見出し画像

Art Outbound Digest Vol.7 

雑感 いまさらアンディ・ウォーホルで揉めるんですか

こちらをお読みの皆さんならもうご存知のはずですが、鳥取県立美術館がウォーホルのブリロボックスとキャンベルスープ缶を買ったら炎上したという騒ぎがあります。

「県民からは「どこが美しいのか分からない」「5個も必要?」と疑問や批判の声。」

現代アートは見た目の美を追求しない、という大前提。佐々木健一の新書読めば書いてありますけど、まあ読まないですよね普通の人は。あれは名著なんですが。

一方の鳥取県美術館側はこういう見解

「ウォーホル作品を収集する理由について、鳥取県は、このポップカルチャーを美術館の柱のひとつにするためだと説明している。
鳥取県にはこれまで県立の美術館がなく「全国最後の県立美術館」とも言われる中、最後発の公立美術館が独自色を出すためにも、ポップアートの旗手のウォーホル作品を目玉にしようというのだ。」

ん? ポップカルチャー?

これNHKの記者の勘違いなのかほんとうにそうなのか。

ポップアートという場合、1950年代半ばのイギリスで始まって、1960年代のアメリカで流行した現代アートの潮流です。

リチャード・ハミルトンのこれが1956年

ブリロボックスは1964年。

58年前ですね。

美術史で58年というと、たとえばボッティチェリが1444か45年生まれで、その58年後に生まれたのはパルミジャニーノ。

初期ルネサンスのボッティチェリと、マニエリスムのパルミジャニーノね。

つーか、音楽で考えろよ。1964年ってビートルズが4枚目のアルバムを出した頃ですよ。レッド・ツェッペリンすらまだ結成されてない。

そんな昔のものなので、今現在ポップアートをやってるという若い作家は・・・・有名な人は思い当たらないですよね。80-90年代デビュー組がラスト・トレインだったんじゃないかな。

あ、もちろん日本国内で言えば有名な版権ものキャラを油絵やアクリルで手描きして売ってる自称現代アーティストはいっぱいいますけど、すまんが、それ、違うから。gendai aatですから

六本木の大型会場がコンスタントにやってる漫画家やアニメの企画展みたいなの、あれがポップカルチャーです。ポップカルチャーをミュージアムで見せるということです。

あれはあれで大変に良いもので私も大好きで今期だとそうですねやはり「水星の魔女」か「ぼっちざろっく」ですけれども、ポップカルチャーはポップカルチャーで、ポップアートとはめちゃくちゃに距離があるものです。

鳥取県立美術館の学芸員さん、そこんところわかっててやってるのか、NHKの記者がわかってなくて勘違いして書いたのか、あるいは・・・・これ以上は想像するだに恐ろしくて書けません。

(嫌われるのが恐ろしくて書けないんじゃないからね)

収集の方針を見ると、うーん、これはどうとでも読めるなあ。さすが公務員。玉虫色の文書作成ならお手の物か。

https://tottori-moa.jp/wp/wp-content/uploads/2022/09/Tmoa_collection-policy.pdf

私がバイヤーで3億で現代アートの作品買ってこいって言われたら、ウォーホルよりもこれまでこのメンバーシップで紹介してきたような作家のもの、だいたい500万と1000万の間で買えますから、その辺を買い漁りますけども。

大都市のちょいとお金持ってる連中の観光需要をつつくなら、ウォーホルよりもその方が良いと思いますけども。

まあ、許可は出ないでしょうね。

2:ピックアップアーティスト

File10 Abigail Lucien  アヴィゲイル・ルシエン


1992年 ハイチ生まれ ボルティモア在住

学位 MFA (University of Tennessee Knoxville)、BFA(Florida State University)
活動期間 2013-
メディア 彫刻、動画
所属ギャラリー 
個展開催回数 不明
グループ展参加回数 不明
(展示会参加 39回以上)
美術館での展示歴 2
受賞・奨学金等 10

CVはこちらね。

https://static1.squarespace.com/static/56a4839f1c1210464e1f423b/t/6320b42e4943f72244622345/1663087663006/LUCIEN_sep22_artistcv.pdf

はい、、また日本語世界では全く知られていない人を発掘して参りました。

どこで見つけたか?

ここから先は

4,414字
この記事のみ ¥ 400
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?