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読書の秋2021 「車のいろは空のいろ」へとつながる「活版印刷三日月堂」

ここに、2冊の本があります。

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1冊は、読書の秋 2021 の課題図書、児童書としてあまりにも名高い、あまんきみこさんの「車のいろは空のいろ」(ポプラ社)です。

もう1冊は、これもやはりポプラ社ですが、ほしおさなえさんの「活版印刷三日月堂 海からの手紙」です。

一見、つながりがなさそうな2冊ですが、しっかりとつながっています。

「活版印刷三日月堂」と「車のいろは空のいろ」へのつながり

「車のいろは空のいろ」との出会いは、「活版印刷三日月堂」から。

友人が出店していた、活版 Tokyo 2018 に遊びに行ったことでした。

そこに作者の、ほしおさなえさんがいらっしゃり。

そこで、ほしおさなえさんにお会いしたことがきっかけで、「活版印刷三日月堂」を読み始めました。

「活版印刷三日月堂」は活版印刷の工場を舞台にした連作短編集。

各編が三日月堂を軸に繋がっていく物語です。

なかの一編に「ちょうちょうの朗読会」という話があります。

この朗読会で読まれるのが、「車のいろは空のいろ」だったのです。

「車のいろは空のいろ」との出会い

なぜ、そういう話になったのかは忘れてしまいました。

妻との会話のなかで、活版印刷三日月堂に出てくる「車のいろは空のいろ」に話なり。

「この、車のいろは空のいろ、って知ってる?」

「うちにあるよ」

「え」

そう、自宅に古い「車のいろは空のいろ」があったのです。

あるんだったら読んでみようか。

そんな出会いでした。

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車のいろは空のいろ

手元にある「車のいろは空のいろ」は、1977年5月が第一刷(だいいちずり)、この本は1986年の4月の第42刷(だいよんじゅうにずり)のものです。

本文に使われている書体は、岩田明朝体かと思いますが・・・ たぶん(そうだと思います)・・・

いま読むと、古めかしさがありますが、非常に読みやすい、スッキリとしていて品の良さを感じさせる書体だと思います。

この「車のいろは空のいろ」の世界感にピッタリの書体。やさしい話。楽しい話。ゆかいな話。不思議な話。そして悲しい話。

どのお話を読んでも違和感を感じません。

挟まっていたしおりも当時のものでしょう。かわいらしい絵柄のしおりです。

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そして、「白いぼうし」。

多くのかたが、小学校の国語の教科書で読んでいるのではないでしょうか?

「これは、レモンのにおいですか?」で始まる、ウイットに富んだお話です。

【「白いぼうし」の挿絵。もしかして、いま発行されている「車のいろは空のいろ」の挿絵とは違いますか?】

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小さい男子って、こうだよね。蝶とかクワガタムシとかトンボとか。

追いかけて捕まえずにはいられない。思わず、昔を思い出しました。

たけおくんは、ぼうしで蝶を捕まえたはず。ところが、そのぼうしのなかには・・・

「よかったね」「よかったよ」

タクシーの運転手の松井さんだけに聞こえる小さな声。

短いけれども、すごく、想像力を刺激される物語です。


活版印刷三日月堂  海からの手紙

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そして、ほしおさなえさんの「活版印刷三日月堂 海からの手紙」です。

祖父母が遺した活版印刷工場、三日月堂を、一人で切り盛りする弓子。

ちょっと切なさを感じる、それでいて気持ちをスッと落ち着かせてくれる読後感。

三日月堂の店主、弓子が真摯に仕事に向き合う姿に救われる人々が繋がっていく物語。

「ちょうちょうの朗読会」は、朗読講座に通う生徒たちが、朗読会のプログラムを三日月堂に依頼することを通して、言葉との向き合いかたについて深く考えていくお話です。

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この「ちょうちょうの朗読会」で読まれる本が「車のいろは空のいろ」です。

どうやったら上手く読むことができるのだろうか、言葉を伝えることができるのだろうか。

悩む生徒たち。が、最後は自分で決断するしかないと気づきます。

そこに大きな役割を果たすのが、活版印刷の持つ魅力と、あまんきみこさんが紡ぐ物語です。

もし、「車のいろは空のいろ」を読むことがあったなら、合わせて「活版印刷三日月堂」もぜひ読んでみてください。

おそらく、「車のいろは空のいろ」の極上の感想文を読めると思いますよ。

言葉が持つ意味、単なる文字の連なりにどうしてこんなに胸をうたれるのか、などということを深く考えさせられます。

さて、「活版印刷三日月堂」の本文書体ですが、同定してみました。游明朝体ではないかなあと。まったく自信はありませんが。

文字の個性があまり強くなく、可読性も判読性もよい、つまり読みやすい。いい書体だなあと個人的に思っています。


最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございます。

読書感想文にはなっていませんが、こういう本の読み方もいいのかなあ、と思っています。

ここで、再び「車のいろは空のいろ」を読み返すきっかけを作ってくれた、noteの運営の皆さまに感謝して、この記事を終わりたいと思います。

ありがとうございました。

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