【ビジネスの裏側】「星のまち」に降る物流マネー

2019.6.18 10:00産経WEST 経済


大阪府民の森ほしだ園地など豊かな緑に恵まれる交野市。枚方市、交野市の地域は古くは交野ケ原と呼ばれ七夕伝説ゆかりの地とも伝わる



 京都との府境に近い大阪府交野市が、物流施設の開発ラッシュに沸こうとしている。ネット通販の普及に伴って、次々と物流大手が進出計画を打ち出し、異業種の日本生命保険も100億円超を投じた大型倉庫の建設を決めた。予定地は関西内陸部の大動脈となっている第二京阪道路のインターチェンジ(IC)に近く、京都、大阪という関西2大商圏への交通アクセスのよさが、投資を引き寄せている。

オフィスビルより、利回りよい物流施設

 “星のまち☆かたの”をキャッチフレーズに掲げ、豊かな自然と星空の景色に恵まれた交野市では近年、耕作放棄地などが増え、農地の活用が悩み。同市は、平成22年に京都、大阪を結ぶ第二京阪が開通、交野南IC付近は「物流拠点最適地のひとつ」として目されてきた。物流施設の相次ぐ建設が、雇用の創出につながるとみて期待をかけている。

 物流大手「CRE」が地上4階建て延べ床面積8万226平方メートルの物流施設の開発に着手したほか、大和ハウス工業や不動産大手も倉庫建設を計画。「関西は従来、湾岸部に物流施設が集積してきたが、京都という一大消費地に遠かったのが弱点だった。交野付近はその問題を解決する」。開発計画に携わる業界関係者はこう話す。

 令和5年には、交野南ICの北約10キロの京田辺ジャンクションで第二京阪と全線開通する新名神高速道路が接続予定で、ますます投資熱が高まりそうだ。

 日本生命は、3年の完成を目指して交野市に5階建て延べ床面積9万2千平方メートルの大型物流倉庫を建設する。同社は平成25年度から物流施設への投資を始めており、関西では松原市と東大阪市に続いて3例目の開発になる。

「ネット通販の発達もあり、物流需要はしばらく続くとみている。物流施設はオフィスビルより投資の利回りがよいのも特徴」と日本生命の佐藤和夫執行役員は話す。

 同社はこれまで長期に安定的な資産運用を行うために、オフィスビルや商業ビルなどの賃貸用不動産を多く保有してきたが、大型物流施設への投資も成長領域と位置づけ、積極投資を行う方針だ。

農地の転用が進む


経済産業省によると、30年の電子商取引の市場規模は17兆9845億円で、前年比8・96%増の成長を遂げた。ネット通販の好況を受けて物流量が増える一方、商品を保管、発送する物流施設の不足感は強まっている。

 不動産サービス大手「CBRE」の調査によると、近畿圏の31年1~3月期の「大型マルチテナント型物流施設」の空室率は9・1%と9四半期(2年3カ月)ぶりに10%を下回った。同社は少なくとも、半年先まで空室率は低下し続けるとしている。

 同社の高橋加寿子・シニアディレクターは「物流業界の人手不足も影響しており、配送距離の短縮や、人材確保を目的に、関西では内陸部の物流倉庫への需要は高まっている」と指摘している。

一方、交野市ではここ10年来、農業の後継者不足の問題から、農地を住宅や工場、倉庫などに転用できないか、地権者や市側の間で議論が行われてきた。近年は農地を管理できない地権者が少しずつ増え始め、周辺に駐車場や産業廃棄物置き場、耕作放棄地も目立ってきた。

 市街化調整区域には原則、土地にビルや住宅を建てることができず、農地以外の転用には府知事の許可が必要だ。そこで、地権者らは組合を作り、農地転用が可能な市街化区域に変更するため、都市区画整理に向けて検討を進めてきた経緯がある。

日本生命が投資する第二京阪道路に近接する星田北地区も、もともとは一帯が農地だった場所だが、市街化区域に変更されたエリアだ。

 同市の担当課では「長く土地活用に関する議論を重ねてきた。物流倉庫の建つ地域の近くでは宅地造成も進んでおり、倉庫の誘致は雇用創出にもつながるとみて期待している」という。





第二京阪道路、JR学研都市線周辺再開発、区画整理、都市計画一覧 写真、風景、YouTube



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