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【2019シーズンJ1第3節】北海道コンサドーレ札幌vs清水エスパルス マッチレポート

 昨シーズンのホーム開幕戦。清水エスパルスを迎えた試合は、ボール保持率64.3%ながらもショートカウンターとシンプルなサイド攻撃の餌食となり1-3の敗戦を喫した。長らくシーズン開幕直後は不振のスタートの歴史を重ねてきたものの、今シーズンは第2節にしてアウェイにて会心の内容で勝利を収める。そんな直後のホーム開幕戦、今回こそは、という強い念を込めて札幌ドームに向かいました。

河合キャプテンは再びキャプテンに

 試合前には河合竜二選手の引退セレモニー、同時にCRC就任セレモニーが開催。まだまだ大活躍の予感あります。

ホーム開幕戦の雰囲気はやはり格別

"LIFE in RED & BLACK"

 赤黒の人生。若干文字の視認性は弱いものの、伝わります。伝わりますとも。
 そしてセレモニー中もギリギリまでピッチに水を撒いてくださったスタッフの皆様、頭が上がりません。

試合序盤はエスパルス

 コンサドーレは3-4-2-1の陣形を採用。前節のレッズ戦に比べるとIH2枚が守備の役割を持ち、前半は低めの開始位置になることが多かったのでおそらく1トップ。対して、エスパルスは今シーズン未だ試行錯誤の途中、チャレンジしていた3バックから昨シーズン主流としていた4-4-2にて立て直しを図る。
 双方フォーメーション上の噛み合わせが良いわけではなく、守備の際は定位置を離れながら守る。それぞれに起点となる、数的優位を取れるポイントが存在する形になり、硬直した内容よりもむしろ攻守目まぐるしく行き来する展開が予想される。相手にやりたいことをさせず、こちらのやりたいことをいかに押し付けるか。そんな視点で試合を見ていきます。
 序盤はエスパルスが優勢にボールを保持。左SBを起点に、左SH、トップの計3枚でロペス、ルーカスを押し込む。進藤がスペースを塞ぎながら、奥の宮澤、福森(+菅)が急所への侵攻に備える。4-4-2で3-6-1(3-4-3)を崩しに行く際、数的優位となるサイドで起点を作ると、相手IHとWBを低い位置に押し込むことができるため、ネガティブトランジションにおいても同サイドは不利になりづらいし、良好な距離感で守備を開始できます。
 また、エスパルスは右SHにエウシーニョを配置しました。ケースによって2トップばりに内側へ絞りながら高いポジションを取り、福森&菅を押し込みながら左からの展開に対して待ち受けるフィニッシャーの役割を持つこととなりました。
 エウシーニョは前所属のフロンターレでは、4-2-3-1の右SBを主戦場としていた選手です。最後方から前線へ駆け上がるその動きだけで相手守備に負担をかけることができ、尚かつボールを前に進めるドリブルも力強くシュートも打てる。しかし、エスパルスにて任されたタスクはどちらかというと相手を押し込むことであり、それはコンサドーレにとって優位な攻撃セット(4-1-5)を作らせないための布石となります。エスパルスとしては、やりたいことをやらせない、そのために相手の起点を高い位置で作らせない、IH(特にロペス)とWBを後退させる、といった”相手にやらせたくない形”から逆算したコンセプトを持って試合に臨んだように思えます。

"想定内"を感じさせる対応

 上述した通り序盤はエスパルスが優勢に進めました。ボール保持は38:62。とはいえ、いくつか危ういタイミングはあったものの、決定機は作られず。サイドアタックに対して中央はバランスを崩さず対応。ロペスとチャナティップは相手CBに釣り出されず、両SBへの対応を行う。武蔵が右CBを捕まえ、荒野、チャナティップがボランチをマーク。数回、進藤がサイドに引き出されることもあったが、締めるべきスペースの管理は怠らずに守備を回すことが出来た。ここで多少アバウトなフィードでも個でキープできるFWが相手にいればまた違ったボールの動きになったでしょうが、現状そこまでの脅威はもたらされることはありませんでした。
 コンサドーレの攻撃においては、相手2トップを中心とした勤勉なプレッシングに対しても長短のパスを交えてかわしていく。ソンユンのパス選択肢の広がりはチームに大きな変化をもたらし、また、前節から良いイメージのあるIH(チャナティップ)→WB(ルーカス)へのサイドチェンジによる展開はここでも有効で、ルーカスはほとんどの場面でボールを失わずプレーしました。
 このように、各所で人を押し上げる時間を作ることができるため、徐々にエスパルスは後退を余儀なくされ、本来避けたい4-1-5の形が作られていきます。こうなると、徐々に4-4-2の縦3ラインの距離感が延びてしまい、エスパルスの守備は後手に回るようになります。また、ポジティブトランジションにおいても良い距離感でスタートできず、ボールの運びにおいても活路を見い出しにくくなっていきます。
 そして、後半は守備においてIHがカウンターの起点としてトップと合わせ3枚で残る形を取り(ケースによってはもちろん戻る)、これがまた上手く噛み合います。
 ロペスによる怒涛のゴールラッシュは、攻撃力を示す事実としてもポジティブに捉えられますが、前節から見られる守備における決めごとの変化が一因にあるように思えます。ミシャの過去一年の戦いの中では、こうした守備におけるアプローチの仕方はあまりなかったので、正直驚きました。

ビルドアップの効果的バリエーション"ヘドンド"

 コンサドーレの1点目の起点は、荒野→深井→福森と相手の外側を通ったパスの流れから、本来CBの宮澤が中盤の位置でパスを受けてフリーマンになったことで生まれた。前向きにボールを収め、武蔵への縦パス1本でフィニッシュ。エスパルスは危険を察知してから失点までを非常に短く感じたことと思われます。
 スプリントすることなく宮澤が相手の急所に至るスペースを突いたのが、"ヘドンド"(旋回・ローテーション)の動きです。フットサルにて用いられる動きですが、パスを出した方向と逆回りに選手が動くことで、マークの混乱とスペースと楔を入れるパスコースを生み出します。

 今回のケースでは、宮澤から荒野へ左後方にパス。そこから逃げるように宮澤はするすると弧を描く軌道で上がっていく。ボールは更に左の深井、そして大外前方の福森に渡る。このとき、福森の平行位置で宮澤がボールを迎えに行く。マークは付いておらずフリーとなっており、横パスが渡る。肝はボールと逆方向へ動き、福森と平行のパスコースを作った宮澤。福森へパスを出したあとに後方へマーカー(白23番)を引っ張った深井の動きでした。チャナティップが落ちてくるバリエーションに加え、ダブルボランチが最終ラインに落ちたあとに出来たスペース活用の一案として、今後もこの動きは使えそうです。

エスパルスの誇りとアウェイ戦も楽しみな理由

 一時は4点差まで開いた試合となったが、清水エスパルスというチームに対して強くリスペクトを抱いた試合でもありました。というのも、これだけオープンな展開になってもエスパルスの選手は決して荒いプレーは見せませんでした。点差も開き、メンタルの統制を失ってしまうこともあり得る試合内容でしたが、試合を通してイエローカードは一枚も出ていません。最後までフェアにお互い戦い抜いたこと、そして家本主審をはじめマッチメイクにおける安定感には感謝です。また今シーズン中に、仕切り直してアウェイで試合することが大変楽しみです。

鹿島戦でも4-4-2は距離で崩す

 
 次節当たる鹿島アントラーズもまた、4-4-2を基本フォーメーションとするチームです。4-4-2の守備は、縦横の選手間が一定の距離を保ち、チャレンジ&カバーを繰り返すことで安定を得ます。例外を作ることもあるが、各選手が分割された守備ゾーンを意識しながら、縦横にスライドして相手を網に掛けていく。そんな特徴です。
 エスパルスのように攻撃においてはサイドで数的優位を作りコンサドーレのIH、WBを押し込むことで4-1-5を作らせない。守備時にはWBへのパスコースを切りIHにボールを誘導し取りどころにする(アントラーズのダブルボランチはボール奪取能力か非常に高い組み合わせ)。そんなところも想定されます。※このあたり、再度どこかでまとめてみたいです。
 諸々の打ち手で縦横に広げたり偏らせたり、鹿島アントラーズの距離感を支配し主導権を握れるのかどうか、試合のキーポイントになるかと思います。

最後に

 この試合はホーム開幕戦ということもあり、長い冬を越えてまたフットボールな週末がやってきた高揚感、そして合計7点も奪い合った試合展開、サポーターを大変熱くさせてくれる試合でした。ソンユンのビルドアップにおける関与。荒野、宮澤、深井、進藤、菅ら道産子それぞれの成長。この試合だけでなく、昨年の失敗や負けもひっくるめて意義あるチャレンジだったとポジティブに解釈できる内容でした。
 個々がかなり伸びたと思います。四方田さんの誕生日、このあと日本代表の発表会見で素敵なプレゼントがあることを祈ります。

ハイライトを改めて

本当の最後に、改めてハイライトを。1点目は何度見ても美しい、デザインされたプレーです。鹿島アントラーズ戦も、歓喜のビールで乾杯できる結果が楽しみです。


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