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複製魔女

満月の見下ろす高層ビル群の一角、高度二千フィートから地上を見下ろす者が一人。

ギリシャ彫刻のごとく引き締まった身体を包むガンメタルのボディスーツの上には「家内安全」「Ajji Majji la Tarajj」など神秘的な呪文が隙間なく書かれていた。だがそれ以上に目を引くのは体の2倍はあろう深紅のクーラーボックスだ。

ジョー・サクラギは対魔女特殊作戦忍群、通称「対魔忍」だった。

「ジョー、今回のターゲットはこの女だ。彼女は魔女の腎臓を宿してる。いつも通り臓器が最優先事項だ、生死は問わない。あと分かってると思うが…」

「近隣住民は巻き込むな、だろ?」

無線を切ると、ビルから一歩空中に足を踏み入れた。急速落下!常人なら死を覚悟するこの状況をジョーは恐れない。彼は驚くべき身体能力で姿勢制御をするとビルの壁面を駆け下りた。目標まで千フィート…五百フィート…女の姿が次第に鮮明になっていく。

「お前には悪いがその腎臓、拝借させてもらうぜ。」

(続く)

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