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ラブコメ小説「夏の空に、あなたを見つけた」



夏の空が高く澄み渡るある日、僕たちの学校では新学期が始まった。

僕――山田陽太(やまだ ようた)は、普通の高校生だ。特別な才能もなければ、目立つこともない。でも、今年の夏は少し違った。彼女、桜井奈々(さくらい なな)に出会ったからだ―――


教室のドアを開けると、新しいクラスメートたちが賑やかに話していた。いつものように、僕は目立たない席を選び、静かに座った。そのとき、教室の隅で一人、本を読んでいる女の子が目に入った。桜井奈々だ。彼女は転校生で、その美しい黒髪と透き通るような肌、そして少し大人びた雰囲気が周囲の注目を集めていた。

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昼休み、僕はいつものように屋上でお弁当を食べていた。
誰もいない静かな場所で、風が心地よく感じる。すると、ドアが開き、桜井奈々が現れた。彼女もこの場所を見つけたのだろうか。

「ここ、いい場所だね」彼女は僕に微笑みかけた。

「うん、僕のお気に入りの場所なんだ」僕は少し緊張しながら答えた。

彼女は僕の隣に座り、お弁当を広げた。それから、しばらくの間、二人で静かに食事をしていた。言葉は少なかったが、不思議と心地よい時間だった。

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次の日から、奈々は毎日屋上に来るようになった。僕たちは少しずつ話すようになり、お互いのことを知っていった。彼女は本が好きで、特にミステリー小説が好きだということ、僕は音楽が好きで、ギターを弾くのが趣味だということ。

ある日、奈々が言った。「ねぇ、陽太君。文化祭で一緒に何かやらない?」

「何をするの?」

「バンドとか、どうかな?陽太君のギター、聞いてみたいな」

僕は驚いた。奈々がそんなことを言うなんて想像もしていなかった。でも、彼女の瞳がキラキラ輝いているのを見て、断る理由が見つからなかった。

「いいよ。でも、他にメンバーは?」

「それはこれから探すの。頑張ろうね!」奈々は嬉しそうに笑った。

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それからの毎日は忙しくなった。クラスメートに声をかけ、ドラムやベースを担当する仲間を見つけ、放課後の練習が始まった。最初はぎこちなかったけれど、少しずつ息が合っていった。

ある日の放課後、奈々が突然ギターを持って現れた。「陽太君、これ使ってみて」

それは彼女のお父さんが使っていたという古いギターだった。音色が美しく、弾くたびに心に響いた。

「ありがとう、奈々。このギター、大切にするよ」

彼女は静かに微笑んだ。「陽太君に似合うと思ったんだ」

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文化祭の日が近づくと、僕たちのバンドは校内で少しずつ注目を集めるようになった。練習の合間には、奈々と二人で過ごす時間が増え、彼女との距離がますます近づいていった。

文化祭当日、僕たちのバンドはステージに立った。観客席には、クラスメートや先生たち、そしてたくさんの生徒たちが集まっていた。僕の心臓は激しく鼓動していたが、奈々の笑顔を見て少し落ち着いた。

「みんな、楽しんでいこうね!」奈々の掛け声に、観客から大きな歓声が上がった。

演奏が始まると、僕たちは夢中で音楽を奏でた。奈々の透き通るような歌声が会場に響き渡り、僕のギターがそれに応えた。瞬間、僕たちは一つになった気がした。

曲が終わると、大きな拍手と歓声が巻き起こった。僕たちは満足感と達成感に包まれた。

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その日の夕方、僕たちは学校の屋上で夕焼けを眺めていた。奈々がぽつりと言った。「ありがとう、陽太君。君のおかげで、素敵な思い出ができたよ」

「こちらこそ、奈々のおかげで楽しかった」

彼女は少し照れくさそうに微笑んだ。「ねぇ、陽太君。これからも一緒にいろんなこと、楽しんでいこうね」

僕は静かに頷いた。「うん、もちろん」

夏の空が赤く染まり、僕たちの未来を明るく照らしていた。この先も、奈々と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる気がした。

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それからの僕たちは、日々の中で少しずつ大切な思い出を積み重ねていった。桜井奈々との出会いは、僕の平凡な日常を鮮やかに彩り、これからもずっと続く特別な物語の始まりだった―――

#2 へとつづく。

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