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「転勤」という奇妙な風習がある日本、その非常識を異文化に持ち込むべからず


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駐在員として中国に仕事で来られている方には、

色々な方がいらっしゃいます。



ポジティブもしくはネガティブな感情で、

その「転属」もしくは「転勤」について語ってもらうと

講師の経験上9割以上はネガティブな感情

その「転勤」について答えが返ってくることが多いです。



駐在員の方々は往々にして
会社に言われて仕方なく来た、

ということが多い現状、
これに対してどうこう言うつもりは毛頭ありません。



ただ、少し考えて頂きたいのが、
そもそもこのような本人の意思如何に関係なく、

転勤が行われている国はどれほどあるのでしょうか?




はっきり言っていいでしょうか?




実は、日本だけです。



大事なことなので、もう一度言いますね。




会社都合で半ば力づく転勤させられるのって日本だけなんです。





異文化研修でこの話をすると大抵の人がポカン、とされます(笑)



そらそうですよね、
だって今までこのことをそんな風に
考えたことがない人が大多数ですから。



会社に言われたから仕方ない、

断ると今後のサラリーマン人生に影響する、

もしかしたら窓際族に追い込まれるかもしれない、



色々な理由があって渋々受ける方が多いと思います。




では、そもそも、なぜ日本でそのような奇妙な風習が生まれたのでしょうか。



色々な諸説がありますが、私は



✔️終身雇用制度



が大きく関係していると思います。




戦後ぼろぼろになった国を復興するために

我々の先人達が必死になって働き今の日本があります。



雇用側としても会社を20年、30年と安定して

発展させるために長期雇用という形態で人を採用し、

雇用側も安定した生活を必要とするためにそれに応える。




企業としては定年までに面倒を見る代わりに、

社員には理不尽な命令でも従ってもらう

という形が生まれたわけです。



もう一つは、定年まで一つの会社を勤め上げれば

一定の退職金があったことも大きいと思います。



(逆に、中国はそういうものがない為、少しでも条件の良いところへ
 定期的に転職を繰り返すという側面もあります)



転勤なんて私からするとデメリットだらけです



✔️引っ越し作業の発生(駐在の場合家具などの保管場所が必要、費用もかかる)

✔️場合によっては家の大黒柱のお父さんの単身赴任となり家族離散

✔️お子さんの学校の転校

✔️友人関係のリセット

✔️持ち家や車などを処分しないといけなくなる



とはいえ、メリットがないこともありません。



✔️定年まで安定した生活を送りたい人にとっては受け入れた方が良い

✔️定期的に営業拠点などを転々とさせることで個人もしくは集団での不正を防ぐ

✔️会社の業務拡大において、既存の人員を活用し新拠点の立ち上げを行うことが可能



雇用側も被雇用側もそれなりにメリットもあると言えるのではないでしょうか?




はい、ここで本題に入りますね。




転勤制度があるのは日本だけだと先にお伝えしました。




では、我が国以外の国では転勤制度というものはないのか?



あります。



ありますが、運用形態が違うんですよね。




基本は、本人の申請によるもの、となっています。




もしくは、会社からの打診を本人が受けたくなければ受けなくとも良い

断ることでキャリアの妨げにならないようになっている、ということです。




つまり、我々日本人が海外現地法人に出向し

駐在員として働く際に、
この決定的な違いを理解しておく必要があるということです。




駐在員として来られたからには、

人事採用なども経験することになります。



日本と同じ感覚で人を採用し、

業務拡大を受けてローカル人材を他地方の拠点に送る、




そんなことを本人の同意もなくやろうとすると、

間違いなく人は辞めて行きます

(私もそれで会社を辞めました 笑)



異文化コミュニケーションで大事なのは、

自国もしくは自分の常識は、その国での非常識となること、

これを理解することから始まります。



上司である俺(私)のことを聞いてすりゃいいんだ!

と思っているそこのあなた、上司として失格です。



自分の常識を捨て去り、
その国にあった常識で人を活用しましょう。




中国の場合で言うと、戸籍問題があります。




中国には、農村戸籍と都市戸籍の二つがあります。



農村戸籍の人は、
都市戸籍の取得が難しくなっていて、

都市で暮らしていても、
都市戸籍のサービスを享受できないようになっています。


具体的には、下記のような問題があります。



✔️その都市の学校に子供が通えない

✔️都市戸籍を得るためにはハードルが高すぎる(不動産所有、高級人材など)

✔️不動産購入時にローンが組めない

✔️社会保障サービス(社会保険など)がその都市で受けれない



背景には、中国の歴史を見ていくとよく分かりますが、



この国は「官民乖離」が強烈な国です。


ほらほら、上海の2ヶ月間の封鎖管理思い出してください。


お上と民がバチバチにやりあってましたよね(それ以上はいけない)。


(これについてはまた別の記事で書きますね)




頼りになるのは自分だけ。

貧しい農村戸籍の人は都市に出て出稼ぎするしかありません。




ただし、彼らを管理する政府からすると農村の人が全部

都市に流入したとなるとどうなるでしょうか?




皆さんが日頃食べている農作物、畜産物、水産物など

誰が提供してくれるのでしょうか?



政府としては食糧生産を担う農村戸籍の人が大量に移動されると困るわけです。



そこで、農村戸籍を作り彼らを農村にいてもらうように縛りつけた。

なので、彼らは都市に出稼ぎに来ても社会的なサービスを同じように

受けることはできないようにしたんですね。



ただ、近年この動きを改善しようという各地方政府の動きはあるものの

本気で取り組む姿勢は感じられません、やってるそぶりを見せているという感じです。



駐在員の皆さんに関わるお話としては、

ローカルスタッフを別の拠点に送りたいということもあるかと思います。



その際、上述したような内容をしっかり理解し、

ローカルスタッフの戸籍地以外の場所に転勤させることに

慎重になっていただきたいのと、転勤というよりは長期出張ということで

1年を超えないものにした方がいいということだけお伝えしておきます。



なぜかって?



そこはご自身でよくお考えくださいね~



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