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「未明」 ZINE をなぜ作るのか?

前回の記事から進みました

ZINEという冊子を制作すること選んだのはなぜか。
改めて考え直してみたい。

印刷物との出会い


私は本が好きで、紙に印刷されたモノ自体が好きで図書館や本屋さんに暇さえあればブラブラしにいくような子供だった。そんな子供の描いた絵が、一般流通する雑誌や新聞に掲載されたのを目にした時に得た感動は今も忘れがたい。印刷された自分の絵はどこか他人行儀で少し距離があり、多くの人の目に触れる状態にあって自分のものではなくなったのだ、というような感覚さえ想起させた。そして本(印刷物)がますます好きになった。

モノとしての魅力


本は、情報を載せるメディアであると同時に、モノとしての魅力がある。
今回このZINEを作るにあたり、私がこだわったところは紙の質感だ。明け方の光のような薄暗さと心の乾いた様子を描いた「未明」の世界観をそのまま手に取れるようにしたいという想いがあった。
そこでリソグラフによる印刷が擦れる効果や、薄くてチープな質感でほんのわずかにざらっとした紙を選んだ。紙をまとめているのはミシン糸。「未明」を生きる彼らの世界の外側はうす暗くても、心の中は白く明るいような明暗を糸の色からも出したかった。一番外側のトレーシングペーパーにはハンコを使い題字を押すことで1冊1冊に個性や偶然性を出した。そしてこの紙を一枚めくると、そこにはNFTの作品集へ直結する仕掛けがある。

印刷の喜び


このZINEは、私の絵からイメージを受けたお話を7名の作家に創作してもらい絵と共にまとめた画集である。彼らの創作したお話は、彼らの生み出した言葉という作品である。私のもう一つのこだわりは、彼らの紡いだ言葉(作品)をZINEという印刷物に載せて、別の誰かの手元へ運ぶこと。これは、アクセスすれば誰もが書き手であるこの時代において、呼吸で起こる風のような、ほんのささやかな行為かもしれないが私はあえてこの祈りにも似た手作業で作られる印刷物としての作品を誰かの元へ届ける行為がしたかった。それは、冒頭で語った「自分の作品が印刷物になって第三者に届けられる喜び」を共有したかったから、がその理由だ。

メディアパフォーマンス


また、NFT作品をフィジカルなZINEというメディアにして再発行するような今回のプロジェクト自体に関しては、「本はパフォーマンスかもしれない」と言った坂本龍一さんの考えに通じているような気がする。彼は次のように言っている

「アクセスしやすくて、どこからでも読めて、どこに飛ぶこともできるといった本の面白さを、デジタルメディアが出てきたことによって、より明確に捉えることができるようになったんですね。だから本というものを『メディアパフォーマンス』の対象として扱うことができると思ったし、今でもそう思っています」

https://www.tjapan.jp/entertainment/17201150?page=17

私の「未明」という作品は、もともとは紙に絵の具で描いた作品であり、これをデジタル化した作品をNFTとして発表。そしてNFTを通じて出会った人々の協力を得て、印刷物というメディアに変化させていくプロジェクトになった。この一連の行為全てをパフォーマンスとして捉えれば、この「未明」という作品がただの一枚絵ではなくメディアパフォーマンスというアート行為そのものになる。

さいごに


情報はあらゆる形態で手に入れることができるこの時代に、あえて紙で本という形態のモノを作る意味とはなんだろう。その答えは以上のような理由かな、とうっすらとした答えが出たように思う。
このプロジェクトを開始した当初は、未確定の要素も多く漠然とした中から手探りで進んでいたが、こうして歩みが進んで今一度自分の行為を顧みる良いきっかけとなった。「いつまでも明けぬ夜明けを待つ少年たち」を題材としているのもあって、いつまでもグレーの世界に生きている自分自身だが、こうして少しづつ明らかになっていくことに喜びを感じる。
制作に協力してくれたクリエイター、そしてNFTを通じて応援してくれたオーナーに敬意と感謝を。そして最後まで読んでくれたあなたに大きな感謝を。どうか想いが届きますように。


「未明」NFTコレクション・

https://knownorigin.io/collections/katappo/dawn

21番目の新作+ZINEのおまけつき
https://app.manifold.xyz/c/mimei021

ZINE販売ページ
https://enaga.theshop.jp/items/74006258

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