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【笑える旅話】朝のコンビニで暮らしのギャク化にニヤつく話

旅具店は現在、神奈川県と山梨県の県境近くにある “モバイルビレッジぼちぼち” というところで越冬キャンプをしている。
今日でキャンプ27日目だ。

最近、すぐ横を流れていた小川が枯れてしまった。
それまで飲料水も生活用水も、全てその小川に頼っていた。
歩ける距離に湧水があるので、暮らしに大きな影響はないものの、水は今まで以上に貴重になった。

冬に水が枯れるのはいつものことだと
地元の方が教えてくれた

DIYに励んだり、薪を拾いに行ったり、火を起こしたり、煤けたケトルやフライパンで煮炊きをしたり、一日の終わりには爪の中まで真っ黒で、炭鉱夫の手のようになっている。

本日の手

川が枯れて以降、手を洗うのは1日1回だけになった。
寝る直前、歯磨きをするとき、いつもより少しだけ多めにコップにお湯を注ぐ。
口をゆすぎ、歯ブラシを洗い、最後に残った僅かなお湯で手も洗う。

その頃には辺りは真っ暗になっているので、綺麗になったかどうかは見えないが、皮膚がすぅーっと深呼吸したような爽やかさを感じる。

そんな暮らしの旅具店、先日、友達の引越しを手伝いに街に出た。
朝、セブンイレブンでコーヒーを買い、トイレを借り、手を洗うシンクまで来て、液体せっけんとペーパータオルが備え付けてあるのが目に入った。

前の晩に手を洗って寝たとはいえ、自分の手がなんだか薄汚いのは知っていた。

水で手をゆすぎ、石鹸を付ける。
あまり泡立たない。
が、指先からポタポタと滴る灰色の水。

一度流してからもう一度石鹸で洗う。
手の甲まで、思う存分に洗う。
二度目の手洗いでもやはり滴る灰色の水。

なんだか顔がニヤけてきた。
朝のコンビニで隅々まで手を洗う自分も、
洗っても洗っても灰色の水が滴るのも、
水道から贅沢に水が出るのも、
どこを取っても冗談みたいな気がした。

最後にペーパータオルでしっかりと手を拭いた。
手はいつになく綺麗だったが、残念ながら爪の汚れは残ったままだった。

シンクを見ると、テン、テンと色んなところに灰色の跡がある。
これは流石に申し訳ないと思い、きちんと水で流したが、
流してる途中でまたニヤついてしまう。
鏡を見てみたら、気のせいでは無くしっかりニヤついている自分が映っている。
朝のコンビニでこんなに汚い手を洗ってるやつはなかなか居ないだろうな〜とか思うと、なんだか誇らしいのだが、あまりに馬鹿馬鹿しくもあり、最高に楽しい気分になった。

外で暮らすと、日常生活がギャグっぽくなってくる。
この朝のように、思わぬ幸せが突然やって来たりもする。
段々と小さなトラブルは全部ギャグだと思えるようになり、寒かろうが、水が無かろうが、風呂に入れなかろうが、全部が面白く思えるようになってしまう。
日常生活の中から楽しみを抽出する力が磨かれるのだ。
旅具店が長く一人で旅をしてもへっちゃらなのは、この力のお陰だと思う。




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