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夢のためには小さな努力から(#高校生インタビュー)

はじめに

このインターンシップレポートは、NPOカタリバ Rootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援事業)が展開するRootsインターンに参加した高校生の体験をまとめたものです。

日本社会での進路を自分ごとに

「外国の人」ときくと、海外から来る外国人(旅行者や留学生等)を想像する方が多いかもしれませんが、今、日本の子どもたちとともに育つ外国ルーツの子どもたち(両親、またはそのどちらか一方が外国出身)が増えています。親の事情で来日した子がほとんどですが、環境の変化に前向きに、そしてしなやかに向き合っています。

多様な教育背景をもつ子どもたちの日本でのキャリア形成は、まだまだ事例が多くはありません。彼・彼女たちの目線で日本はどう見えているのか、そして今まさに越境を体験している高校生から、これからの未来について、この記事を読んでくださっているみなさまとも学んでいけたら幸いです。

今回の記事では、今年の夏にグーグル合同会社(以下、Google)で実施のRootsインターンに参加した、ネパールにルーツを持つPさんのストーリーを紹介します。

“In the future, I would like to help people through IT”
(将来はITを通して人を助けたい)

事前課題の回答より

数学が得意で、年上のいとこにプログラミングについて教わってからIT業界に興味を持ち始めたPさん。1年生ながらインターンを通して将来について考えはじめるようになりました。


私のルーツ

私は1年前の夏にネパールより来日しました。スポーツが大好きで、ネパールにいた時から休みの日は友達とよく外で遊んでいました。コロナのせいで中学生の時はあまり遊びに行けなかったけど、どっちにしろ勉強が大変で部活にも入っていないくらいでした。

昨年ネパールで中学校を卒業してから日本に来て、日本の中学校へ数ヶ月通ったあと、今年の4月から高校に通っています。日本語の勉強は大変だけど毎日がんばっています。高校ではバスケ部にも入ったし、最近アルバイトも始めたので毎日忙しいけど楽しいです。今度N3(日本語能力試験 、JLPT)をとりたいと思っています。漢字をいっぱい勉強しています。

日本語で補えない部分は、用意してきた自己紹介シートをみせたり
英語をまじえたり、いろいろな手段でお互いに伝えあいます

インターンに参加するまで

ネパールにいる私のいとこはプログラミングの仕事をしています。前に少しだけ仕事について教えてもらってからITに興味を持ちはじめました。いとこはプログラミングをやるので私はデザインの部分を担当したいなと思い描いています。なので、将来はウェブデザインについて勉強したいです。

I want to help people.
(人の助けになりたい)

事前課題の回答より

ITもだけど、ずっと考えているのは、「人を助けたい」ということ。テクノロジーは人の役にたつ分野だし、自分のやりたいことに近いと思ったんです。だから今回インターンに行くのは、ITを通して何ができるか知りたい自分のためになると思いましたし、将来は英語を使って仕事をしたいとも考えているので、いい経験ができそうだなと期待していました。

期待にあふれながらも、気になっていたこと

ITで働くためにどうすれば良いのか、私は知りませんでした。どんな勉強をすれば、どんなことを頑張ればいいのかについて気になっていました。また、私は家族との時間も大切にしたいと考えているので、働いてからのワークライフバランスについても知りたかったです。

インターンシップを体験して

当日のくわしい様子は、前回の記事をご覧ください

言語の壁はあるけれど、自己表現はできる

背景を選んだり、キャラクターを選んだりするのは簡単だったんですけど、プログラミングのコマンドが全部日本語だったからそれが大変で、横でヘルプしてくれた人が一個一個意味を教えてくれました。発表直前にやり直した(データが消えてしまい、90分かけてつくったものを15分ほどですべてつくりなおすことに…!)時は、英語設定に変更したこともあり、スムーズにできて楽しかったし、「わかる!」と思えて簡単に操作ができたんです。それがすごく嬉しかった。

プログラミングという未知のものに対して、まだ1年ほどしか触れてきていない日本語で挑戦したPさん。自分の想像していることを表現するのは誰にとってもむずかしいことです。その上、言語が変わればできることにはどうしても制限が出てきてしまいますが、そんな状況でも周囲の助けを得ながらゲームを完成させていて感動しました。日本語でがんばれるところはがんばって、むずかしいところは工夫しながら経験を積めるといいかもね、ということをPさんとお話しました。

カタリバの担当メンターコメント
選択肢について周囲に尋ねながらも、最後の決断は自分でおこなうPさん

仕事にトラブルはつきもの?!どの行動を選択するか

人前に立った経験があまりなかったので、最初の自己紹介も、つくった作品をシェアする発表会も、とても緊張しました。みんなが先に発表していくので、さらに緊張しました。自分の番がきて、どの言語で発表するか悩みましたが、日本語に自信ないから英語で話しました。

実は発表前にトラブルがあって、それまでつくっていたゲームのデータが消えてしまいました。どうしようかすごく焦ったのですが、相談をして、他の人が発表している間にもう一回作りなおすことを選択しました。(発表はむずかしいかもしれないと思ったんですが)直せたんです!同じ完成度まではできなかったけど、発表はできました。

最大限できたところを、達成感ある表情で発表するPさん

チャレンジのあとにあらわれた、次の機会

インターンが終わって学校がはじまった時、先生からあるイベントに出てみないか誘われました。そのイベントとはEducational Fair(学校説明会)です。このイベントではたくさんの受験生とその保護者の前で、学校代表として先生から質問されたことに関して話さなければなりません。先生から質問されてそれに答えるだけだと言っても、全部日本語でやらなければなりませんでした。

これまでの自分だったらそんなことはできない、と断っていました。
でも今回のインターンでみんなの前で発表するという経験、日本語を使って何かするということを経験していたのでやってみようと思ったんです。

「とっても緊張した!But I think after Google, I was able to do that.
(Google(での経験)の後だったからできたんだと思う)」

生徒のふりかえりより

それと、もう一回Scratch(ビジュアルプログラミング言語)でゲームをつくることに挑戦したいと思いました。インターンの時はネコがイヌを追いかけるて捕まえるというゲームをつくりましたが、もう一回挑戦してみた時は、動いてるバスを避けて横断歩道を渡ろうというゲームをつくりました。難易度があがっています(縦横移動だけでなく、奥行きをもった移動もできるように)。笑

今回は英語で作り始めて、デザインを先に決めたらあとはやりたいことを表現するプログラミングをするだけでした。やりたいことをコマンドを使って表現することは難しかったけど、とても楽しかったです(日本語もプログラミングも両方一気にはむずかしいので、まずはプログラミングに挑戦することを選択しました)!

私のこれから

とりあえず今は日本語の勉強を頑張りたいと思っています。12月にはJLPT(日本語能力試験)があるし、それに向けて勉強をしています。やっぱり漢字とかの勉強は難しいし、毎日忙しいけど、少しずつ覚えるようにしています。あと英語の勉強やタイピングの練習もしています。まだパソコンは難しいけど、将来のために必要なことだと思っているので取り組んでいます。

あとがき
事前プログラムの時からPさんの努力している姿にずっと感動しており、こちらの背筋も伸びる思いでプログラムを進めてきました。1Day企業体験の当日も、最初の緊張が嘘のようにだんだんリラックスして作業を進めていくPさんの姿を見て、胸が熱くなる思いでした。
英語でやったらできるのに…といった言語の壁を感じながらも諦めない姿、努力する姿には見習うものがあります。将来の夢のためにコツコツと積み上げていくことは簡単ではありません。でも、難しさを分解して積み上げる大切さや、挑戦が次のチャレンジへの意欲を生むのだと、私は今回、Pさんから学びました。

カタリバの担当メンターコメント

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Rootsインターンについて🌱
Rootsインターンは、外国にルーツを持つ高校生に
「日本社会とのつながりと、応援してくれる人との出会い」を届け、

企業の方には、直接高校生と関わりを持つことで「身近にあるDE&Iを体感してもらい、可能性に出会ってもらう」ためにはじまりました。
*DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

これまでに複数社とインターンシップを行い、私たちの想像を超えたつながりを生んでいます。

これまでのレポートはこちら:

問い合わせ先:
認定特定非営利活動法人カタリバ Rootsプロジェクト(外国ルーツの高校生支援)roots@katariba.net