野音2022セットリスト考
(※セトリネタバレあり)
熱いうちに勢いで書いておく。
今回はチケット抽選に玉砕しまくって現地参戦は叶わなかったけれど、配信はアップで表情が見られるし、メモも取れるし、たいへんに堪能いたしました。
これから生まれてくるエレファントカシマシの歌は、追い立てられるように《自由》を渇望したり、若次のように《ぶざまな》とは言わなくなるのだろうか。引きずり回して自由になったその先の、新しい世界になるのだろうか。
新曲あるかな~と思って期待もしていたが、あの感じでは…新曲がなかったのは納得。鬼練したのだろうけれども、うまくかみ合わない瞬間とかギタートラブルとか、気持ち的には両輪なのだから頭ではあれやこれやと考えていたのだろう、でもやっぱりソロに注力していた間はエレキをさわる時間なんてなかったのかな、どうしても技術的にはブランクになっちゃってたんだね、…などなど感じざるを得ない場面もちょいちょいあって。だが、それすらも力技で引きずり回す。まあ、そこがまた良かったりもするんだけど(…とことごとく甘やかしすぎる)。
やっぱり持ち味は、自分の生き方を模索して、自分を含めた全てを引きずりながら《かわいがってるぶざまな魂をさらす》のが、宮本浩次の真骨頂だと信じてやまない私としては、抑えてきた欲望が開放されて、真価を認められて多幸感でキラッキラに輝くソロ次でも解決できていない澱はいくらでもあるはずで、それを歌い続けてほしいと切に思っている。
そんな気持ちでセットリストを予想した。
今のこのタイミングのエレ次が〈演りたい歌〉に想いを馳せつつ、今のこのタイミングのエレ次に〈演ってほしい歌〉という願望も交えつつ、大人の本気で直感で厳選した32曲をリストアップ。
結果、当たったのは11曲(☆印)でした。
あえてセットリストから外してほしいと願った歌もあった。
・風と共に
・RESTART
・FLYER
・約束
みんなが2年ぶりの野音ライブ開催を喜んでいる。その際に使われる ‘復活’ とか ‘再始動’ という表現、新春2021と野音2021が開催されなかったから、そういうワードを使いたくなる気持ちもわからなくはない。でも、止まっていたわけじゃなくて地続きなのだと思っている。この歌たちは「ソロが一段落したからバンドに帰ってきたぜ!ここから仕切り直して再始動だ!」みたいな感じがする。だから、この歌たちを入れずに、何事もなかったかのようにしれっとしててほしい、そう思った。
いざ蓋を開けてみたら、
いやー、もうね、私は嬉しいよ。《強迫観念》と《承認欲求》が健在で。
この用語が難しいというお声もあるので言い換えると、《強迫観念》とはつまり「このままでいいのか俺は?もっともっと行かなきゃいけないんじゃないか?!」と何かに追い立てられる気持ち。《承認欲求》とは「まだまだ俺はこんなもんじゃねえ!」と認められることを渇望する気持ち。
それらがソロである程度は満たされて「俺ってすごいじゃん!」と自己肯定感も高まっているはずなのに、何のことはない、まだまだしっかりと居座っていた。それが私は嬉しかった。
それも、ソロの成功のおかげなのか、一周まわってあっけらかんと突き抜けて明るくなった《承認欲求》がそこにはあった。30周年以降の大人のもがきではなく、原初に還ったかのような青い衝動。
だって、“過ぎゆく日々” に始まり、そこからいきなりエレカシ史上最高最強の強迫観念&承認欲求ソング “地元のダンナ” ですよ。うわー、来た…と震えたよ。。。
こうして見てみると、私が予想した歌たちは、一周まわる前の、どちらかというと重くて明るくない承認欲求ソングたちだった。それが、同じベクトルでも重くて明るい歌が実際のセトリには入っていた。言ってることわかります?…ってこれ新春ライブ2022の感想でも書いたけれども。
“見果てぬ夢” じゃなくて “過ぎゆく日々”
“すまねえ魂” じゃなくて “なぜだか、俺は祷ってゐた。”
“今をかきならせ” じゃなくて “この世は最高!”
“晩秋の一夜” じゃなくて “月の夜”。
そして、あえて外してほしいと思った歌はどれも入ってこなかった。「現在地について10」で考察した《エレ次の中のソロ次》が作った歌たちも。ユニバ期は3曲しかなかったものね。
ここはひっそりと小さくガッツポーズ。
そう考えてみると、“今宵の月のように” や “ガストロンジャー” が入ってなかったのも、なんとなくわかる気がする。
この2曲はエレファントカシマシのいわば看板ソングであり、縦横無尽ツアーにおいて「ご存じエレファントカシマシ」の要素を担ってきた。全都道府県をまわって拍手喝采を存分に浴びて役割を全うすることができたこの歌たちは、《今このタイミングの野音で歌いたい歌》からは除かれたのではないかという気がする。
そしてアンコールの3曲。
「これも大事な歌」と前置きして始まった “星の降るような夜に”。
楽しかったこと、辛い思い出、諦めはしないぜ。
互い肩でも組んで、時には励ましあって、時にはそう手を取り合って。
見慣れた場所、いつもの連中。
長い坂道を、歩こうぜ。歩こうぜ。
続く “友達がいるのさ”。
やっぱりそうだ。
あいつら(=友達)が町で待ってるからその町へ出かけるんじゃない。
地元のホームタウン(=バンド)で、友達(=あの3人)が待っててくれるから、ソロ活動に出かけられたんだ。
東京中の電気を消して夜空を見上げて、星の降るような夜に、歩こうぜ。
そして、“ファイティングマン”。
俯いて静止する美しい後ろ姿。
イントロが始まると、あ〜最後の曲が始まってしまった…、終わっちゃうんだ…と悲しくなってしまう。だが、その寂寥感はすぐに爽快で剛毅なサウンドが吹っ飛ばしてくれる。全てを受けとめる、締めに相応しい堂々たる楽曲。圧巻。
これがデビュー当時の歌なんだから、それがまたすごい。
そう、誰だっていつだって、
連日連夜いろんなものと戦っている。
最近じゃ自分の歴史とも。なんてな。
生きている限り、戦っていこうぜ。
エヴリバディ、ファイティングマン!!
そうか、そうきたか、、、
それぞれの歌の中に、ああこの部分が歌いたかったのか!と感じる歌詞があって。
その部分を書き出したらまた何か見えるかもしれない。
想像していたよりもずっと思いっきり振り切ってきたな、エレ次め。
人生、真面目に生きてりゃ重くなる。一生懸命に生きてるひとが作る歌だから、そりゃ一生懸命な歌になる。でも明るいの。重いんだけどどっかしら抜けがいい。
これぞエレファントカシマシ。
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