逆噴射小説大賞に備えてたこと、考えてたこと
逆噴射小説大賞2019の一次&二次選考の結果が発表された。
結果は『灼氷の狂気よ、我が正気を啜れ』と『平成八年生肉之年』、『Who Killed My Poppin'?』の三作品が通過した。まだ、最終結果は出ていないから油断はできない......でも嬉しい。去年の逆噴射は一作品のみの通過だったが、今年は2作品も多く通過できた。
思うに運が良かったのと、事前に心掛けてたのが結果に少しだけ寄与したのだろう。
今日は、逆噴射小説大賞の期間どんなことを考えてたのかを作品順に整理してこうと思う。これによって来年に備えつつ、ライナーノーツも書けちゃうって寸法だ。アッタマイー!
事前準備
まず逆噴射が始まる前に、前回の逆噴射の最終選考に残った作品と自作品を何本か読み直し、心掛けることを見つけた。
1.乾いた文体
2.一点アイデア突破型にしない
3.タイトルを練る
4.残酷描写を過度にいれない
5.他スリンガーの目を気にしない
6.自分がカッコイイと思ったものを書く
1から3は選考基準や事前アナウンスでやはり大事なのだと納得した。改めて見直すとこの4点は重視されてるのが分かる。
4は、自作品を振り返って気づいたこと。去年だと『ブラッディ・アロハ』がスキも多く、反応が多かったが、選考には漏れた。多分牛刀で人殺したり、残酷すぎた。残酷描写マシマシは自分は好きだが、人を選ぶモノになるのは気をつけたい。
5は個人的に胸に刻まないといけない。俺は自己顕示欲の獣であり、スキやピックアップをされると狂喜乱舞してしまう。
前回を振り返ると、ほかの参加者のスキを稼ぎたそうな作品を書いたりしていた。
愚か!ホント愚か!自己嫌悪で死にそう!!違うだろう、お前が狙うのはただ一人、逆噴射聡一郎だろう!!5作品しか出せない今回は、この初心に立ち返る必要があった。
そして6番目。去年自分が通過した一本も、足りないなりにカッコイイ要素を集めて作っていたので必要だ。
それに6番目は小説大賞を楽しむコツでもある。自分が見たい景色を具現化できた時の楽しさはお話を書く醍醐味だろう。
1〜6を実践するため、他スリンガーの作品はなるべく読まないことにした。俺は書き始めて日が浅い。そんな奴がめちゃくちゃ面白い他の作品を見たら、文体や自分の描きたいものが揺らぐのは目に見えていたので泣く泣く封じた。
もう一つに、5作品は最終日3日前くらいまで調整して投稿しようと心に決めていた。一度タグ付けしたら引っ込みがつかないルール上、最後まで悩むのが当たり前だ。
このあたりを踏まえて臨んだ。
期間中
10月8日、ついに火蓋が切って落とされた。
散々言われてるが、初日の瞬間最大パルプ速度はえげつなかった。
覚悟してたつもりだったが、Twitterでフォローしてる人がバンバン0時から投稿してちびった。「海鳴り」とか「柳生」とか魅力的なタイトルが次々流れる。えっ面白そう…。感想ツイートまで流れてくる……。一つ書けたし俺も出すか?いや、さすがに早すぎるでしょ。
-1日後-
出すかァ〜〜〜〜〜!!!!
1.『凶匣解体人クロヒメ』
大会2日目にして誓いを破った。もう無理だった。祭りの神輿は見つけたら担がずにはいられない。
クロヒメの構想は去年からあった。
YouTubeにはダークウェブ上で売られてる箱「ミステリーボックス」を開ける動画がある。
中からぐしょぐしょに濡れたジーンズとか謎の海外のおもちゃとかが出てきて、独特な不気味さに惹かれてよく視聴してた。
開封風景は毎度禍々しい。もしほんとに箱から呪われた品が出たら誰が対処するの?この疑問に、専用の霊能力者が対処するんだろうと俺は想像した。
その想像を膨らませて、各地のミステリーボックスから生まれる怪異を滅する業者、クロヒメを思いついた。
反省点は無駄に文字数を消費してること。エレベーターの擬音とかは800文字に必要ではない。
あと説明をしなさすぎた。説明過剰は面白くないが、無いと無いで読者が共感しづらくなる。「匣」と「マリアナウェブ」だけで世界観の匂わせは流石に上手く行ってない。
でもダークウェブの怪しさや都市伝説に似た雰囲気はパルプと相性が良さそうだ。
勢いで出してしまった。だがまだ4作ある。これは最後の日に
ヨイショォ〜〜〜!!
2.『灼氷の狂気よ、我が正気を啜れ』
もう誓いは捨てよう。うん。出したい時にビッと出すのがいいわ。
これはかなり難産だった。期間前に少し書き始めて方向性がブレまくっていたのをなんとか形にまとめた。雰囲気的にはタランティーノとか馳星周の『不夜城』のハードボイルドさを目指した。
タイトルも凝った。本当に面白いのか不安になり友人に見せたとき、タイトルに「灼氷」というキーワードを出してくれた。ハッキリ言って天才だ、ぜひ頂きたい。俺はそれを膨らまして今のタイトルにした。かなり気に入っている。
もう気にせずバンバン出してくか~~~と言ったが、逆噴射には投稿しなかったものもある。
番外『ゾン・ビル』
やばい地区、屠殺沢で出会う二人の話だ。
ここらあたりでギャグ枠を書きたくなっていた。
雰囲気は、平山夢明先生の『クレイジーハニー』とか『あむんぜん』のゴア・ギャグを目指した。今でも書き出しの爆発力は気に入ってる。
でも前回の反省を踏まえるとちょいとゴアが過ぎるので見送った。加えて、屠殺沢の説明に割きすぎたのもウーンとなった理由だ。
タイトルにとくにいみはない。
その間にも、Twitterにめちゃくちゃ面白そうなタイトルが並ぶ。まじでこの人達に勝てるのか?
それでウンウン唸ってたとき、思い出したのが夏の仮面作りだ。
俺は夏の自由工作で生肉の仮面を作った。オリジナルオブオリジナルの存在。こいつを使わない道はない。
3.『平成八年生肉之年』
お肉仮面を登場させる上で浮かんだのは、『怪人二十面相』だった。昭和を舞台に怪人が街をにぎわす小説。怪人物を引き立たせるにはピッタリだ。だから、屋上遊園地を出して台詞回しも少し古めにしようと思った。結果としてうまくお肉仮面を際立たせられたと思う。
タイトルは漢字のみで固い印象にして、群雄割拠のパルプの中で少しでも異物感を出す狙いがあった。
最初はアドバルーンに乗ってお肉仮面が逃げる展開を考えていた。なので逆噴射振り返り会で「アドバルーンが出そう」と言われたとき見抜かれてる......!となった。展開をひっくり返して良かった。他にも振り返り会ではお褒めの言葉を頂いて感謝しかない。ありがとうございます。
舞台を長野にしたのは都内の事件というより、のちのち県の珍事件としてアンビリバボーで取り上げられそうなスケールにしたかったからだ。
お肉仮面はかなりお気に入りになったので、ついでにインスタも開設した。のんびり更新するので、現実に侵食するパルプの波を見守っていてほしい。
(🥩)よろしく頼むよ!二次創作はいつでも募集中だ!
4.『最も高名で最も曖昧な熱帯魚』
妖しい老人と追い詰められた男の話。
朝起きた時、「発狂太夫と熱帯魚」という言葉が過ぎったのが始まりだ。結局太夫は出てないけど。話を組み立てる時、強い単語から出たとこ勝負で書き上げることがある。これはその気が強い。
雰囲気は平山夢明先生の『恐怖症召還』を意識している。どんだけ好きなんだお前は。読み味のパルプ度はこの人がベストなんだもの。仕方ない。
スキ数がかなり伸びて好評だったが、選考には残らなかった。思うに話の骨格がありきたりなんだろうな。一見普通の店が裏ではやばいモノを扱っている。パルプと聞いてこのタイプの話を想起する人は多かったんじゃないか。後は、引きの一文。グッと引き込むには足りなかったように思う。
この時期は四作も出して余裕が出てきたので、話題になってる作品はチマチマ見ていた。ホント堪え性ないなお前!!
5.『Who Killed My Poppin'?』
逆噴射の期間はよく息抜きにダンスバトルの動画を見ていた。
昔のめり込んでいた時期があり、それが再燃して好きなダンサーのことを書き連ねたりもした。
他ジャンルと結びつけたパルプは多く投稿されている。その中でポップダンスと組み合わせるのは、自分だけしかできないだろう。俺がオリジナリティの点で優位に立てるのはこれくらいだ。
読んでもらった感想で嬉しかったのは、「実在するダンサーの話かと思った」と言われたこと。登場する5th Elementsのダンサーネームは四台精霊から引用している。「エーテル」から「E.Therston」を思いついたのは我ながら偉いなぁと思う。モデルとなったダンスクルーはElectric Boogaloos。俺が愛してやまない最高峰のダンサーたちだ。
これを書く時、音楽が聞こえるようなパルプにしたかった。だから歌詞を挟んで工夫しつつ、動きの描写をいれるなどした。
Zapp、もといロジャートラウトマンの曲はポップダンスではよく流れる。ダンサーが蘇るとしたら絶対ロジャーのトークボックスしかない。
ダンサーたちが蘇って悪いやつをぶちのめす。最高にカッコイイので最終選考に残らずともこれが書けただけで優勝した気分だ。
おわりに
投稿が全て終わった今振り返るとタイトルを練ったり、文体を考えたり結構心掛けたことはできた。他スリンガーの作品を読むのを縛るのはきつかったけど、おかげで自分の書きたいものをはっきりさせながら書けた気がする。事前準備は大事だ。
今回は新しいパルプスリンガーも増えて、ピックアップしてくださったりスキをくれたりと新たな広がりが見えて嬉しかったなぁと思いました。来年はさらに参加者が増えそう。
後は最終選考を待つのみだが、最近入ったアマプラで映画でも見て引き出しを増やしていけたらな。
来年も頑張るぞッッ。
(おしまい)
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