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二 いつものミルクティーと四年ぶりの彼女

 ヒロと再会したのはポールと出会ってから十日ばかりたったある日のことだった。

 その日もまた雨だった。傘を忘れた僕はあわてて喫茶店に入り、いつものようにミルクティーを注文した。

 濡れた上着を脱ぎ、やっと落ち着いて顔を上げると、少し離れた席に座っているひとりの女の子と目があった。僕はすぐにそれがヒロであることに気付いた。

 四年ぶりだったが、彼女は昔の面影そのままに大人の女性になっていた。

 ショートボブの髪に、切れ長の目。ヒロは同性から美人と言われるタイプの顔立ちをしていた。いや、大人になった今の僕には彼女が間違いなく美人であることがわかる。しかし出会った当時の僕は幼すぎて、彼女の美しさを正当に評価することができなかった。

 彼女はどちらかといえば愛想が悪い方だったが、聞き上手だった。そして僕にとって一番話しやすい女の子だった。僕は考えを整理したい時にはいつも彼女に相談したものだった。

 そしてヒロは、当時僕が絶望的な片想いをしていた女の子の親友だった。

 その頃のイメージのままのヒロが、目の前にいた。彼女は目だけでちょっと笑った。

 僕はふらふらと彼女の席へと近づいた。

「ヒロ!」

 彼女は今度はにっこり笑った。

「そ、ヒロよ」


> 三 存在としての「しゃべる犬」

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