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人間は水袋

 夏になると、目に見えて「生き物」が増えまして。草は生える、木は伸びる、虫が生まれる、鳥が飛ぶ。生命量で言えば、まぁ感覚的なものですけど、冬の1万倍とかあるんじゃないかと思います。

 冬は、本当に、シーンとしていますからね。雪が降った後なんか、動くものが無い。考えてみれば、熱帯雨林と南極とでは生命量が違いますから。そりゃ夏と冬でも、そのぐらい違うわなと思います。


 なぜ夏と冬があるかというと、地球の地軸が公転面に対して23.5度、傾いているからで、よく日が当たる時は暖かくなるから夏、あまり日が当たらない時は冬、になるわけです。生命活動とかいっても、全てのエネルギー源は太陽光です。

 太陽内部の水素ヘリウム核融合反応で放出されたエネルギーの、ほんの一部が地球上に届いてエネルギーを付与する。ま、海底の熱水泉みたいなところで硫化水素を食っている生物とかいますから、100%が太陽エネルギーでは無いけど、地球の生物の99.9%以上は太陽エネルギーを元にしている。


 で、地球上の生物というのは、我々も含めて、水を多く含んでいます。少なくとも60%ぐらいはある。となると、生物が動くというのは単純に言えば、水の温度が上がるってことなんです。

 温度というのは、分子の運動量です。分子の運動量が多いことを、温度が高いと言い、運動量が少ないことを、温度が低いと言う。ですので、夏に生命が多いというのは、水の温度が高くなるからです。生物というのは、水の運動です。(なので、温度が無い南極や、水分が無い砂漠には、生物が少ない)


 人間も含め、ほとんどの生物は「水の袋」です。すごく単純に言えば、我々は水の袋なんです。だから高いビルからコンクリートに落ちたら、水風船が破裂するように、びっちゃん、となって、血が吹き出て活動停止するわけです。銃で血管を打たれたら、水がピューッと出てしまって、水風船はしぼむわけです。人間の70%は水分(血液量は8%)。水なんですよ。クラゲなんて95%ぐらいが水分ですからね。水を飲まないと3日で死ぬぐらい、我々は水袋なんです。


 そして、元気である、健康であるということは、水袋の活動量が多いということです。水がよく巡るということ。血行が良いということです。で、ストレスとか運動不足とかで、血行不良になると、巡りが悪くなるから、動きにくくなる。それを不健康、というわけです。

 運動をして汗をかけば、水を入れ替えることになる。筋肉を動かせば、筋肉の中の水分が入れ替わる。水分が入れ替わるときに、老廃物を排出し、栄養とか酸素を取り込む。だから、運動をすると元気になるわけです。


 福岡伸一さんが言う「動的平衡」の論で言えば、我々の体は「川」のようなものであり、川の水は入れ替わっても、川は川。方丈記の時代からそうです。我々の体も、水やタンパク質が入れ替わるシステムであり、物質的には、1年も経てばほとんど変わっています。

 でも、川の水が変わっても同じように、我々は1年前も1年後も同じ。ま、これも「同じ」というように我々が思っているから、同じというだけなんですけど。だって、1年後には違う人になっていると思ったら、困るでしょう。だから同じだと思っているわけです。


 何かをどう理解するのか、そこに明確な理由があるわけではありません。ただ、人間は群れを作り、共感性の高い生物なので、単純に「他の人が思っていること」を当たり前と思います。常識に従って、ものを見るわけです。

 でも、そのものの見方で不具合が起きることもある。だったら、色々な見方を持っていた方が良い。自分のことを「山田太郎」と思うも、「四十代男性」と思うも、「カトリック信者」と思うも、「課長補佐」と思うも、「父親であり配偶者」と思うも、どれもあって良いわけです。


 そして今日、書いたのは「水袋」という見方です。人間も含め、地球上のほとんどの生物は水袋。そもそも、海という水溜まりの中で、炭素系の物質が集まって、複製可能なシステムとなったのが生命です。

 で、陸上に出るためには、物質循環の媒体である水をしっかりとした袋に入れたわけです。それで、システム内に水を摂取し、不要物を排出し、活動している。夏になり温度が上がれば、水は活発に動ける。なぜなら、運動量は温度だからです。それぐらいの、単純な見方です。


 もちろん、こういう見方では、社会的な生活を営むことはできません。会社で上司や部下を「水袋だな」と思うのは、猟奇殺人鬼ぽいですから。でも、現行の社会の見方で不具合が起きたとき、違う見方が役に立つこともあるだろうと思います。水袋なんだから、水をしっかり循環させるようにしよう、とかね。温度を上げて元気になろう、とかね。そういうことが、何かのきっかけになることもあるかも、と思ってます。またあした。

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