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【かんがえること】超映画総合研究所 企画の意図と検証についてのまとめ

2023年度ももう終わりますね😅今年度、超図書館総合研究所で実施された事業の中でも、何かと話題だった「超映画総合研究所」。その1stシーズンを終え、ゼミ長の志田一穂さんからレポートをいただきましたので下記に掲載いたします。


超映画総合研究所 企画の意図と検証についてのまとめ  記 志田一穂

掲題の通り本件は2023年上半期より小生が企画立案した「映画シェア部(仮)」を発展させた「超映画総合研究所」についての意図、及び各期における実践後の検証を独自にまとめたものである。構想に基づく企画意図と主旨、そして試験的に開催した0(ゼロ)会から、本開催に至る計6回の振り返りまで、実態を報告するとともに出来るだけ事後の参考にもなるよう記した次第である。尚、凡そ全本文は発信側からの分析になるため多少認識と考察が偏る。恐縮だが事前にご了承いただきたい。

「映画」と置き換える「語らせる者」という考え方

超映画総合研究所の基本理念は「コミュニケーション」という漠然としたものではあるが、それを「映画」という芸術表現を用いてアレンジし実践することで、他との差別化を演出、よって特別な捉え方が若干なりとも可能では、という考えは、まずあった。
概して我々は「映画」という存在に対し、ほぼ一方通行で常時対峙していることを認識しておかなければならない。映画館、ビデオグラム、配信など、あらゆる視聴方法においても「映画」との交感、あるいは交歓はあくまで自己本位である。
しかし「映画」そのものから視聴者へと与えられるあらゆる情報とメッセージが存在し得る限りは、相互関係が成立せずとも一可能性としての交感性は成立する。その媒体として「映画を語る者」に置き換えたとすれば、重ねて対話も実現するように考える。つまり「映画」に対して「語らせる役割」を置き、その位置をプレゼンターとすれば、対する視聴者はその対話に参加できるということになる。

小生は常々「映画」とは何か、「映画」の役割とは何かという問題提起を行ってきた。それは10代、20代の頃に没頭していた自主映画制作の作業から生まれた観念=テーゼである。自身で映画を作りあげただけでは自己完結でしかなく、第三者に鑑賞させる行為が伴い、はじめて創造物に命が宿る。
かくして自身の「映画」は潤滑役となり、自身の周辺に様々な繋がりが発生していったことはその後の小生の人生を極めて決定付ける重要な一幕であった。端的に言えば自らの「映画」で多くの知己を得たということである。
しかし前述したように一般的な「映画」においては(つまり自身とは無関係の商業映画は)絶対的に一方通行である。そこに「映画」との直接的な交流は無く、寧ろ自身の孤立さを際立たせてしまう「行き場の無い存在感」すら思わせる。そうした際、果たして「映画」に対しての捉え方がそれで正しいものかという疑問が溢れる。そうではないのではないか、という、つまりは自己肯定にも期待する不確かな想いだが、なぜすべての「映画」が個人にとっての繋がりまでに派生しないのか、恐らくは「コミュニケーション」要素の活用を受け手側が怠っているだけではないのか、それがいわゆる小生が提起する問題の主体であった。
要点が繰り返しになるが、「映画」と置き換える「語らせる者」という考え方は、この「コミュニケーション」の「復権」についての嘆きと、さらには心の叫びであったように考える。踏まえて、以下が主催となる図書館総合研究所に提出した企画書の全貌である。

映画シェア部(案) 企画:志田一穂

大好きな映画を、皆にも観てほしい!

好きな映画への思いを持ち寄り、
集まった部員皆に紹介、シェアする。
それが、映画大好きさんたちのための「部活」コミュニティ、
"映画シェア部" です。

参加概要はいたってカンタン。
これ面白くて大好き!という映画を一本決めていただき、
自由なかたちで推薦してもらいます。
第一回目は各自プレゼンして大好き映画のアピール。
第二回目はそれを受けて、「観てみたよ」という映画の感想交換会。
ラジオDJの志田一穂が、集まった部員のフォローアップをしつつ、
一緒に映画談義へ参加してまいります。

募集参加人数はたったの10名。
だけど、だからこそ、ここでの「部活」はかなり密なものなるでしょう。
この「部活」が定期的に行われ、
様々な「10人部員コミュニティ」が形成されていき、
それらが独自に「スピンオフ部活」を研究所にて開催していくようになる、
そうなれば良いなと思っています。

集まれ、映画大好き仲間たち。
ここから、映画でコミュニケーションしていきましょう。
開催場所 超図書館総合研究所
司会進行 志田一穂
第一次募集参加人数10名
※この10名で全2回集まります。
※各回、イベント後別途交流会も企画します。

0(ゼロ)会開催とリサーチ材料

本企画は図書館総合研究所代表取締役の廣木響平氏に素早く承認されるが、具体的な組み立てへと進行していく上でさらなる生じた問題としては、意義ある「コミュニケーション」に果たして集合環境が発展するのか否かという点である。
その企画内容の立体的検証として、廣木氏及びスタッフからの提案により、2023年5月12日に、図書館総合研究所のオフィス「超図書館総合研究所」にて0(ゼロ)会と題し実際に模擬開催を行った。声がけに快く賛同してくれた有志諸氏によるプレゼンターは計7名で、それぞれが推薦映画を一作持ちより一人5分のプレゼンを行っていくという構成である。
既にこの段階から司会進行の志田が用意した推薦作の音楽をシャッフル再生によってプレゼン順を決めるという流れは実践され、プレゼン時間の5分を過ぎても付け加えたいことがあればタイムアップ後も多少は耳を貸したりと、スタイルの基礎は凡そ確立していた。

参考
vol.0 プレゼン7作品
「20センチュリー・ウーマン」
「名探偵コナン ベイカー街の亡霊」
「スモーク」
「きっと、うまくいく」
「イニシェリン島の精霊」
「エヴリシング・エヴリウェア・オール・アット・ワンス」
「ゆきゆきて神軍」

その後毎回に感じる唯一の興味深い確率として、集まる作品のジャンルが実に雑然としていて印象的にも重なることが一切無い、ということがあった。つまり本件はいかに「映画」が多くの提示によって日常にインしているかということを確認する。小生の拙い映画音楽ラジオ番組のモットーも同様だが、「新旧取り混ぜたすべての映画」を推していくということに対して、こだわればこだわるほど新たな発見と多くの気づきを得るのである。参加していただいた有志諸氏にとっても、プレゼンされなければ恐らく観る機会は(観ようとする意志すらも)無かったであろう作品群だったこともまた確信する。

しかしこの0(ゼロ)会ではいわゆるDAY.1だけ(プレゼンのみ)なので、ここからどのような意見等が抽出され、その対話からどのような科学的かつメンタル的反応が発生するかの検証には至らない。本来であれば「コミュニケーション」はDAY.2の交歓作業を以て完璧な検証と資料になるため、段取りにやや怠りがあったと言わざるを得ない。しかしながらDAY.1は大変盛況に終わり、開催の実態について満足度も高かったのは主催側においても大いにモチベーションとなったことは確かである。(0(ゼロ)会の各プレゼンター、そしてギャラリーで集まったいただいた有志=ボランティア諸氏たちにはこの場で感謝をお伝えできればと思う)

かくして0(ゼロ)会での反省点は次の本格的第一回(志田ゼミ 第一期)に向けて大きなリサーチ材料となった。ポイントは「時間配分」と「環境作り」であり、前者は7名分だとかなりの長時間拘束となるためスムーズな進行が必要ということ。後者は本来の「コミュニケーション」の推進を(DAY.1でも)促していくために、意見交換の場を意識的に多く設けていくということである。この点で言えば、たとえ関係者の繋がりで参加いただいた有志の方々とは言え初対面であることは間違いなく、それでも終了後には推薦作についての話題が雑談の中で尽きることもなかったことは特筆すべきことだと捉えている。ここに「環境作り」についての新たな課題も生まれていたということである。

ゼロから第一期へ 段階を踏んだ改定の始まり

結果的に0(ゼロ)会完遂の勢いで本番開催へと舵は取られた。超映画総合研究所の別称を「志田ゼミ」としたのは、志田一穂の発信企画であることを位置づけることと、「ゼミ」という少人数制イベントであるという提示の意味もある。プランナーとしての小生志田一穂は、ここに至るまで「映画」や「映画音楽」についての講演や解説、またサウンドトラック・レコードを用いての催事も行ってきたわけだが、今回の「志田ゼミ」はそのどれにも当てはまらない企画であり、よって実際に第三者が宣伝内容に対してどう反応してくるかが一番の重要点であった。
つまり新企画の肝である「コミュニケーション重視」という内容が受け入れられるかどうか、という一点に尽きる。しかし、とは言え映画愛好家や交流の場を求める方々が、少しずつでも参加表明をしてくれるだろうとは期待していたのも確かである。にもかかわらず、結果それは惨敗に帰する。原因は一様に参加者意識の件と考える。
「プレゼンしにいく」と、「プレゼンしてあげる」という意識の違い。企画する側としては「プレゼンしていただく」という環境に、そもそもしていないといけなかったのではないか、という問題点である。SNSやPeatix等にて情報解禁し度重なるリマインドを促すも、申し込みは皆無であり、そもそも企画進行自体に非現実的な点があるのではないかという認識を迫られる事態となった。結局記念すべき初回も0(ゼロ)会を踏襲して、再び関係各位のご協力を仰いだ上で、苦肉の策に陥りながらの「志田ゼミ第一期」開催となった。

第一期 DAY.1 2023年8月10日 DAY.2 2023年8月25日

プレゼン7作品
1 東京都 男性(24) 推薦作『るろうに剣心』2012
2 千葉県 男性(29) 推薦作『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』2008
3 新潟県 男性(50代) 推薦作『戦場のメリークリスマス』1983
4 東京都 男性(26) 推薦作『激突!』1971
5 東京都 女性 推薦作『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ 2001~2003
6 大阪府 女性(23) 推薦作『はじまりのうた』2013
7 志田一穂(飛び入り) 推薦作『サイコ』1960

進行と内容については0(ゼロ)会の反省点を活かして実践されたかとは思うが、やはり7名という人数と、それに伴う推薦作についての意見交換をも意識していくとなると、所要時間が予定よりオーバーしてしまい、毎回の負担エネルギーが(これはスタッフも含め)相当なものになることを改めて実感することとなった。しかしだからこそその疲労度に反してとても充実度は高かったと認識する。どれを見ようか、あの作品は絶対に観たい、などと参加者の対話は終了後も尽きず、会場撤収後も打ち上げと称して最寄りで二次会に興じディスカッションが続くほど、「映画」による「コミュニケーション」について、より実現度が強くなっていったことは実感できたのである。

課題、問題は山積みだが、繋がりの鉱脈を少なからず確認できただけこの第一期に踏み込んだこと自体は肯定的と受け止め、次期改訂へと前進する。

第二期、交流という本来の意味

第二期はそれから二か月半を経てようやく開催された。まず件のプレゼンターを一気に4名に絞り込む。結果的に自主的参加と声がけ参加、半々という布陣となり、前日になってインフルエンザで一名欠席となってしまったがそこに再び志田が飛び入りし、4枠をなんとかキープしたという着地であった。

第二期 DAY.1 2023年11月17日 DAY.2 2023年12月1日

プレゼン4作品
1 東京都 男性(43) 推薦作「ドライヴ」(2001)
2 東京都 女性(-) 推薦作「ヤクザと家族 The Family」(2008)
3 東京都 男性(59) 推薦作「ミニー&モスコウィッツ」(1971)
4 志田一穂(飛び入り) 推薦作「正しい日 間違えた日」(2015)

今回、開催中の時間配分についての配慮にこだわる。それにより、DAY.1ではプレゼンのあとの意見交換、質疑応答、そして雑談を含め、忙しなかった前回までとは比較にならないほどの交歓状況に余裕が生まれ、「コミュニケーション」の実現化で説けば、かすかな手応えは感じられたと言え、「一方通行にならない」、その場を形成するための時間配分に意識を持つことが、その解であったと認識する。志田による司会進行の姿勢についても同様である。分け隔てなく意見を伺い繋げていくことは難しいが、出来得る限り交歓状況を作り出すのは進行役の動き次第なのだ。

そしてその相互関係が活発化した一つの要因として、ギャラリーの増員が目立ったことが特筆される。第二期のギャラリーはDAY.1が5名、DAY.2が6名と、その人数はプレゼンター数を両日共に上回った。これは第一期参加者の面々が再びこの場に足を運んでくれたことと、その諸氏が友人知人にこのイベントのことを話してみたところ、それは面白そうだと反応し、同席してくれた方がいたということであった。この連鎖的な発生状況は想定外であり、既に第一期のあの満足度、充実度が参加者によって外へと発信されていったということである。この反応は主催側にとって再び多大なる後押しとなる。こうして少しずつこの集まりの真価が伝わっていけば、恐らくさらに「映画のコミュニケーションの輪」が広がっていくのではないか。それは如何に宣伝に力を入れていくかという論争とは相異なるもので、つまり交流という本来の意味を形作るものは何なのか、という問いに帰結するのである。

第二期のもう一つの改訂点としてドリンクの販売開始がある。これは会場にてリラックスして参加してもらうための軽食の提供というのが大義ではあるが、やはり少しでも経費回収の一つとして成立できないかという実験的実施でもある。今後人数が増えていけばこれもマネタイズの一役を買ってくれるだろうという期待となる。

第三期、ようやくの起点に立つ

こうして第三期に踏み切るための話し合いは総体的にもかなり強い討論となったわけだが、それでも同体制と同ルールだけは、ここまでにおいて誇示していこうということになり、志田もこれまでのような「飛び入り」ではなく「レギュラー」としてプレゼンター登板していく、というルールも改訂された。
また第二期の盛会から熱いうちにと(実際そのような意見もあった)、時間を空けず一か月半後という早いペースでのDAY.1の開催となった。これには功を奏したのかプレゼンターの自主的参加が一気に増え、短期間で4枠すべてが埋まるという快挙となった。さらに第三期ギャラリーの申し込み人数もDAY.1,2各6名と、再びプレゼンター数を両日共に上回る。
この理由は、一重に前回生じた「参加者からの連鎖」によるものであろう。実際第一期、第二期の参加者とその知人、友人が多く、さながら会場では再会を喜ぶ一幕も垣間見え、回を重ねていくことの重要さを目の当たりにすることとなる。(ちなみに「志田によるイベント」ということをもっと強調すべきという意見もあり、それはフライヤーにて露骨なまでに表現、アプローチしたが、恐らくその成果ではないであろうということは個人的に特記しておく)

第三期 DAY.1 2024年1月19日 DAY.2 2024年2月2日

プレゼン5作品
1 東京都 男性(43) 推薦作「パラサイト 半地下の家族」
2 東京都 女性(40代) 推薦作「ノスタルジア」
3 東京都 男性(59) 推薦作「激突地獄拳 大逆転」
4 東京都 女性(-) 推薦作「LIFE! /ライフ」
5 志田一穂 推薦作「TOKYO!」

今回も実に多種多様な作品が集い、会場もプレゼンごとに盛り上がりを見せた。以前参加者から、SFやアクションなどジャンルに分けた特集プレゼンもやってみてはという提案があったが、現状はこの様々な顔を持つ映画という幅広さを一つのテーブルに一緒に置くことを、寧ろ特別な提起にしたいと改めて感じる。繰り返すが、かたやアカデミー賞受賞作の韓国映画、かたやシネフィルのアート映画、さらにはハリウッド・エンターテイメント作品に、昭和臭充満の東映アクション映画など、これらが分け隔てなく推薦されギャラリーたちを沸かせること、これぞ映画なのではないかと強調したい。

第三期はこの4名のプレゼンターに志田が合流し5名の推薦作となる。そしてこの作品たちをDAY.2までに観るすべについても、よりしっかりと情報を提供することとなった。前回第二期のプレゼン作品にDVDや配信でも観られない作品が混在していたという事態が発生したため、それについては事前確認で是正していくということである。(第二期の観られなかった作品についてはプレゼンターの責任ではなく確認出来ていなかった志田と主催側の責任のため、時期では図書館貸し出し可不可も含めリスト提供する)

こうして第三期で見据えたことの一つに「継続性」の重要さということも浮上した。ここまで多くの意見交換と検討に時間をかけてきて、その度に、ときに大胆にシステムや段取りの改訂を試み、また結果を受けながら是正を繰り返してきた。かくしてその「やり直しの継続」が毎回最終的には望むべき「コミュニケーション」の発生に繋がる。
計三期という区切りをもって現在は丁寧にリマインドし、さらなるリニューアルに向けて胎動している最中だが、根本的態勢、及びは姿勢は固定化されたと認識する。

以上がファースト・シーズンと称する超映画総合研究所/志田ゼミの活動実績概要である。企画から構成、組み立て、回収計画、そして継続と、この短期間にこれだけの開催が実現できたのもすべて超図書館研究所のスタッフ諸氏による尽力の賜物であり、その類まれなるオフィス(兼イベント会場)を活用し、そこから新しい何かを発信しようとする思いが、これだけの「映画の輪」を、まずは起点となる渦として形成されたのだと強く感じている。細かい課題は尽きることがないが、こうした実績から確信すべきことは、どうすればその輪をさらに広げられるかを問うよりも、どうすればこの輪を大事に扱っていけるか、そこに注力するための「継続」という意志ではないか。もちろんそのための外壁補強は何より重要だが、真意はそのテーマの根本が「映画」という芸術作品であるがために、実情は多分に精神論としても深いものであると考察する。


資料:超映画総合研究所にて選出された映画の東京都内公共図書館における所蔵リスト(※2024年3月時点)