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不安な日本人は必読! 『日本は小国になるがそれは絶望ではない』 本要約

新型コロナウィルスの蔓延や年金問題で浮き彫りになった「このままで良いんだろうか?」という将来の不安豊かなはずの日本で生きていくことに不安を抱く人は、ぼくだけではないはず。

今回は悩める日本人におすすめの本、『 日本は小国になるが、それは絶望ではない 』を要約します。

本書は「羽鳥慎一モーニングショー」でコメンテーターを務める、経済評論家の加谷珪一さんの著書です。加谷珪一さんの経済解説は専門用語をなるべく使わず、ぼくみたいな経済の素人でもわかるように話してくれます。ぼくは「難しいことを、こんなにも簡単に解説する人の本なら読めそう!」と思って本書を手に取りました。

結果は予想通りでした。本書は専門家の視点で日本の課題を辛辣ながらも愛情深く、誰にでもわかりやすい言葉で解説されています。日本で生きる人たちの「未来を示すコンパス」のような本です。

本記事でわかることは以下のとおり

・日本は近い将来、大国から小国になってしまう可能性が高い
・小国になっても「生産性を上げる」ことで豊かになれる
・日本は英語能力が低いので、「消費主導型経済」を選択すべきである
・生産性向上こそ、消費を拡大させ消費経済を活性化させる手段である
・個人が学び直しで生産性は向上し、社会全体の適材適所化が可能

本記事で概要を掴んだ後に原著を読むことで、「日本で暮らすことへの不安」を軽くできるでしょう。

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引用:O-DAN

小国とは何か?


まずはタイトルにもある「小国」とは何か?について解説します。

小国とは「人口5000万人、GDP5000億ドル」の基準で超えていない国を”小国”、超えている国を”大国”と定義しています。

日本の人口は1.265億人(11位/2020年)で、GDPは5.4兆ドル(世界3位/2021年)と大国です。しかし日本は近い将来、小国になる可能性があります。

日本は世界でも稀に見るスピードで人口が減少しており、今のペースでは2053年には一億人を割り込む見通しです。出生率が低く推移した場合、2100年には5000万人下回るという驚くべきデータもあります。

人口とGDPには相関があるので、

IMFが2020年2月に公表した対日報告書では、日本は少子高齢化という長期リスクを抱えており、今の政策を続けた場合に40年間で GDP が25%も下振れすると指摘しています。 (2012年から2017年並みの成長だった場合との比較 )

つまり、今のままいくと日本は大国の地位から転落する可能性が高いのです。

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引用:O-DAN


日本人が豊かになるには?

ネガティブな話が続いていますが、安心してください。将来日本が小国になったとしても豊かになれると、本書は提言しています。

人口減少が進んでも経済成長させるには、「生産性を上げる」ことが重要なのです。

なぜなら生産性の向上は余剰の労働力を生みます。余った労働力は新しい生産に従事することにより、 GDPの拡大というプラスのサイクルにつながります。

ぼくたちは将来に向けて生産性を上げなければならない

生産性を上げることは重要ですが、日本の時間当たり労働生産性(2018年/日本生産性本部)は46.8ドルで、主要先進国の中では最下位です。 1位の米国は74.7ドル、2位のドイツは72.9ドル、3位のフランスは72.2ドルとなっており、日本の1.5倍以上高くなっています。

ここからは具体的に日本の生産性を上げることについて言及します。

生産性を上げるためには?


生産性を上げるために、ぼくたちは何をしなければならないのでしょうか。

本書では他国の好事例を参考に、「小国でも高い生産性を実現する3つのパターン」を解説されています。

①金融+先端産業 >>アイルランド、スイス、ルクセンブルクなど

IT産業が経済のけん引役となり、驚異的な経済成長を実現しています。 外資優遇策を強化しており多くの金融機関を誘致しました。金融と先端産業に特化するため「高度な教育」が必須かつ、マルチリンガルの語学力も求められます。

社会は徹底したエリート主義で、少数の能力が高い人材には極めて高い報酬が支払われます。 社会全体が豊かであれば、エリート層ではない人の生活水準も上昇するという考え方です。

②高付加価値製造業 >>スウェーデン東店フィンランド、オランダなど

競争力の高い製造業の設備投資によって経済を回す戦略。設備投資の多くは企業の生産設備に費やされているため、企業中心の社会です。

極めて高い英語力と徹底した競争原理主義です。 ドイツや北欧の雇用の流動性は高く、多くの国民が転職を経験しています。

政府は大規模な予算を投じ、職業訓練などの失業対策を実施しています。つまり政府が雇用の流動化による「不安を解消する役割」を担っているのです。
③消費経済 >>オーストラリアやニュージーランドなど

製造業に頼らず、国内消費を成長のエンジンにする経済です。 消費が活発で多くの国民が生活を楽しむことで経済を回します。設備投資の多くが住宅や商業施設に充当されており、日常生活を充実させる産業に力点が置かれているのです。

消費経済を実現するためには、社会の寛容さや自由さが極めて重要な役割を果たします。 規制が緩いことも重要で、 何もかも禁止という雰囲気では、消費も活発にならず個人の消費も増えません。政府が特定の産業を育成する概念も弱いので、政府による支出は総体的に低く推移します。

日本が選択すべき消費経済


日本は英語能力が低いため、消費経済を選択する以外の道はありません。

国際的な英語力の評価を行う EF Education First 社による調査で、53位と低迷しており「低い英語能力の国」という位置付けです。

①金融+先端産業や②高付加価値製造業を選択するには、高い英語力が不可欠。今からトップクラスの英語力を身につけるのは困難なので、必然的に③消費経済を選択する以外ないのです。

日本は製造業の国として知られている一方で、個人消費の比率が6割近くに達するなど、消費の比率が高いという特徴があります。 人口が減ってくるとはいえ、現時点では1億2000万人の消費市場が存在する国なので、有効活用しないのは宝の持ち腐れです。

競争力のある製造業だけを残し、余ったリソースは日本人自身の消費で経済を回す消費主導型経済にシフトするのがベストです。

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生産性を上げれば、賃金も上がる


生産性を上げることで、賃上げが実現できると著者は言います。

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日本が自らの消費で経済を成長させるためには、労働者の賃上げにより消費拡大につなげていく必要があります。

賃上げを実現するためには何としても、企業の生産性を向上させなければなりません。

消費経済は企業の生産性向上による賃上げからスタートするので、ぼくたち一人ひとりの生産性を上げる努力が重要です。


30代サラリーマンが本書を読んだ感想

ぼくは本書を読み終わった後に、未来に対して前向きな気持ちになりました。読みはじめた時は「政治などを介した日本全体の改善策」に終わるかと思ったのですが、最終的な帰結は個人の主体的な行動変化だったので希望が持てました。

昨今の日本情勢の話を聞くと「このままではダメだ」「一刻も早く日本から逃げ出そう」「政治が変わらないと何も変わらない」など自分にはコントロールできない話で終わることがほとんどです。

本書は企業と個人の生産性向上を軸に賃金上昇により、消費主導型経済へ転換すれば日本は豊かになると提唱しています。ぼくたちはリスキリング=学び直しを行い、 転職などの「賃金を上昇させる行動」をとりたいですね。

ぼくも本書を読んだ後から、プログラミングの勉強を始めました。いつもやっている作業を効率化したり、業界外の仕事を学んでみたり、個人でも生産性を上げれると思ったからです。30代ですが何かを始めることに、今日より若い日はないですからね。

ぼくたち自身が人生の主役となり行動を変えることで、日本全体を前向きで豊かにすることにつながります。本書はこれからを生きるぼくたちに、希望と勇気を与えてくれるきっかけになります。将来に不安を抱える方は、本書を読むことで清々しい気持ちになれるでしょう。

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引用:O-DAN

著者の日本への深い愛

最後にあとがきに書かれていた著者の一文を紹介します。

不都合な事実としっかり向き合い、その解決に向けて粘り強く努力することこそが、真の意味で愛国的な態度だと筆者は考えます。 (中略)
日本は小国として豊かな経済を実現する十分な潜在力を持っています。今こそ、従来の価値観を捨て、新しい経済の構築に向けて動き出す時であると筆者は考えています。その主役となるのはセーフでも経済政策でもなく、私たち消費者自身の「行動」なのです。 

経済の専門家として辛辣な事実に向き合いながらも、日本を愛し未来に希望を馳せる著者の姿に。ぼくは感銘を受けました。

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引用:O-DAN


全体の要約

本記事では『日本は小国になるがそれは絶望ではない』をまとめました。
要点は以下の通りです。

・日本は近い将来大国から小国になってしまう可能性が高い
・小国になっても「生産性を上げる」ことで豊かになれる
・日本は英語能力が低いので、「消費主導型経済」を選択すべきである
・生産性向上こそ消費を拡大させ、消費経済を活性化させる手段である
・個人が学び直しで生産性は向上し、社会全体の適材適所化が可能

本書を読むことで、不安を抱えながら日本で生きる人の疑問が晴れるでしょう。少しでも興味を持たれた人は、ぜひ本書を手にとって読んでいただければ幸いに存じます。


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