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【つくること】 第5回超映画総合研究所”志田ゼミ” DAY1(2024.7.12)レポート

超映研セカンドシーズン、第五期開催。今回もまたプレゼンター、ギャラリーのお申込みをたくさんいただき、主催一同、大変嬉しく思っております。
常連ゼミ生たちによる「自主的スピンオフ会」も開催されたりといった情報も届き、課外活動も充実しているというこの超映研。
テーマとして掲げている「映画でコミュニケーション」が自然発生していることはとても重要なことだと受け止めています。
交流とは声がけして意図的に繋げるものではなく、まして強制するものでもないので、この志田ゼミも、テーマを発したとしてそれは単なる(だけど大切な)「提示」であって、「提言」ではありません。
「映画」という総合芸術の中に何を見るのか。何を見出すのか。まさに多種多様なプレゼン作品たち同様、そこにはさまざまな「発見」=「気づき」があるはずで、それらがいよいよ各所で胎動し始めたということではないかと感じています。
そんなわけで、超映画総合研究所 志田ゼミ第五期。今回もまた、プレゼン作品とプレゼンター諸氏による推薦解説のポイントをご紹介します。


推薦作『スティング』1973
監督/ジョージ・ロイ・ヒル
主演/ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード
プレゼンター/miwaさん

映画界に輝く屈指の名作、と言われながらも、実は観たことがない、大昔に観て忘れてしまった、という方も多い、言い換えれば、「今は昔」な作品。
それをあえて力強く推薦されたのが前回『アバウト・タイム 愛おしい時間について』をプレゼンされたmiwaさんでした。
1930年代のシカゴが舞台というこの作品、古き良きノスタルジィがサラリと洒脱に描かれていて、とにかくグッド・センスが溢れている映画と解説。台詞もいちいちキャッチ―で、それは一重に脚本の素晴らしさにあるということ。
脚本を手がけたデヴィッドSウォードは、その後長き沈黙を破り、90年代に入ってから『めぐり逢えたら』という傑作を放って再評価されたという情報も。
そして何より本作のテーマ曲。お馴染み、ラグタイム調の楽曲はマーヴィン・ハムリッシュによる「エンターテイナー」で、オリジナルはスコット・ジョプリンによるもの。
ここにも作品全体の雰囲気を崩さない音楽センスの良さがマッチして、映画もサウンドトラックも相乗効果で大ヒットになったとのことでした。
そして、プレゼンターmiwaさんは、あえて本作の一番の見せ場については一切触れずにプレゼンを突き通しまして、これも言って見れば先入観なく観てもらうための、一つの推薦演出ではないかと思わされました。

推薦作『天使のくれた時間』2000
監督/ブレット・ラトナー
出演/ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ
プレゼンター/スミイシランさん

初プレゼンのスミイシさんは、物語を細かく解説することで、本作の一見、「え、これどういう物語?」と思わせるところを、まずは軽減してくれたように思いました。
それこそがファンタジー作品をしっかりと推薦する手法でもあると感じましたし、このような基本的な導入部分の説明がなければ、何が面白いのか、どこが切り口なのか、ひいては「これは観たくなるファンタジー映画だ」に繋がらないのではと思うのです。
時間いっぱいそのような解説をされてタイムアップになりましたが、この複雑な設定による本作の「土台」は確実に伝えていただいたので、補足としてのお話をさらにいただいたところ、この映画の元ネタと思える作品、1946年の『素晴らしき哉、人生!』が紹介されたので、作品自体の存在感も明確にリーチしていただきました。
アメリカ映画史に輝く傑作にしてクリスマス映画の最高峰であるこの作品は、その後もいろいろなアレンジを経て、リメイク、リスペクト、オマージュ作品として多々製作されてきました。
志田さんからも、この『天使がくれた時間』もまさに現代調となって蘇った『素晴らしき哉、人生!』であること。それぐらいアメリカという国で愛されている物語構成作品であり、ヒューマンドラマにファンタジーがミックスされるという、ある意味「異世界」的な表現がハリウッドに多いのは、そのような「定番」としての位置付け=一ジャンルが確立されているからではないかと、併せて解説されました。

推薦作「ジュマンジ」1995
監督/ジョー・ジョンストン
主演/ロビン・ウィリアムズ
プレゼンター/志田一穂

いつもラスト・プレゼンターとして登場する志田さんが今回は中盤に登板。ゴールするまでリアルな災難が立て続けに起こっていく恐怖のボードゲーム“ジュマンジ”を巡る、これもまた異世界的なファンタジー映画。まずは本作を観ていないことがどれだけ残念であるかを豪語。
90年代はじめから、CGの導入でVFXによる絵作りがほぼリアルになったことで、本作もまた観たこともない映像世界が次々に現れる楽しさがあることも強調。
二転三転していくストーリー展開からも目が離せずで、想像もつかないラストの意外性には、当時感動してやや涙もこぼれた(志田さんが)ということもご報告。
さらに本作を観たあとは是非、(忘れたころに登場した)続編2本も観ていただきたいと「ジュマンジ」シリーズも大推薦。設定は変われど、すべてが繋がっているという続編たちは、この最初の「ジュマンジ」を観ているからこそ楽しめる内容とポイントばかり。
超映研ではこれまでもシリーズとして観て楽しむ映画がいろいろと紹介されてきましたが、本作も当然同様な扱い。「全部観てほしい!」シリーズなのでした。

推薦作「東京流れ者」1966
監督/鈴木清順
出演/渡哲也、松原智恵子、川地民夫
プレゼンター/宮田さん

プレゼン初となる宮田さんからは、60年代日活アクション映画界に鎮座する異端児、鈴木清順監督によるカルト映画『東京流れ者』が登場。これにはかつてのピエール野村氏の『地獄拳』を想起させるワクワク感が一気に場内へ充満。
本作へのオマージュとして作られたのがあのデミアン・チャゼル監督『ラ・ラ・ランド』なのだという、いきなりの強烈なビックリ情報で期待通りギャラリーもどよめき、これでバッチリ掴みはOKとなった様子。
さらに鈴木清順監督の弟があのNHKアナウンサーだった鈴木健二であるというプチ・トリヴィアまで披露するので、ややプレゼン制限時間大丈夫かと気になりつつも、ご自身もよく歌舞伎をご覧になるとのことで、清順作品と歌舞伎との比較論へと突入し軌道修正。
その色彩の美しさや場面設定、シーン展開の大胆さなど、清順監督は歌舞伎をモチーフにして、舞台としての演出が、映画という別枠でも感じられるという、不思議な面白さがあるとじっくり説明。
かくしてやっぱり早々にタイムアップ。志田さんからも、世界に評価されるカルト映画ということで、こんな映画があったのか的な新発見は確実に体験してもらえるだろうと、追加フォローされました。


推薦作「ルパン三世 ルパンvs複製人間」1978
監督/吉川惣司
声の出演/山田康雄、増山江威子、小林清志
プレゼンター/トーヤマさん

第三期志田ゼミにてアンドレイ・タルコフスキー監督の『ノスタルジア』をプレゼンしたトーヤマさんが、公式超映研プレゼンとしては初となるアニメ作品をドロップ。しかもルパン映画と言えば最早『カリ城』が定番(だと思っているの)ですが、あえての『複製人間(クローン)』ということで、プレゼンにも特異な切り口が多々登場。
まずは「とにかく(絵の作り方が)オシャレ」。テレビの1stシリーズに近い劇画調のキャラ設定や(つまりモンキー・パンチの原作に近い)、色彩設定、構図の作り方、ハードボイルドな台詞などで、ルパン三世のオリジナルが持つ世界観が忠実に再現され、それこそがクールでオシャレな作品として伝わってくるとのこと。
また、歴代のアートの意匠(ダリ、キリコ、ミケランジェロなど)が大胆に劇中引用されていたり、不二子の極めてアダルトなシーン(現在ではテレビOAできない)が惜しみなく登場したりと、全体にオトナ向け映画として作られているのも、現在のルパンとは一味違うカラーが楽しめると解説。
志田さんからは、本作の共同脚本に、前段紹介された日活アクション映画時代、鈴木清順と並んで異端児扱いされていた無頼派、大和屋竺(やまとやあつし)がいることについても説明。氏は鈴木清順とともにルパン第二シリーズ(新ルパン)の監修や脚本も手がけ、ルパン三世の持つ可能性を広げた、映画界からのテコ入れ立役者であった、と補足されました。

推薦作「リトル・ダンサー」2000
監督/スティーブン・ダルドリー
出演/ジェイミー・ベル
プレゼンター/菅谷さん

本作のプレゼンも今回が初となる菅谷さんからの作品。80年代のイギリス、ロンドン郊外が舞台のミュージカル映画から、次のチェックポイントたちをアピール。
「ダンスがうまい子役のビリーがイイ」「ビリーを応援するおばあちゃんがイイ」「夢を追う息子を無言で見つめるお父さんがイイ」。ということで、本作はとにかく登場人物たち皆がとてもイイ!と絶賛。
おばあちゃんはボケているようでここぞというときに引き締めてくれたり、お父さんは「人は変わるのさ」とやはりピンポイントでキメてきたりと、家族のドラマとしてのクオリティーの高さがまず土台にあることが伝わってきたのと、当然ミュージカル映画なので音楽も素晴らしく、プレゼンター自身も「サントラは即買いでした」と熱く語るほど。
中にはTレックスの「コズミック・ダンサー」もあれば、「白鳥の湖」もあったりと音楽映画としてももちろん楽しめる作品とアピール。
志田さんからは、このようなロンドン郊外が舞台の作品で印象的だった作品『ベルファスト』や、同様の舞台設定であるイギリスの音楽映画『シング・ストリート』などもご紹介。あの長屋スタイルで団地街的に作られたロンドンの街の風景は、映画の中で知り得た独特な街並みであり、そこにこそこのような家族の物語や人間関係についての密でディープな話題が溢れているのでは、と語っていました。

以上、今回も前回に引き続き、計6作品のプレゼンをたくさんの方々とシェアいたしました。ギャラリーには新規でいらっしゃった方々も多々おり、観たことのある映画、観てみたいと思った映画たちに対して、真剣に対峙して戴いている様子がひしひしと伝わってくる、そんな第五期DAY.1でございました。
「鈴木清順作品は観ていてしんどいがとても面白い」といった否定肯定どちら?な微妙な意見や、「昔テレビで観た『スティング』は月曜だったか水曜だったか…」という記憶を辿り始める方や、「ルパンの肝はメカニック・デザインを担当している大塚康生さんの功績がめちゃくちゃ大きい」といったお薦めの補足など、プレゼン後も大いに意見や感想交換で盛り上がりました。

というわけで、この志田ゼミは推薦作を観て、それについてまた意見交換していくDAY2をもって着地。そのDAY2は7月26日(金)になります。
・なぜその作品を観たいと思ったのか?
・どうやってその作品を探して観たのか?
・観た上でどう思ったのか、どう感じたのか?
・そして、その映画から次に思いつく映画とは何か?
そんな意見交換を行い、志田さんが総括していきます。そうして今回集まった作品たちを今一度最終的にシェアしたところで、全行程終了となります。

さて、この6作品、今回もたまたま集まったものなのか、
あるいは何か意味をもってここに集まったものなのか?

重要な気づきは、再び集合するDAY2にあります。
このギャラリーは引き続き申し込みOK!
お楽しみに!