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料理に著作権はあるのか?年間200本以上のレシピを作っているフードコーディネーターとして思うこと。


宅トレYouTuber竹脇まりなさんの謝罪投稿をTwitterで目にしました。まりなさんが公開したどんぶりレシピが、とある格闘家の考案したものと類似していたらしいです。

経緯を全く知らなかったので、調べてみると、この2つのレシピの類似を指摘し、後から発信したまりなさんを非難するようなツイートがいくつかあったようです。

格闘家のレシピ
・玄米と白米を混ぜて炊く。
・ほうれん草、鶏むね肉をゆでる。
・ゆで卵を切る。
・ご飯に具材をのせてしょうゆ、黒酢をかけて海苔をちらす。
竹脇まりなさんのレシピ
・ささみを鶏ガラの素、にんにく、しょうがと一緒にゆでる。
・オクラ、ブロッコリーをレンジで加熱する。
・納豆をタレと混ぜる。
・器にオクラ、ブロッコリー、納豆、アボカド、キムチをのせ、生卵を割り入れる。ごまをふる。

※まりなさんのレシピはご本人が既にレシピを削除していたため、ネットの情報を参考にまとめたものです。

これをパクリと言うか。

NOですね。


レシピに著作権はありません。

私は仕事で年間200〜300本、トータルで1000本以上レシピを考案して発信しているのですが、ゼロから新しい料理を生み出すことはほとんどありません。

自分で素晴らしいレシピを思いついた!と喜んでも、ネット上で類似のレシピを検索すると、全く一緒ではなくても似たようなものはすでに多数存在しています。

既存の料理を参考に、「より簡単に作るには?」「より安価の材料で作るには?」「よりヘルシーに」「今の旬の食材に変えて」「タンパク源を変更して」などの意図を持ってアレンジしたり、複数のレシピを組み合わせることによって他と100%は同一ではないレシピを作成しているのです。

それらのレシピが著作権侵害をしているかといえば、はっきりとNOと言えるのは、著作権には下記のようなルールがあるからです。

著作権法は、「著作物」、すなわち「思想又は感情を創作的に表現したもの」を保護しています(著作権法2条1項)。したがって、この「著作物」に該当しないものは著作権法で保護されません。
ここで、独創的な創作料理であったとしても、その味や香りは、著作物として保護される表現ではないと考えられています。また、盛り付けなどの見た目についても、実用品なので、純粋美術と同様の創作性が認められることは考えにくく、著作物として保護されることは難しいでしょう。さらに、当該創作料理の調理手順であるレシピ自体も、表現ではなくアイデアです。したがって、料理雑誌に載っている創作料理を実際に作ってみることは、著作物でないものの再現に過ぎないので、著作権法上の問題はありません。

引用元 RRC著作権ビジネスガイド

オンリーワンには手を出すな!

ここで気をつけないといけないのは、例えば平野レミさんの「ブロッコリーのたらこソース」のようなもの。料理なのか、アートなのか、思想なのか、感情なのか…もう何がなんだか(笑)

この類のレシピを参考にして発信するとネットでは炎上するリスクがかなり大きくなります。

なぜならそれをみた誰もがレミさんを連想してしまうから。著作権の侵害はなくても、モラル違反とみなされて世間からのバッシングの対象になってしまいます。

だって人気商売だもの

まりなさんの今回の件は、例のレシピをパクったわけではなく「もらい事故」という印象。ご本人も内心ではそう思っているかもしれません。そもそも、ダイエット目的で低糖質などんぶりを作ったらそういう食材を使うのは発明ではなく常識のレベルかと。


人気商売をしている以上、イメージダウンに繋がるようなことはできるだけ避けたい、という意図で迅速に謝罪したのかもしれません。特に「あの人はパクってる」という印象を世間に持たれてしまうのは何よりも痛いですよね。今回早くに火消しをしたことは、正しい判断だったと思います。

とはいえ、これからレシピを公開することを躊躇しないでほしいです。発信していると思いもよらないところからガンガン石は飛んできますが、これからも有用な情報を発信し続けてほしいです♪

料理で特許は取れるのか?

著作権ではなく、特許に関してはこんな記事を見つけました。

美味しいカルボナーラの作り方は特許になりますか?

カルボナーラの作り方で「パスタとチーズと卵黄をあつあつの土鍋に入れてカルボナーラを客の目の前で仕上げる」と言う工程の特許を出願した例あったそうですが、下記の理由で認められなかったそうです。

この特許出願は、「調理工程の一部を客の食卓・面前において行うことは、様々な料理において適宜行われる周知の態様であり、そのような調理態様に応じて公知の調理器具の中から最適なものを選択するのは当業者が普通に行うことである。」として拒絶査定となっている。


一方でレトルト食品などの形で発売されるカルボナーラソースの製造方法のような、工業的な発明であれば、「日清フーズ」「キューピー」で製造方法の特許が認められているそうです。

料理という文化に著作権が介入するようになれば、むしろ私たちは気軽に美味しいものが食べられる機会を奪われていたのかもしれないな、と個人的には思います。

加東英里子

・フードコーディネーター歴15年&WEBライター
・小学5年生男児の母
・子育て世代の暮らしを応援するWEBサイト「おいしい たのしい 暮らしのレシピ」主宰 https://oishii-tanoshii.com/
・ストレングスファインダー【調和性・ポジティブ・共感性・適応力・コミュニケーション】

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