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水面

仄暗く冷たい水の中、徐々に遠ざかる水面を見上げた先、朧げに揺れる太陽のすぐ隣に、同じように朧げに揺れるあなたが見えた。

その顔が笑っているように見えたのは、揺れる水面が見せた幻想だったのか。

それでも、その瞬間に何よりも強く願ったのは、どうかその顔が、弾けるような笑顔であってほしいということ。あなたへ手の届かない場所へとゆっくり落ちていく私を見て、笑っていてほしい、と。

私の口から少しずつ漏れ出る空気の泡は、その場を離れてもなお、あなたにまとわりつくように、上へ上へと上がっていく。

この身から離れたものでさえ、こんなにもあなたを求めている。私はあなたから離れたところで、私はあなたから離れることができない。

美しいほどに汚らわしくて、純粋なほどに醜い私の本能。

これは、あなたに触れてしまった罰なのだ。触れてはいけないものに手を伸ばした罰を受けることは当然のこと。

私は罰せられたかった。一生消えない罰を与えて欲しかった。そうして許しを得たかった。許されたかった。

誰に。私に。あなたに。誰かに。

何を。何かを。

形を持った瞬間、それは朽ちていく運命に向けて歩みを始める。そんなもの、私は絶対に信じない。

あやふやで不安定で不完全で、決して手に触れることが出来ないものこそが確実で永遠になるのだと、どうしてわからないの。

光の届かない深淵にたどり着いた時、初めて私は私を許し、初めて私を褒め称えるだろう。目を開いているのか閉じているのかもわからない闇をこの身がちぎれる程に求めたのは、紛れもなく私自身だったのだ。

深淵は、なぜそこを覗き込む私を、頭から食いちぎってくれないのか。

遠く離れた水面の先。小さくなっていく太陽の光。深くなっていく藍。

あなたは、まだ、そこにいるのだろうか。

そこいるのだとしたら、どうか、私を憐れんで。

そうして私を救いあげて。

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