札幌ドーム18年最終戦

【Jリーグアジアチャレンジinタイ】 バンコクユナイテッドFC-北海道コンサドーレ札幌 Matchレポート

 Jリーグ開幕を1か月後に控え、タイで一次キャンプを張ってきた北海道コンサドーレ札幌。タイキャンプの最終プログラムとして、バンコクユナイテッドFC(前シーズンタイリーグ1部2位)と相対しました。キャンプの最中ということもあり、トレーニングによりフィジカル的にもメンタル的にも負荷の残った状態。ベストコンディションは望むべくもない……。そんな中、チームとしてどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、そして新戦力がどのくらいフィットしているのかも気になる一戦となりました。

フォーメーションは昨季から引き続き3-4-2-1。守備陣は見慣れた並びだが、新戦力が加わる攻撃陣。

 フォーメーションは3-4-2-1。GKとDFラインの4人は昨季後半で確立された安定の並び。昨季右サイドを主戦場としていた駒井がボランチにコンバート。深井は怪我で欠場となり、ダブルボランチのもう一枚は荒野が務めます。昨季サブに甘んじていた白井が左サイドハーフに抜擢。アジアカップを終え母国に凱旋したチャナティップを昨季同様のシャドーに配置、キャプテンマークを巻くことに。
 右サイドハーフには新加入のブラジル人選手ルーカス。もう一枚のシャドーには、かつてサンフレッチェ広島でプレーし今季韓国のFCソウルより加入したアンデルソン・ロペス。1トップにはV・ファーレン長崎より移籍してきた鈴木武蔵が入ることになりました。
 開幕までには1トップのジェイ・ボスロイド、ボランチの深井のコンディションも上がってくるかと思うので、このままの布陣でチームを固めていく作業にはまだ進まないのではないかと思いますが、これが現時点で試してみたいファーストチョイスということだと思います。

新戦力が結果を残し、スコア的には完勝。攻撃面は”都倉ロス”を補って余りある可能性が見えた。

 簡単に、以下得点&失点シーンを抽出し文章化しました。

【前半】バンコク 1-3 コンサドーレ
12’ アンデルソン・ロペス(PK):中央FKから福森が相手の目先をずらすグラウンダーパスを右サイドのルーカスへ。縦にドリブルで仕掛けた際にペナルティエリア内で倒されPK獲得。アンデルソン・ロペスが落ち着いてGKのタイミングを外しゴール。

16’ チャナティップ:ルーカスがセカンドボールを拾い、そこからドリブルで相手を2枚はがしバイタルエリアで数的優位を作る。中央の鈴木武蔵→チャナティップと繋ぎ、ワントラップから左足を振り抜きゴール。

23’ ネルソン・ボニージャ:カウンターから左に開いたボニージャにパスを繋がれる。DF側の数的有利ではあったが、バイタルエリアにカットインしてきた相手に後退しながらの守備を強いられた進藤が振り切られ、中央のカバーも間に合わずペナルティエリア外からゴール右端にシュートを決められる。

37’ ルーカス:相手GKからのビルドアップのパスミスを抜け目なく反応し奪取。そのままGKの頭上を通す絶妙なロングループシュートにより無人のゴールを陥れる。昨季最終戦のジェイのゴールを彷彿とさせた。
 【後半】バンコク 0-2 コンサドーレ
47’ 鈴木武蔵:バイタルエリアで前を向いた岩崎が縦方向への鈴木武蔵へパス。右に相手DFを抑えながら一瞬ダイレクトではたくようなフェイントを入れ、相手のタイミングをずらしペナルティエリアに進入した鈴木武蔵が角度のないところから左足でゴール右上を狙い撃った。

84’ 鈴木武蔵:岩崎とのワンツーでフリーとなった藤村。敵陣中央から相手CB間のギャップを突くスルーパスに鈴木武蔵が抜け出し、GKとの1対1の場面を作る。1トラップ後に落ち着いたシュートでネットを揺らす。

 攻撃については、まずは個々のクオリティで相手を崩すような場面は作れていました。コンディションが更に向上した際の爆発力は楽しみです。2・3名のユニットで相手守備を崩す完成度はまだ高くないようでしたが、いくつかこの試合で試しているようなものがありました。
 昨季課題の一つであったアウトサイド+ハーフスペースを活用した崩しに関しては、福森や中原のインナーラップ、岩崎-菅のローテーション、が効いていました。また、昨季はセーフティな選択の多かったク・ソンユンのビルドアップ技術も向上しており、DFやボランチだけでなく落ちて受けに来たシャドーへの縦パスを正確に入れる場面も。
 先週の練習試合でも試していた、フリックやオーバーを使った中央での崩しについてはこの試合でも数回試したタイミングがありました。あまりポストプレーは得意でなさそうな鈴木武蔵ですが、このパターンが使えるようになれば裏抜けの駆け引きが飛躍的に上手くいくようになるのではないかと思います。

 ボールホルダーとトップ・シャドーの計3名が最小で関わるような、下図の2パターンは試行を確認できました。トップの選手が相手CBを引き付けながら落ち気味にボールを要求することからスイッチが入る形でしょうか。
 これがリーグで綺麗に決まるようになれば、個々で打開できない相手からも狙って点を取れるチームになるのではないかと思います。

守備に関しては今回の試合ではなかなか評価しにくいものの、今季苦戦の予感

 キャンプによる疲労蓄積の影響は守備対応の方に強く出ていたように思えます。そのため、個人での対応で後手を踏んでしまい、組織的な守備もうまく機能せず、相手に攻め切られる場面が随分ありました。
 特に、攻→守の切り替わり(ネガティブトランジション)の際の組織的対応について、早急に規律を以て整える必要がありそうです。ネガトラにおける守備側のポジショニングは攻撃時から備えるものですが、そこの約束事が徹底されていません。コンディションが完全でないのであれば、それに応じたポジションを取るのはシーズン中も同じです。しかし、準備が遅れDFラインとボランチの距離が開き、CBの前に広大なスペースを明け渡したことで何度もピンチを作りました。ネガトラにおいては守備側による攻撃方向の誘導もあまりうまくいっていませんでした。下がりながらの守備になるものの、DFは相手の攻撃陣に対して、時間をかけさせながら外側へ誘導するのがひとつの型です。しかし失点シーンもそうですが、数的有利であるのに相手を外に押し出すことが出来ずにシュートレンジに入られてしまうことが複数回ありました。守備に関しては、ここからかなりテコ入れをしていく必要がありそうです。
 そんな中、後半から出場したキム・ミンテ選手は非常に良いパフォーマンスだったと思います。守→攻の切り替わり(ポジティブトランジション)において抜群の配球をしていましたし、出しどころを限定し、綺麗なインターセプトを何度も決めていました。局面での冷静さと安定感が出てくれば、対人スキルには秀でたキム・ミンテには今季かなり期待できそうです。

怪我無く終われたことは何より。ここからは更なる競争と、開幕に向けた強度の調整へ

 ひとまず今回の試合を怪我人なく終われたのは何よりでした。新加入選手を含め、どこのポジションも約束されたスターターはいないように思います。各選手がコンディションを高めながら、開幕からのスタートダッシュを切れるような良い調整を二次キャンプ以降進めていってもらえれば、今季も楽しいサッカーが見られそうだと感じました。ここからの1か月、引き続き楽しみで眠れない日々が続きそうです。 
 

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