区議会で障害児と家庭へのサポートについて求めました

東京都北区議会議員の加藤みきです。

2月27日、令和6年第1回北区議会定例会にて個人質問で登壇しました!

今回は障害児とその家族がぶつかる困難を、自分自身の経験と区民の皆さんから寄せられた声を元に紹介し、5つの視点から改善を要望しました。

(1) 5歳児健診の実施について
(2) 利用者情報管理の標準化とデジタル化について
(3) 支援情報の提供体制について
(4) 登下校のサポートについて
(5) 放課後の過ごし方について 

1つ1つの課題はどの部署も把握していたと思いますすが、今回は一気に扱ったことで障害児と家族が一日中困っているということがよく伝わったと感じています。

原稿と答弁を掲載しますのでぜひご覧ください!


今回は特に保護者負担の軽減を目的とした話を複数入れています。
それは日々、支援の最前線にいる保護者の精神的余裕、時間的余裕を作ることが子どもの支援の充実に繋がるためです

例えば飛行機事故があった際、酸素マスクは子どもよりも先に大人がつけなくてはいけないと言われています。これは大人が酸欠になり気を失うと子どもにマスクをつけてあげることすらできず2人とも助からないためです。
まだ日本では障害児への支援は保護者の熱意や犠牲に頼る部分が多いです。
区では子どもへのサポートの充実に加え保護者の負担軽減への取り組みもお願いいたします。

では5つの質問をします。
まず、1つめは発達障害や知的障害の早期発見、早期療育を目的に、全児童への5歳児発達健診の実施を求めます。

発達障害、知的障害は軽度まで含めると、人口の約10%の人が当てはまると言われ、子育て世代にとって一種のブームと言えるほど関心が高まっており、専門検査や療育、支援を望む保護者が激増しています。
児童発達支援センター・教育総合相談センターへの相談件数は増加の一途。医療機関の受診は数カ月待ち、数年待ちの状態が続き、このままでは特に早期介入が望ましいお子さんへの支援開始が遅れる懸念があります。

東京都でもこのことは問題視されており、都の新年度予算案には発達検査を行う心理士の増員や検査の外部委託費用の都負担などの緊急支援が盛り込まれています。

子ども家庭庁からは5歳児検診は集団検診を推奨されていますが、発達障害や知的障害は小児科の中でも専門分野であり、全児童を問診する専門家の質と数を揃えることは困難です。
実際に、近所のかかりつけ小児科に発達の相談をたものの「これくらいの年の子はこんなもんですよ」と返され、数年後に障害が分かり「早く支援を受けていれば何か違ったのではないか」と後悔をしている保護者を私は何人も知っています。
特に東京都の事業が始まれば都内で専門家の取り合いになることは避けられません。
まずは保護者の申告による問診表の記入で全児童へスクリーニングを行い、対面健診の実施は希望者や早期介入が必要な家庭へ絞った対応が現実的ではないかと考えます。

また全児童を対象として頂きたいのは、子どもたちの将来へ備えてという意味もあります。
もし5歳時点で専門的アプローチが必要がなかったとしても、就学して環境が変わったことで発達特性が目立ってくる、ということはよくあります。
その際、学校の担任から指摘を受けた保護者が「保育園では困っていなかった。学校のせいではないか」「1年担任しただけで何が分かるのか」と学校と対立関係になってしまうエピソードは、保護者からも教員からも頻繁に聞く話です。
この際に5歳児時点の情報があれば課題がどこにあるか探りやすくなると考えます。
また思春期や青年期に心身に不調を来した際にも、幼少期の発達履歴が残っていれば、貴重な資料になります。

5歳児検診実施についての区の見解をお聞かせください。

次に、2つめ、利用者情報管理の標準化とデジタル化を求めます。

障害を持つお子さんが関わる部署は多岐に渡り、児童発達支援センター、教育総合相談センター、障害福祉課、子ども未来部などが代表的なところでしょうか。その他にも学校園、児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所、医療機関、児童相談所など区営ではない関係機関も多くあります。

各機関を利用する際のヒアリングシートは共通した項目があり、出産予定日、身長や体重、分娩時間などの分娩前後の様子・栄養状態や黄疸など新生児期の状況、いつから首が座った、歩き始めた、おむつ外れは、いつから目が合ったか、人見知りはしたか、喋りはじめは、二語文はなんだったか、その他、家族構成、かかりつけ医、予防接種の履歴、持病などなど、これら基本的な部分だけでA4用紙数ページを手書きで書きます。
その他にも各施設が用意した詳細なヒアリングが同じくらいのボリュームで続きます。

就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援を行うためには、お子さんの生活を各機関で共有して引き継いでいく必要がありますが、手書きの記入では書き忘れや記憶違いもあるでしょうから各機関が同じ情報を持っているのかの確認は難しいものがあります。

現在、北区では就学相談を受けたご家庭に「サポートファイルさくら」を案内していますが、さくらは育児日記や覚書としては利用されているご家庭もあるかもしれませんが、各機関から提出を求めたり、記入を手伝ったりする運用ではありません。
私は1年間色々な人に聞いてみましたが、保護者にも事業者にも、さくらユーザーを見つけることはできませんでした。

せめて区の機関はさくらをベースとした記入内容の標準化を行い、関係機関にもさくらによる情報共有を周知していただきたいのですが、いかがでしょうか。

また、北区には「きたハピモバイル」という子育て支援アプリがあります。よく予防接種の管理や保育園の利用調整の結果確認などが目玉機能として紹介されますが、実は電子母子手帳機能もついており、成長記録の記入や写真のアップロードも可能です。
データはサーバー上に保管されておりスマホの機種変更をしても情報が消えることはありません。

現在もお子さんの個人情報をどこまで共有するかは区でも気を遣って対応されているところかと思いますが、きたハピは保護者が管理するアカウントですので、共有範囲も保護者に一任することが可能です。
サポートファイルさくらを、きたハピの機能に取り組むことで、縦割りになりがちな関係者間の情報共有の推進をご提案いたします。

またこれは障害児だけの話ではありません。
保育園や幼稚園、小学校の入園入学の際にも生年月日や家族構成、かかりつけ医、予防接種の履歴など何度も同じ情報を手書きする文化は残っています。
ぜひ既に北区に存在するこの2つの資源を活用し、子育て家庭全体の利便性向上をはかっていただきたいと考えます

なお、各機関のヒアリングシートの収集、標準化できる項目の洗い出し、関係機関への周知を考えると今すぐに実施できる施策とは考えておりません。
例えば令和8年に向けて開設準備中の児童相談所は、まさに障害児の利用が多く、複合施設として横のつながりを活かすことが重要な施設です。
ぜひこの令和8年度を目標に取り組んでいただきたいと考えていますが、いかがでしょうか

次に3つめ、障害児への情報提供について伺います。

先ほど申し上げました通り、障害児がサポートを受ける際は多くの関係機関とやりとりをします。
私は児童発達支援センターや特別支援教育に関わる保護者や関係者から多くのお話を聞いています。そこで皆さんが口を揃えていうのは「子どもの発達に心配があり早く支援につながりたいのに、区からの情報提供が少なく自力でたどり着くしかない」ということです。
障害者手帳を取得したのに特別児童扶養手当の存在を知らなかったり、支援級に通っているのに放課後等デイサービスを知らなかったりという、受けられる支援の全貌を把握できていない方は珍しくありません。

障害児が利用できる窓口を相互に案内するオペレーションはありますか?
強いて言えば「北区子育てガイドブック」の56,57ページに「発達や障害に心配のあるお子さんへの支援」というページがあります。これは区内で受けられる障害児支援の全てが網羅されているのでしょうか?

北区で子どもの発達に心配を持った際、どのような支援があるのか一覧できる分かりやすい資料の作成とWebでの公表を求めますが、いかがでしょうか。

また特に児童発達支援、放課後等デイサービスという福祉サービスの情報が不足していると感じます。利用したいと思っても施設の特徴や空き状況が分からず、20以上ある全施設に1つずつ電話していく方もいます。私も何か所か電話したことがありますが、担当者が不在、送迎中などで折り返しになることが多く保護者・事業者ともに多大な労力がかかっています。
そのうえ返事は「1年待ち」「何十人と待機中」ということがほとんどであるという徒労感を区は把握されていますか?

一例として台東区では昨年夏から各施設の、住所、入所年齢や利用時間、特徴、空き状況などを公式ホームページで公開を始めました。空き状況は月1回程度更新され、普段から各事業所とやりとりするついでに確認し、大きな事務負担はないと聞いております。
このようなものを北区で管理して頂き情報提供の充実をお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。

次に4つめ障害児の登下校のサポートについて伺います。
現在北区内の小中学校には3校に1校程度の特別支援学級が設置されています。
特別支援学級を希望したものの住所による指定校に特別支援学級が設置されていない場合は最寄りの設置校へ指定校変更して通学することができます。
小学1年生から支援級に通うお子さんは迷子やトラブルの予防、また指定校変更による距離の問題からも保護者の付き添い登校が必要で、最低でも3年生までは付き添ってくださいと指定している学校もあります。
小学生になると自転車のチャイルドシートに乗せることはできないため、送迎にかかる時間が保育園時代よりも増え、働き方を変えないと対応できないとい、という悲鳴がたくさん届いています。
また放課後等デイサービスについても送迎サービスがない事業所だと、療育か仕事かを諦める方がいらっしゃいます。

こういった場合、健常児であればファミリーサポートセンターの利用を検討できますが、感情や行動のコントロールが難しい障害児の対応をファミサポさんに任せることは、個人的には荷が重すぎると感じます。

そこで障害福祉サービスの中に移動支援というものがあります
移動支援とは社会生活で必要な余暇活動や社会参加のために、ガイドヘルパーによる移動介助をするサービスです。
運用の細かいルールは市区町村により違いがありますが、北区では特別支援学級への通学、また放課後等デイサービスの送迎に移動支援を利用することはできますか?
その際、自立までの訓練目的では3ヶ月という期限がありますが、お子さんの状況、目的地までの距離によってはより期限を定めない利用も認めて頂きたいのですが、いかがでしょうか?

また、移動支援だけではなく、現在堀船中学の改築に伴う通学支援で多くのスクールバスが運用され、より充実した学校活動に向けて増便まで検討されています。
支援級への指定校変更により毎日遠くまで通学するお子さんに対してもスクールバスの運用をご検討頂きたいと考えますが、いかがでしょうか。

12:30
最後に、5つめ障害児の放課後の過ごし方について伺います。

北区の放課後子ども総合プラン事業では、積極的な定員拡充や、わくわく広場との連携により待機学童の解消を成し遂げ、放課後や長期休みに子どもたちが安心・安全に過ごせる居場所として、また保護者が就労を続けられる保証としても、区民から「北区は子育てがしやすい街」と大変高く評価されております。

一方で、障害のあるお子さんにとっては「学童は選択肢にも入らず申し込んでいない。」「申し込んだものの続けられなかった。」という声が相次いで届いています。
そして保育園まではフルタイムで働けていた方が小学校からは退職せざるを得ないというケースが多く見受けられます。
保護者の就労補償、そしてインクルーシブ教育の観点からも、障害児と健常児がともに過ごせる放課後事業の拡充を求めます。

ちなみに障害のあるお子さんは放課後等デイサービスを利用することもできます。しかし既に本日お話しているとおり、北区では全事業所に問い合わせても定員に空きがなく、何十人もキャンセル待ちになっている状態が続いています。
また障害が重かったり支援の必要性が高ければ早く入れるということもなく、基本的には先着順になっていますし、順番が来ても週5日間の利用は約束されておらず、より多くの方にサービスを提供できるようにおひとりに対して週1日の受け入れのみという事業所も珍しくはありません。

障害児が学童クラブを使いにくい理由は2つあります。
1つ目は学童クラブが障害児にとって安心して過ごせる場所となっていない点、2つ目は学童クラブまでの移動が困難である点です。
この2つを解消する方法として、児童1人に対して支援員1人のマンツーマンの対応を強く要望いたします。特に特別支援学校と特別支援学級に通うお子さんに対しては欠かせない支援だと考えます。

お隣文京区では現場努力や市民運動が実を結び、1990年から学童クラブでのマンツーマンの支援体制を始めています。利用登録者の約5%が配慮が必要な児童で、健常児と同じように安心安全に過ごせる放課後の居場所として週5日間学童を利用しているお子さんも多いとのことです。
実際、昨年末に視察に伺った育成室では冬休みに入っていたため、「障害児が来るかどうかは分からない」と言われていたにも関わらず登録障害児の半数近くが利用をしていました。
教室にはたくさんのお子さんがいる中でも、指導員は障害児も安心して過ごせるスペースを確保したり、周囲のお子さんとの橋渡しを担っている様子も見ることができました。
また文京区で重度障害のお子さんだけではなく発達障害傾向やグレーゾーンのお子さんも加算の対象としていることから3教室合わせて20人以上の加算指導員がおり、学童から保護者て加算の提案を申し出ることもある等、全てのお子さんにとって手厚い保育が行われているように感じました。
更には2010年からは学童クラブで個別のサポートプランの作成と巡回指導も取り入れており保護者にもその情報共有を行っているとのことです。

そして、マンツーマンであることの最大の特徴は、送迎支援ができることです。
これにより特別支援学校に通うお子さんに対してはスクールバスのバス停までお迎えに行ったり、自宅が遠い特別支援学級のお子さんには集団下校の解散場所まで付き添い、保護者に引き渡すという柔軟な対応が出来ます。
先ほどの移動支援にも繋がる話ですが、例え学童クラブや放課後等デイサービスが充実したとしても、保護者が送迎することが前提であれば仕事を続けることは困難です。

一部の学童クラブや児童館からの試験導入でも構いません。障害の不安があっても安心して学童を申し込むことができ、利用を続けられるような放課後事業の充実を求めます。

以上、今回の質問は実際に障害児のご家庭から寄せられた声をもとに作成いたしました。
障害児、グレーゾーンのお子さんがいる家庭は、1つ1つの部署ではちょっとしたことかもしれませんが、生活すべてを考えると非常に負担の多い生活を送っています。
私のところに相談に来て下さるかたは、「自分はここまで調べてやっと支援にたどり着けたけど、中には障害に気づいていない人や、忙しさから諦めている人もいるのではないか」とおっしゃる方が多いです。
今なんとかなっている方がいるから良いのではなく、より弱い立場の方でも支援を受けられるよう裾野を拡げていくことをお願いしたいと思います。北区の温かい支援を期待し、質問を終わります。

<区の回答>

5歳児検診
子ども家庭庁が予算化したことからも北区でも諸課題の整理、先進事例の調査などを行っている。
引き続き事業実施に向けた環境整備を進める

利用者情報管理の標準化とデジタル化
きたハピモバイルとサポートファイルさくらという形になるかは分からないが、区業務全体のDXの推進の中で研究を進める

障害児支援情報をまとめて欲しい
→それぞれの状況に応じた個別対応をしているが
他自治体の取り組みも参考にしながら研究を続ける

児童発達支援、放課後等デイサービスの空き状況を公開して欲しい
→実施に向け準備中
※いま各事業所に協力依頼を出しているそうです!

登下校や放デイへの移動に移動支援サービスは利用できるか
→利用できる
訓練目的は3ヶ月としているが、状況に応じて3ヶ月を超えても認める

特別支援学級で保護者送迎が必要な児童生徒にスクールバスの実施を求める
→ファミサポ、子供と家庭の支援員、放デイの送迎などを利用している方が多いため実施しない

学童への加配としてマンツーマン対応を求める
→マンツーマン対応はできないが、今も障害児は59名受けいれている。
障害児も安心できる居場所になるよう今後も引き続き検討を続ける


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