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飲食店がこれから取り組むべきこと

先日に引き続き、DECKのイベントで登壇した。お題は「アフターコロナ / 壁打ちセッション VOL.2 飲食 / 食品関連業 ~集まって悩みを共有し意見交換しましょう」というもので、飲食店を経営あるいは働いている人や、食関連コンサルタントなどとのセッションを行った。

前提としては、
①このコロナ対策の自粛ムードはまだまだ続く。おそらく、ぶり返す旅に営業の自粛要請が出ることが繰り返される。
②再開できても、安全衛生に対する考え方が厳しくなる。席数の制限(密を避ける)、トイレ手洗い場の面積と設備確保、営業時間など。回転数重視の飲食店などは厳しい状態となる。
③そもそも、給付金などだけではキャッシュが追い付かない⇒自転車操業の企業が多い(上手くいっているようにみえても)。
④ケータリング、テイクアウトだけでは売上がそれほど上がらない
⑤人材の確保がより困難になる。正社員化はなかなかできない、かといってアルバイトも今後は敬遠される


以上のことから、半分の飲食店が廃業に追い込まれてもおかしくないとみている。では、これからどうやって飲食店は生き残っていけるのだろうか。


① 強烈な引力『行く理由』が必要となる

先ほども述べたが、衛生対策は必須となる。トイレや手洗い場の改善指導が入るようになるかもしれない。小さなお店では厳しいだろう。換気設備の設置については国の補助金が出るのだが、大きな費用なので、今は投資する余力がある店舗は限られる。
 今までの、お店がお客様を引き寄せていた「引力」だが、「食材」「価格」「優越感」「場所(アクセス)」「レジャー」「スタッフ」「驚き」「流行」「癒し」「贅沢」「一緒に行く人」「エリアの名前(たとえば、銀座など)」etc…いろいろなものがある。しかし、これからも『変わらぬ引力』はなんだろう?そしてこれから生まれる『引力』はなんだろう?ということを考えなければならない。「安心」「清潔」などがそれに加わるはずだ。またその飲食店が持つ「ストーリー」は引力となりうるが、それをどういう伝え方が大切になるのか?を考えなければならない。その理由は後に述べる。


②情報発信と顧客の囲い込み強化が必要

いままでの飲食店は、集客に力を入れることが大切であった。結果的に売り上げは常連客が多く稼ぐものの、ぐるなび、食べログなどの活用は必須であった。その上で、SNSで、「定期的な」情報発信、スタンプカードなどによる顧客維持(インセンティブ)をしていたが、今後は『10割の売り上げを常連から獲得するという意識が必用』になってくると思われる。オフィス街はリモートワークで閑散とし続ける可能性もあり、「わざわざ来てくれる」人は、そのお店のなじみの客ばかりになっていくだろう。とはいえ新規はゼロではないが、費用の掛かる食べログやぐるなびよりgoogleの活用を考える人は出てくるだろう。そしてより大切なのはCRM(カスタマーリレーションマネジメント)だろう。たまたま来た新規は「確実に捕まえる」仕組みづくりも重要だ。要するに「お客様は逃さない。そしてずっと関係を作り続ける。」その上で、『お店に来なくてもお金が支払われる仕組みとインセンティブ維持施策』が大切になるだろう。最近では定額制サブスクがはやっていたが、オフィスに来る機会が減れば、このサービスはかえって割高にな幹事る人が増えるはずだ。目指すべきは、オンラインサロンのような囲い込み政策である。
ちなみに、お店の新規出店は、0からお客を増やす、獲得するという非常に投資がいることになるので、のれん分けスタイルのようなものが主流となるのではないかと思われる。フランチャイズで広げるにしても、これまで以上に飲食業は厳しくなるのだから(ビルオーナーも貸したがるかどうか難しいので)


③ これからの飲食業のキーワード1「低コスト&そこそこの品質&こだわりポイントを徹底的に磨く」

いままでの飲食業のスタイル(小規模店舗)といえば、
 ・自店舗で食材を吟味し、仕込む ⇒ 時間がかかる
 ・長年やってきた職人が価値を持つ ⇒ 人材育成に手間と時間
 ・夜が中心の営業スタイル ⇒ リスクが高い
 ・雇用は必然的に不安定

という形であった。

一方で、チェーン店などの大きな店舗では、
 ・セントラルキッチンの運営(50店舗以上のお店があるなら、この方が効率的と言われている)
 ・食べログやぐるなび中での広報戦略
 ・季節雇用、臨時雇用がスタッフの中心
 
という形がよくみられていたが、
 ・農家からすれば、飲食店相手は規格がうるさくなく量がさばけるがが、安い
 ・常に人材難。スキルが継承されない、スタッフのキャリアデザインを描きにくい
というようなマイナス面もあった。

このような形の両方のマイナス面を減らす形態が現れてくると考えている。
それは、
 ・中規模のセントラルキッチンが農家から正当な値段で規格外品を購入し、何店舗化の飲食店がその運営をシェアする。製品は冷凍で店舗に運び、解凍するだけで提供可能とする(空いた時間を店舗で職人がよりこだわりの食材を手間をかけて提供することが可能となる)
 ・飲食店は、少ない人数でも回せるようにICTの活用(お客様のスマホで注文でき、お会計もスマート決済など)

 具体的には、徳島県の「Naruto Base」などの取り組みが好事例だと考えている。いつまでも職人気質が大切だったり、アナログな状況では難しい。安価な居酒屋も多少は生き残るかと思うが、それでは先に述べたような「常連」を作ることは難しい。ある程度の飲食店で生き残りたいと思うなら、コストの逓減と顧客の囲い込みに力を入れるべきだ。 

最終的に力を持つような形態は、「産地×加工業(者)×プロデューサー・ディレクター×職人」のような形を、そのお店の顧客が支援し、出資者になるようなイメージだ。
お店にはストーリー(想い)が必要だ。それが支援者を生む唯一の原動力だ。
資本力でなく、支援者が愛着を持って店を、そして店を通して地方の産地・生産者と結ばれていく。そんなお店が増えていくと思っている。具体的には三重県須賀利漁港と東京飲食店のつながりのような。
こういうつながりを、プロデューサーや行政がうまく創り上げていくことが望ましいと思うのである。






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