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泣きながら微笑んで ~AKB48・大島優子の懐古録~ #24

■ 2011.2.21 RESET公演

東京に転勤を命じられてから1年が経とうとしていた。握手会偏重へと舵を切ったAKB48運営の方針に同調できなかった私はCD握手会へ参加することはなくなり、数少ない優子出演のチームK公演を申し込んでは公演チケットサイトにて「落選」の二文字を確認し落胆する日々を送っていた。そんな中、選抜総選挙の1位獲得により世間一般的にも名の知られる存在となった優子とは対照的に、優子より若い同期メンバー二人がAKB48からの卒業を表明した。一人は選抜常連だった小野恵令奈。代々木第一体育館コンサートのじゃんけん大会組み合わせ抽選時に突然卒業発表を行い、薬師寺コンサート翌日の劇場公演が最後の活動の場となる。女優としてのステップアップのため海外に語学留学するという恵令奈に対して、優子は「自己の夢のために卒業を決断した恵令奈が羨ましい」という内容のメールを送ったとか。そしてもう一人はAKB2期生では最年少の奥真奈美。10歳からAKBとして活動を行っており、学業や交友関係など10代の女の子が普通に経験する事柄を経験していないことに対する漠然とした不安という芸能人ならではの悩みがあったとのこと。トガブロで奥ちゃん卒業の発表があった直後に優子からのモバメが届く。明らかに奥ちゃんの卒業に大きな衝撃を受けていることが伺える内容だった。その奥ちゃんの卒業発表があった翌日にチームK公演が組まれ、私は一桁番台のキャンセル待ちながら半年ぶりに優子出演公演が当選していた。しかし、通常の公演であれば確実に抽選対象内入場できるキャン待ち番号も数少ない優子出演公演であったことが影響してか抽選対象内入場を果たすことができないという不運。それでも半年ぶりの当選を無駄にはできず抽選対象外入場(※会場定員数ー(抽選対象内入場者数+入場権利行使者数)の範囲内で当日券を販売し抽選入場が全て終了した後に入場するのだが勿論良績は望めない。)で公演を見ることとした。

前月のリクエストアワーで発表された「Not yet」(※太田プロ所属の優子、北原里英、指原莉乃と当時AKS(後に太田プロ移籍)の横山由依による4人組ユニット。当初ユニット結成に際し優子は秋元康氏に抗議をした。)の活動、ドラマ収録、グラビア撮影など連日の仕事続きのせいか、優子の表情には所々「疲れ」が感じられた。疲労が全くない状態で劇場の迫に立つことはもう正直難しいかもしれないが、それでも公演が始まるといつものように優子は全力で公演に臨む。基本的によほどの体調不良でない限り、いや、例え体調不良があったとしても、優子のパフォーマンスは、私の期待に対して「ほぼ満額回答」であり、この日の公演でも、それは変わらなかった。しかし、同時に初めてRESET公演を見た時と同じく、優子が私の期待値を上回ることもないという事実も存在した。6カ月ぶりのK公演で優子のパフォーマンスを見ることができた満足感はあったものの、それ以上に他のKメンや研究生の「伸び幅」を自分の目で確認できたことの嬉しさや楽しさが大きかった気がした。各種メディアで多くの人々の目に触れるようになって相当の注目や人気を集めている優子よりも、まだ陽の目を見ていない非メディア常連メンバーや研究生達にとって必要な場所がAKB48劇場であるということを再確認させられた気がした。メディア露出が不十分のメンバーが劇場で自分自身を思いっきりアピールし、バクテリア級に増殖したファンのためではなく、チャンスが必要なメンバーのためにチーム公演を増やす努力を運営にはしてほしいと私は思った。優子がいつまでも劇場公演に出続ける状況を私は望んでいなかったし、優子だって数年前と同じような状況でいいとは思っていなかっただろうし。

そんな思いを抱きながら公演は最後の曲「桜の木になろう」を迎えた。前田敦子ポジを務めた秋元才加が2番のソロのところですでに目が潤んでいた。それを見た優子も涙を流す。その時私の頭には「奥ちゃんの卒業発表」のことが思い浮かんだ。才加は2006年4月にチームKが始動する直前のレッスンにおいて年少コンビだった奥ちゃんと恵令奈を𠮟りつけ、それを最年長の大堀恵にたしなめられて大喧嘩をしたことがあった。しかし、その大喧嘩がきっかけでチームK内でメンバーが意見を交わすようになり、後に他チームの追随を許さない「団結力」で公演を盛り上げファンの支持を集めることとなった。そのことを才加が思い出し、目が合った優子も才加と同じ思いを抱いていることを確認し涙を抑えることができなかったのだろうと私は思った。そして、そんな昔のことを思い出しながらも、恵令奈や奥ちゃんの様にAKB48という「鳥かご」から羽ばたくことができない状況となっていた優子自身のジレンマも彼女の胸中にはあったのかもしれない。

(#25につづく)

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