観光業がこれから取り組むべきこと

本日は、堺筋本町にあるDECKというコワーキングスペースの主催で「アフターコロナ / 壁打ちセッション VOL.1 観光業 / ホテル業 ~みんなで集まって悩みを共有し意見交換しましょう!」という会のメイン講演者、ファシリテーターをした。

やはりこういう煮詰まった世の中、人との交流と真剣な話し合いの場所が大切だと改めて思う夜だった。

これからの観光業やホテル業にとって希望になるかもしれない、本日のセッションで出たキーワードを記しておく。前提条件としては、
・観光業は大きく落ち込み、ゆるゆると回復するだろうが、完全に戻ることはない。
・旅行をしたいという欲望が薄まってくる。
・地域が観光業に対してより厳しい目を向けてくるようになる可能性が高い

というところだ。


①それでも選ばれる「引力」を「みんなで」持とう

 旅行が気軽に行ける時代になったと思いきや、今回のコロナ19ではそれが覆されることとなった。しかし、旅行をしたいという欲望は消えることはない。問題は、その欲望を引き込める引力をどうやって持つかということだ。それまでの引力は観光資源と呼ばれるものであったが、それにさらに加えて「発信力」が必要になる。VR動画だけではなく、もっと強力なものだ。それは資源の見直しであったり、コンテンツの力を借りる(例えば、アニメの聖地巡礼など)だったり、そのエリアに住むめちゃくちゃコアな人には人気の高い「個人」であったり。
しかし、その発信力は大きく必要だ。例えば、町単体やホテル単体でやっても届かない。DMOみたいな組織がもっと情報分析力を持ち、大きな単位で(それこそ、マスに打つなら国家単位で。個人に打つにしても、エリアまとめて広告費を打ち込むくらいで)発信をしていく必要がある。「いとー(伊東)にいくなら は・と・や」「ほてるにゅーーーうあ・わ・じ(淡路)」、みたいなホテル単体でCMを打つ時代は終わるのではないか。ちなみにホテルニュー淡路のCMの女優さん、朝比奈彩はめちゃ可愛いけど。


②「安心」というキーワードを徹底的に磨き上げる

公衆衛生が、エリア単位で備わっていることは必須となるだろう。また、宿泊地は、感染面を考慮して、また地域住民の観光事業に対する不安を払しょくする意味でも、病院体制などもそろっていることが必要になってくるだろう。また、極端な話、海外から「Door to Door」で観光地に行けて、部屋食、部屋に風呂、という宿が選ばれていくのかもしれない。
 それに合わせて、繁華街というエリアは姿を変えていくかもしれない。密、不衛生、といった場所は避けられていく可能性もある。しかしその「味・混沌」も魅力の一つだ。レヴィ=ストロースが「悲しき熱帯」で、ラム酒に例えたように、汚く見える樽で仕込んだラム酒のコクの深さ(対して、清潔な工場のホーロータンクで仕込んだラム酒はコクがなかった)を、公衆衛生とともにどう町に残すかが大切なのだろう。

③都市近郊ホテルの新しい道

ホテル業についてはまた別の道もある。それは「4thプレース」を目指していくことができる、ということだ。「4thプレース」とは2012年にスターバックスが提唱した新しい「場」で、『3rdプレイスであるカフェに加え,WEBサイト,SNS,メールニュースなど様々なデジタルなサービスやメディアをミックスした第4の居場所が注目を浴びる』というものだ。
 リモートワークなどの浸透で、出張などのビジネスマンは減っていく。ただ、皆が家でできるわけではない。こどもの存在、騒音、集中力、設備、情報など、、、様々なものがオフィスに比べて劣る。
これからは発信することも大切な仕事になる。それを自宅でなく、発信力(設備だけでなく支援やアイデアもあるという意味で)が備わっている場所で仕事をするということも出てくるだろう。企業にとっては、通勤の削減、固定費の減少につながる。コワーキングスペースと大手企業が、情報交換や発信力の強化を狙って提携しているような流れが、ホテルという機能をも巻き込んでいくかもしれないとにらんでいる。

専門的な話をもう一つ打つとすれば、地域から観光業に対する厳しい目(三重県でコロナ感染者宅に石投げたようなことはこれからも起こりうる)を乗り越えるために、行政や団体が連携して「しっかりとした観光戦略を立てる、そして実施していくという覚悟を持つ」&「観光によるメリットが地域全体の経済を活性化させて市民福祉につながる、というビジョンを示す」ことが大切になるだろう。山梨県のとある市では、観光温泉施設が平日に市民の健康福祉の場所となり、そこに大学が連携して健康チェックをすることで市民の健康レベルを引き上げることに成功した例もあるが。


とはいえ、これからしばらくは厳しい時間が続く。しかし、希望はある。その希望に向かって取り組んでいこうと思う「気持ちになれるか」こそが、厳しい時間を乗り越えることができる組織・人のキーワードになるかもしれない。

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