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デンマークのオーガニックな教育

先日、デンマークを訪れて、政治・経済・教育・食・エネルギーの5つの分野を学ぶスタディーツアーに参加した。これから少しづつ、そこで感じたことをアウトプットしたい。
まず最初のテーマはデンマークの教育。僕がもっとも衝撃を受けたのは教育だ。今回は僕が見たデンマークの教育、そしてそのあり方をお伝えしたいと思う。

僕が見たのは、中学生までの教育だが、どんな大人にとっても、そこに大切なことがたくさんあると僕は確信している。

自然の中で思いっきり遊ぶ「森の幼稚園」

森の幼稚園はご存知だろうか?

日本で一般的な、街中に教室と運動場、遊具がある幼稚園と違って、森の幼稚園はその名の通り、森の中にあって自然の中で子供達が自由に遊ぶスタイルをとる。実は日本にも存在しているが、デンマークは森の幼稚園の発祥地で、何と1954年にすでに最初の森の幼稚園が始まっていたそうだ。

森の中で遊ぶことによって、脳の発達にポジティブな影響があったり、様々な体験を通して課題解決能力が向上したり、子供の発達に良い教育と言われている。

園内には、好奇心を掻き立てる様々な遊び道具や遊具が用意されている。基本的に外遊びが中心で、子供達は好奇心の赴くままに、動植物を観察したり、走り回ったり、椅子に座ってぼーっと想像の世界に入ったり、想い想いの過ごし方をしていた。

個人的に興味深かったのは、訪れた幼稚園の先生が口にしていた言葉。

「ルールは必要ない」

かなりの広さがある森の中で、30人の生徒に対して先生は3人。森の周囲に柵のようなものはない。そんな環境で、子供達の安全を守るために、大人としてはいろんなことを制限したくなるが、ルールは作らない。「子供が外に行ったりすることはないんですか?」と質問すると、

「制限や注意ではなく、なぜ外に行って欲しくないかを伝える。あなたのことを大切に思っていて、あっちにいくと危険だから行って欲しくない、という気持ちを伝える。そうすると子供は行かなくなるよ。」

このような相手を尊重したコミュニケーションが日常的に行われているのか。。

もしここで「外に行っちゃダメ」というと、大人の都合による評価基準で子供の行動をジャッジしてしまうことになる。大人と子供は対等で、子供達のどんな行動も尊重する。子供は自分で選んで行動し、思いやりと自尊心をはぐくむ。デンマークの教育の根底に流れている考え方に触れた気がした。

子供の自主性を育てる教育

日本でいう小学校から中学校までの年代の子供が通う学校、フォルケスコーレを訪れた。そこで、先生にどのように学習を進めるのか話を聞き、実際に校内を回って、授業風景や生徒の様子を見て回った。
(※今から書いていくことは、訪れたある学校の話だが、決して特別なことをやっているわけでは無いそうだ。)

フォルケスコーレでは、生徒の自主性を大切にしている。そのため、子供たちにも授業の運営に参加してもらうというスタンスを取っている。

例えば、毎日の授業の進め方。時間割はあるが、それぞれの科目で何を学習するかは生徒が決める。先生が週の始めに今週のテーマと到達目標を提示する。それを受けて、子供達は自分のペースを考えて、進め方を先生と擦り合わせて、着地点を決める。休憩は何回とるとか、教材のどこまで終わらせるのか。子供達は何を学ぶのか、なぜそれを学ぶのかを理解しているので、自分で考えて計画を立て、勉強を進めることができる。

9年生の数学の授業

また、基本的に授業はこのようなスタイルで、先生が前で講義を行うスタイルではなく、PCやテキストを使った自習、クラスメイトとの学び合いスタイル。先生に聞くのは最終手段だ。

何やら小説を読んでいる生徒が何人かいた。なぜ小説を読んでいるのか聞いてみると、課題が終わったので国語の課題で本を読んでそれについて分析をするという課題に取り組んでいたらしい。(自分も中高生の時は授業中に他の科目の勉強を進めることがあったけど、先生に見つからないようにコソコソとやっていた記憶がある。。)

グループワークでは学ぶ場所も自由

実際には見られなかったが、生徒は机の上に赤・黄色・緑のサインを出して、目標達成に対する自信度を知らせる時間があるらしい。そこで、黄色や赤信号を出した事もに対して先生がフォローを入れる。そこでなぜ達成できなかったのかを一緒に考えて、次に活かす。

仕事を進めるように、先生と一緒に学びのプロジェクトをやっているようだ。

さらに驚いたのは、生徒が先生に授業のフィードバックをするということ。「今日の授業はつまらなかったから、もっとこうして欲しい」というような手厳しい意見が飛んでくる。先生と生徒の間に上下関係はなく、学びのパートナーといった表現がしっくりくる。

民主主義は学校で学ぶ

イギリスの週刊新聞ザ・エコノミストの調査機関である「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)」が発表する、民主主義ランキングでデンマークは世界第5位(日本は22位)。そんなデンマークでは、教育から民主主義が育まれているんだと実感した。

話を聞いた中でかなり衝撃的だったのは、生徒会が学校の運営に関わっているという話。

生徒会は4-9年生の各クラス1名選出して構成される。0-3年生は会議に参加するのが難しいが、生徒会があるときは生徒が0-3年生のクラスに行って意見を吸い上げている。生徒会はその意見を持って、学校の理事会に提案をする。

例えば予算に対しての意見。数ある使い道の中で、大人と話し合ってプライオリティを決めていく。実際にあった例だと、夏場はお弁当が腐りやすいからクラスに冷蔵庫が欲しいという意見を取りまとめ、提案し採用された。他にも、学校にいる間は携帯を預けるというシステムが生徒の発案によって決まった。立派な大人の意見じゃないか。。と衝撃を受けた。

子供は自制心がないという今までの自分のパラダイムを覆す事例。子供を大人のように信頼することで、子供は自立した大人としての振る舞いを見せるのかもしれない。

さらに衝撃的だったのは、学校内の予算の使い道にとどまらず、自治体からの予算の配分にまで生徒会が関わること。自治体からの予算が決定されると、自治体内の他の学校の生徒会と、どの学校に何が必要なのかを話し合って、優先順位をつけ、予算を配分する。もちろん生徒会だけで決めるわけでは無く、大人の意見も聞きながら折り合いをつけていくのだが、自分が知っている学校とあまりにも違うので、一体どんな話し合いが行われているのか、全く想像がつかない。。

自分たちが声を上げることで、要求が学校に反映され変化を実感する。生徒たちはこういったところから民主主義の感覚を養っていくのだろう。

教育の範囲は子供だけにとどまらない

デンマークの教育で面白いなと思ったのは、子供だけでなくその家族も学校から教育を受けることがあるということ。どういうことかというと、社会見学などで学んだことを親に説明したり、政治に関して親とディスカッションをしたりといった宿題が出るのだ。

例えば、リサイクルステーションでゴミの分別を学んだら、それを家族に説明する宿題が出るんだとか。そうすると、子供は親の行動をよく見ていて、目を光らせているので、家族もゴミの分別に気を使うようになったりする。確かに、子供に注意されると恥ずかしくなって素直に従おうという気持ちになりそうで、すごく効果がありそう笑

政治のディスカッションについても同様で、普段から政治に関心を持っていないと子供とディスカッションができない。。

まとめ 〜 自然に委ねる教育

デンマークの教育を実際に見て感じたことは、とても自然だ、ということ。
植物本来の生命力に任せて栽培するオーガニック農業のように、子供にもともと備わっている自主性や好奇心、成長力を存分に発揮できる環境をつくる。その中で、子供達はたくましくと育っていくんだろう。 学校内を案内してもらって、子供達が本当にイキイキとしている様子が伝わってきた。

自然の中には、「良い」も「悪い」も存在しない。なるべく大人の価値観で子供をジャッジすることなく、一人一人を尊重する。その中で、子供も相手を尊重するコミュニケーションを学び、思いやりを育む。

大人と子供が上下関係ではなく、対等な存在として、お互い学び合う。上下関係になってしまった瞬間に、大人のいうことは絶対になってしまった瞬間に、子供達の自主性の芽は摘まれてしまい、そこから考えることをしなくなる。制限ではなく、対話。答えを与えるのではなく、一緒に考える。

子供を強い存在、可能性の塊だと信じて、なるべく手を加えない。そうすれば、子供達は自然に適応するための力を発揮し、たくましく育っていく。

そして、それは大人も同じなのではないだろうか。

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