歴史書から学ぶ日中関係





異文化研修でも毎回お話しすることですが、
是非歴史書を手に取って読んでみてください、と。


歴史書を読むことで、
なぜ現在がこうなっているのかを
過去の歴史から学ぶことができるからです。


大学時代の恩師の口癖はいつもこうでした。


「物事には全て因果関係がある、今起こっている現象は過去に全て原因がある。だから我々は歴史を学び教訓とし、同じ過ちを繰り返さないようにするべきである。」


これは口酸っぱく言われました。
(恩師は当時日本で2人しかいないポーランド史研究の教授でした)


おかげさまで私はこの恩師の言葉を忘れることなく、
人として誤った道に入らずに済んでいるかなと思ってます。


私は日中の異文化について、
研修を通じてお話をさせていただいてますが、
駐在員やビジネスで中国人の方々と接する上で
一番大事なことは過去の歴史をよく勉強することだと思います。



「以史为鉴」(歴史をもって鑑とする)



これは日中外交上でも非常によく耳にする言葉です。


日中は近代不幸な出来事があったが、
それをしっかり反省し未来に向かって
より良い関係を築こうではないかという趣旨です。


中国史を少しでも勉強すると、
歴代王朝の開祖であったり明君と言われる
皇帝達は一様に熱心に歴史書を読んでいます。


平民から皇帝にまで上り詰めた漢王朝の開祖劉邦ですら
幅広く歴史書や本を読んでいました。
彼の場合はどちらかというと浅く広く読むというタイプですが、
本から要点を理解する能力は非常に高かったのではないかと思います。


中国史上一番読書の虫だったのは誰かと言われると
間違いなく明の開祖朱元璋だと言えます。


彼は、皇帝になるまで戦場であろうと暇すらあれば常に本を読んでいました。
皇帝になってからは自分と同じ境遇で皇帝に上り詰めた劉邦を崇拝し
漢書を読み込んだと言われています。あまりにも劉邦を崇拝するあまり
晩年の彼はまさに劉邦そのものでした。


また、現在の中華人民共和国を作り上げた偉大なるリーダー
毛沢東も朱元璋に勝るほど本の虫でした。
寝る時間を惜しんで夜更かししてまで
歴史書や色々な本を読み込んでいた逸話が残っているぐらいです。


毛沢東も漢書であったり、特に評価をしていたのが司馬光の「資治通鑑」です。
漢書にしろ、資治通鑑にしろ非常に素晴らしい歴史書であり、
リーダーとして上に立つものにすればこれほど素晴らしい教科書は
ないのではないかと思います。


(逆に読んで嘘っぽいなと思ったのが唐の太宗「貞観政要」です)


歴代の皇帝にしろ、毛沢東にしろ、歴史書を読むことで
先人達の失敗の原因を探り、同じ轍を踏まない為に
常に考えていたわけです。


毛沢東の場合、自分が大躍進政策で失脚し、権力を奪回するために
文化大革命を推進していくわけですが、準備段階から歴史書を漁って
読み耽っていたそうです。本からヒントがあるはずだと彼なりに
考えていたのでしょう。
(ここで彼の功罪をどうこう言うつもりはありません。)


つまり、中国人からすれば、
歴史問題というのは我々日本人が考えている以上に
もっと深いところで大事にされ考えられているわけです。


我々としてはそこを理解し、先人が行ったことをしっかり理解し、
彼らと向き合うことでやっと見えてくることがたくさんあると思います。


長くなるので、別の記事で書きたいと思いますが、
日中関係が良くないのは日清戦争や日中戦争に始まるものではありません。
少なくとも明王朝の初期から、我が国は彼の国に敵として認識されています。


お互いに過ちはあるのですが、日本側としても中国にかなり迷惑をかけていた
という歴史もしっかり勉強すれば、今の日中関係の理解も進むと思います。


ということで中国で頑張られている駐在員の方々やビジネスで関わられている方
中国に在住されている方、中国人の配偶者の方々、是非中国の歴史書を読んでみてください。

*ちなみに私は中国の史書については、原文もしくは現代訳文で読みます。





歴史書を読むのが苦手、と言う方は岡本隆司先生の下記書籍がおすすめです。
非常に分かりやすい内容となっているので、これ1冊を読めば中国の歴史の
因果についてよく理解できるかと思います。名著です。



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