していなかったのですが、再構造化主義の視点から自分のやり方の良い点に気が付いたので、共有したいと思ったのです。

調べてから考えるか、考えてから調べるか

私は、新しい問題や物事を考えるときに以下のようにしています。

  • 文献や他の人の意見を調べる前に、まず自分の中で考えます。この時に徹底的に考え抜いて、自分の納得ができるところまで考えます。

最近、考えを整理して記事を書いた時に、チャットAIに誤字脱字のチェックをお願いしつつ感想をもらうようにしているのですが、他の人や書籍を調べてみると良いとアドバイスが来ることがあります。

その時に思ったのは、なぜそんな「もったいないこと」を提案してくるのだろうという気持ちでした。

答えや他の人の見解を知る事は、後からでもできます。しかし、調べる前に考えるという機会は、二度と手に入りません。真っ白なキャンバスに自分で考えを埋めていくのです。この機会を最初から手放すなんて、どうしてそんなもったいないことを平然と言ってくるのでしょう。ドラマや映画を途中まで観て、その感想を求めたら、ネットでネタバレ記事を探しましょうと言われたような気持ち、と言えば伝わるでしょうか。

ただ、振り返ってみると、私と同じようにしている人を見かけた覚えがないようにも思えます。案外、私は少数派なのかもしれません。

残っている物には意味がある

また、自分で考え抜くときに、この時に、この問題がなぜ解決されないのかについても意識を向けます。自分で問題を勝手に単純化したり、見たいものだけを見てしまう癖が人にはあります。他の人の意見を調べる前に考えるため、この点を見落とすと、独善的で空回りの思考になってしまいがちです。

自分よりも頭の良い人が多数取り組んでも解決できていない問題ならなおさらです。そこには私の考えが及ばないような複雑さがあり、それはきっと、私はあまり大切にしたり注目していないけれども、当事者の誰かにとってはとても大切なものだったり、超えられないような"何か"があったりするのだと思います。

あるいは、まだきちんと整理されておらず、私の目からは無駄で意味のないように見えるモノやコトにも、誰かが実践的に積み上げてきた魂のこもり血の通った意味や価値がある可能性があります。そこに気が付くことは、問題の解決は難しいとしても、問題の本質に近づくための重要なステップです。

自分の考えに自信を持つ

そういったことを繰り返して自分なりに納得ができるところまで考え抜いてから、ようやくその問題について、他の人の考えや専門家の分析を調べてみます。

自分の中で魂がこもり血の通った思考が積み上がっていると、他の人の意見や専門家の見解が、クリアに見えてきます。そして、自分とは異なる見解や意見を持っている人を見つけた時に、わかることがあります。

それは、自分の思考の過程で出てきて、自分がそれは違うなと否定することができた意見は、もう誰にも覆せないという自信です。

その意見を表明している人が、運よく詳細な理屈を書いていることがあります。それを読んで、もちろん私が考えてもいなかった視点や要点が書かれていて、なるほど私もその視点でもう一度考え直そう、と思う事もあります。あるいは、その人の思考過程が、すべて私の思考経路の中に納まっていて、私にはその人の持っていない要点や洞察があったことに気が付くこともできたりします。

こうした経験は、その議論に対する自分の洞察を深めるのにとても役に立ちますし、また、他の人がどういった点を見落としているかもクリアに把握できます。

建設的な議論へ

まっさらなキャンバスから描き上げれば、細かいディテールも全体像も含めて私の中に経験として積み上げられています。この絵と私は、この経験を通してシンクロしています。一体化していると言っても良いかもしれません。

少し観念的な話になります。この絵が体で、私が頭脳、といった役割分担を果たし、総体として生き物のようになると考える事もできます。まさに、魂がこもり血が通った生き物です。

生き物は、外界から養分を取り込んで自分を成長させます。賢い生き物であれば、環境との調和を目指すでしょう。新しい意見や気づく事ができていなかった視点があれば、それを拒絶するのではなく取り込んで成長します。時間や時代とともに環境が変化していけば、柔軟性としなやかさを持って、自分の体と生存戦略も変えていく必要があるでしょう。

このように生き物として見れば、賢く合理的な戦略は、建設的な議論をすることに尽きる、という事が明らかです。

何かに固執したり、天敵を作ったり、森から相手を追い出す事に熱心になる生き物が、この森で長く生き残れるでしょうか。豊かで実り多い森の繁栄に有益でしょうか。

周囲の環境を適切に知覚し、自分の体や思考を調整し、全体と調和する道を探すべきなのです。それは思考する私自身にも、周囲にも、そして社会にとっても、大切なことです。

そして、こうして一から試行錯誤(思考錯誤?)しながら私の中に形作られた思考を、言葉や図や表にまとめていきます。その過程で、頭の中だけでは気が付かなったことも見えてきますので、また思考が進みます。そして、言葉や図表にまとめつつ、そこにあるエッセンスというか大事な気づきについても整理します。そうすることで、この思考やアイデアを、他の人にも伝えて建設的な議論を広げていく事ができます。

この私のやってきた思考の手順は、まさに、最初に紹介した、再構造化主義(リファクタリズム、Refactoerism)に沿った、実践的な思考方法になっています。

さいごに

子供の頃から、考える事や理屈を立てるという事は好きで、算数や理科は得意科目でした。反対に、いわゆる詰込み型でたくさん覚えることは苦手でした。

こうした科目の好き嫌いと、引っ込み思案な性格だったこともあるのだと思います。何か知りたいこととか疑問に思ったことがあっても、図書館で調べてみようとか先生や大人に聞いてみようという発想はあまり浮かびませんでした。それよりも、自分で考えてみようとか、できることは試してみようという発想の方が、いつも先にありました。

また、自分が一から物事を考えていると、やはり歴史的に革新的とされた技術の発想のすごさや、長年受け継がれてきている知恵のようなものに、強い感銘を受けることがあります。ですので、直感的には無駄に思えるものや非合理的に見えることにも、私の気が付いていない「何か」があるのかもしれないという気持ちが強くなります。一から考えた自分の思考過程に登場して、否定できた物事については別です。それは、私が通ってきた道ですので、その先にはまだこんな道もあるんだよ、という気持ちになります。

一方で、自分の思考過程の中には登場してこなかったのに、調べてみたら厳然と存在しているものやこと、全く思いもしなかった誰かの考え方や意見は、私と私の思考という生き物にとっては成長の糧です。相容れない意見こそが、大好物なのです。

そんな私の思考方法を、この記事では紹介しました。記事をまとめていると、自分でも最初に思っていなかった気づきも出てきます。

再構築主義とは別に意志主義という考え方も提案していますが、この2つの考え方は共鳴していることが改めての気づきです。

また、思考のキャンバスに描いたものと、私の脳が、体と心の関係を生み出しているという例え話をしましたが、これは案外、単なる比喩ではなく、実際の生き物や私たち人間の体と心も、このような関係にあるとみることができるのではないかという予感を持ちました。私たちは生き物のいない、まっさらだった地球で、試行錯誤しながら進化して生まれてきたのですから。

全く関係のない記事を書いているつもりでしたが、このnoteの本来のテーマである、生命の起源の探求にも、この観点を応用して考えを深められそうです。

参照記事一覧

参照記事1

参照記事2


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