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『カタツムリレポート#7 東京エコリサイクル株式会社』〈前編〉

こんにちは! 大学生カタツムリレポーターの飯島詩(いいじまうた)です。今回は家電リサイクル事業に取り組まれている、東京エコリサイクル株式会社さんにおうかがいしています。

インタビューにお答えいただくのは、川上信彦(かわかみのぶひこ)さん、大木智博(おおぎともひろ)さん。家電リサイクルの現場を知るお二人に、未来につながる研究のワクワクについてお聞きしました。


東京エコリサイクル株式会社におじゃましました

安全確保のため全員ヘルメットを着用し、見学させていただきました。

東京エコリサイクルってどんなところ?

飯島 本日はよろしくお願いします!
はじめに、東京エコリサイクルさんの事業についてうかがわせてください。

川上さん 当社のメイン事業は家電製品のリサイクルです。2001年に制定された家電リサイクル法の下で、メーカー自らリサイクルする責任があり、当時、日立製作所が出資しその法律に基づいて事業を開始しました。日立の家電製品の他、三菱電機、シャープ、ソニー、富士通ゼネラルなどのメーカーの家電製品もリサイクルしています。その他家電リサイクル対象製品以外にも、パソコン、OA機器、医療機器などのリサイクルも手がけています。

研究にフォーカス!

COI-NEXT参加の経緯

大木さん このコンソーシアムに参加した経緯は、前身のCOIからの関わりで、3Dプリンタから出るボビンなどの端材のリサイクルに協力しました。当社ではペレットを作っていたので、家電リサイクルから出る廃プラスチックのペレットを提供し、イスに再利用できるかどうかを検証しました。また、バイオプラでも実証し、イスを作り、一度粉砕し、再びイスに再利用するというプロセスまでも行いました。当社はR&D部門こそないですが、現在の事業を通して循環型社会に必要なお話ができればと思います。

前身のCOIでは、当時慶應義塾大学に所属されていた 益山詠夢先生(現 宮城大学 准教授)と連携し、家電の再生プラスチックから3Dプリンタによりイスが作られました。プロジェクト概要はこちらでもご覧いただけます。

家電リサイクルのこれまでとこれから

お話いただきました東京エコリサイクルの川上さん、大木さん(写真左から)

川上さん 使用済み家電製品は、鉄、非鉄、プラスチックなどの素材で構成されていて、これらの素材をできるだけ多く再生できるよう努めています。例えば鉄は電炉メーカーに戻り、また鉄が作られ、その鉄を再び新しい製品に使用する、といったことが行われています。温暖化の影響も考慮し、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビなどで使用されている冷媒フロンや断熱剤の回収にも取り組んでいます。最近ではプラスチックにも注力しています。2001年以前はほとんどがサーマルリサイクル(熱回収)されていましたが、我々はマテリアルリサイクルを中心にやっていこうということで、約20年前から家電のプラスチックを回収し、新しい製品に戻し、リサイクル材として使用するという役割を担っています。

飯島 家電リサイクルはどのように変化してきたのでしょうか?

川上さん 製品自体はもちろんですが、使用されている部材などが変化しています。特にプラスチックに関する変化が大きいです。いろいろな種類のものが使用されたり、PPやPS、ABSなどの基本的な種類も、製造段階でより有効的な製品を構成するためにそれらの比率も変化しています。

大木さん 家電リサイクル法はおおよそ5年(直近では7~8年)ごとに見直されていますが、初期よりも対象品目が増加しています。

川上さん この法律ができて以来、日立としては一貫してさまざまなリサイクルに取り組んできました。ただし、高価な素材を使用すると製品価格が上昇するため、メーカーとしてはできるだけコストを抑えつつ製品を作ることが重要です。家電リサイクルに関しては当初から我々のようなリサイクラーからメーカー側には素材や設計についての要望をしてきました。例えば冷蔵庫の省エネ性の追求やIot家電などは、我々リサイクラーにとっては非常にリサイクルしづらいものになっていたりするので、情報共有を通じてメーカーと協力し、進めてきました。ただ、このようにすべての静脈産業で動脈産業(メーカー)と連携しながらリサイクルを進めていくにはまだまだ課題はあります。

詳しくは、経済産業省のHPや、一般財団法人家電製品協会 に詳細があります。

飯島 プラスチックのリサイクル材について質や使用割合などはいかがでしょうか。

川上さん 日本のメーカーは非常に高い品位を求めますが、リサイクル材には不純物が入りやすく、100%取り除くことが難しいため、バージン材が好まれる傾向にあります。原油価格の上昇やバージン材の高騰などもありますが、一方で私たちが作っているリサイクル材は製造原価があります。人員、機械、電力などのコストがかかるため、リサイクル材の方が市場コストが高くなる場合もあります。それでもメーカーとしては使っていかなければならないという意識に変わってきています。

3Dプリンタのフィラメントのボビンから作られた、転生1回目の定規。

大木さん これは田中浩也先生のラボで使われていた3Dプリンタのボビンをリサイクルして作ったもので、約8~9割がリサイクル材で構成されています。通常このような製品にはリサイクル材を多くても1~2割ほどしか混ぜないことが一般的なので、よく見ると黒い点のようなコンタミネーション(異物)が入ってます。同じ種類のボビンを使用しているにも関わらず、色やコンタミが不可避に入ってしまうんですね。

川上さん 家電のプラスチックは品位が良いですが、容器包装に使われるプラスチックだとリサイクルすることはもっと大変です。リサイクルの課題は硬質プラスチックよりも軟質プラスチックの方が多いと思います。

大木さん 僕は一時期容器包装系プラスチックのリサイクルにも携わりましたが、容器包装のプラスチックには表面がプラスチックでありながら中にアルミがラミネートされている複合材が利用されているものがあるため、リサイクル材として成形加工する時にこのアルミがコンタミとして入ってしまうので、これが表面の点などになりやすかったりします。一つの部品に一つの素材しか使用しないモノマテリアル製法なども最近は主流になりましたが、例えばポテトチップスの場合油成分も多く含まれていますので、プラスチックだけでは溶解や変形が起きて、成分が染み出て悪影響を及ぼす可能性があるため、アルミがラミネートされていたりします。そのように工夫しないといけないプラスチック包装容器もあります。
反面、メーカー側がそのような問題をクリアするために新しい素材の包装用プラスチック製品を開発しても、特殊なプラスチック材ほどリサイクルしづらくなります。なぜなら、いくら特殊プラスチックのリサイクル材を生産しても、その使用用途は限られ、さらに特殊なプラスチック材の製品ほど、リサイクル材を利用して製品の性能が低下するリスクを嫌う傾向があります。高性能なスーパーエンジニアプラスチック(通称エンプラ)なども同様です。
一方、PP、PSやABSなどの汎用的なプラスチックに関しては市場もあり、リサイクルが進んでいて、大規模なリサイクルインフラやスキームも構築されています。ただ、特殊なプラスチック材など個別少量のリサイクルに関しては、ラボでの取り組みや3Dプリンタなどを通じて、うまく回っていく可能性もあるので、鎌倉で行われている取り組みはモデル事業になりつつあるのではないかと思っていますのでとても期待しています!

川上さん 将来的な話をすると「リサイクル♻️リサイクル」ということはよいのか。 全ての製品がリサイクル材を使用し、廃棄された後に再びプラスチックを回収し、一度再生された材料を再びリサイクルするという課題が出てくるでしょう。これには品位や品質の問題が関わっています。まだまだこれからリサイクル材が使われる製品が登場する中で、10〜15年後、再びリサイクル材が多く使われた製品が廃棄され、二度目のリサイクルがよいのかという議論になった際に、メーカー側がハードルを下げて積極的にリサイクル材を使用するのか、消費者側がリサイクル材に対して肯定的な姿勢を持つようになるかが鍵となるでしょう。

後編に続く。

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