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この時期、農家が種苗法よりも困ること


さて、種苗法改正に反対する方々には、いくつかのポイントで話をしているが、そろそろ疲れてきた。
1:自家採種ができなくなる⇒デマ。そもそも、あなたたちの食べる野菜を作る多くの農家は種を買っている。
2:種代が高くなり、農家の経営を圧迫する⇒種代以前に、農業は儲からない。それは人件費や土地代のせい。種代なんて微々たるもの。日本の農業を支えるなら、もっと高く野菜などを買う必要があるが、それが日本人自体ができないのなら、海外に打って出るしかない。そのために種苗法改正は第1歩。
3:海外の会社に日本の農業が席巻される⇒2と同じで、そうなりたくないのであれば、種苗会社も日本の農業も消費者自身が買い支えなければならない

このへんの主張は様々な過去のnoteで語っているので興味があればご一読いただきたいが、私自身はもっともっと農業に課題があり、それを解決するためにはどうすればいいのかという考えを広めることをしていきたい。それは、TOP画面の田植えに関することである。

この時期、農家同士のフェイスブックグループの投稿は、田植えで忙しいなどの投稿が相次ぐが、決まって『「田植え機」や「代掻きしていたトラクター」の水没事件』が投稿される。正確に言うと、泥にタイヤがはまって抜け出られなくなることなのだが。これは実は農業について、非常に根深い問題がかかわっている。

そもそも、田んぼなんてやわらかい泥なのだから大きなトラクターが入ればそりゃぬかるみにはまるだろうと思うだろうが、そうであればそもそも大きな機械が入れない。田んぼは、泥ばっかりではない。クボタさんの記事が非常に分かりやすいので、リンクをご覧いただきたい。
つまり、泥の下には砂利などで構成される硬い層がある。これがないと、底なし沼になる。江戸時代などは沼を干拓して稲を植えた。ただ、その頃は人が出入りするので(まれに牛や馬が耕作するが)、そこまで問題なかった。ただ、それであっても沼状態だと作業もしんどいうえに、作物にも影響が出る。なので、人は一生懸命農地を改良してきた。固い地盤を作るために大きな石を投入したり、一度掘り返して敷き詰めたり。そして、この農地改良には、行政への届け出などが必用である。そしてこれを出せるのは農地の所有者に限られる。

ところが、この農地改良というのはだれもがしているわけではない。泥が深く、機械がはまりやすいような農地では時間ばっかりかかって割に合わないはずなのだがそれをしない農地所有者もいる。なぜしないかといえば、「その人自身が農業をもはや行っていない」ことがある。高齢化などを理由に、人に任せる人のことだ。任せる、、、というと聞こえはいいが、実際は地区の若い人に(作業条件が悪い割には)格安でさせているのが実情だ。そういった作業を押し付けられる若い農家からは、「土地持ち兼業農家を優先しすぎた結果」というストレートな声も聞こえる。

こういった農家は結構多く、土地を手放さない農家の問題として、過去から対応が叫ばれてきている。詳しくはリンク先に譲るが、農地を保持しておくと、そのうち住宅地に転用したりできるので高く売れるという思いがある。だから、カネがかかる改良などやりたくない。どのみち自分が困るわけでもないのだから。本来はこういう農家は、土地を譲っていくよう促しているが、先のリンクにあるように有名無実化している。土地持ちだけの農家はそれなりに地域の中で古株なので、農業委員会なども機能しない。結果、泥の深い農地はそのままにされ、ある日転用される。転用を認めるのも農業委員会だ。ただ、下手をするとその上の建物は、大地震の時に液状化して住めなくなる危険をはらんでいる。

種苗法などで農家が困るより、こういう農家がいるほうが、その地域で本当に頑張る若い農家にとって問題であるのだ。農業が、食の安全安心が、と叫ぶ方々は、本当の日本の農業を見て、その課題をどうすればよいか考えていただきたい。適正な改良をされ、若くてやる気のある農家に土地が集中して作業効率が上がることで、種代などもしっかり払えるようになる。どころか、お米の値段ももしかしたら下がるかもしれない(まあ一部のエリアに限られるが)。種代をしっかりもらえる日本の種苗メーカーは新しいより美味しいお米を開発でき、世界に進出することもできるかもしれない。
そういったことまで考えていただきたい。

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