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首笛男目撃談

すいません、お冷もらっていいですか?

すいません……ありがとうございます。
…なんというか、どこから話せばいいんだろうな。なかなか迷う。
早く話してほしいのは分かる。俺が呼んだんだからな。でも、コレを話したらどうも病院を勧められそうで……。
いや!いやいやいや!お前を信頼してないわけじゃない。席をたたないでくれ、そうじゃないんだけど…分かった。とにかく話そう。

さっき、首笛男に会った。

本当なんだ!聞いてくれ。
さっきまで友達とディスコードで話してて、夜も遅いだろ?腹減ったからなんか食おうと思って冷蔵庫開けたらなんもなくてさ。仕方なくコンビニに行ったんだ。
で、ホラ。たまにどうでもいいことが気になることあるだろ。靴紐が変に気になったり、襟が首にあたるのが嫌になったり……。
その時も俺にソレが襲ってきたんだ。今回は花だ。道端の花壇の花。
花壇の花なんてオジイ、オバアがテキトーに世話してるのもあってさ。結構、花壇が立派でも中身が死んでることってあるわけ。
で、俺も道中空っぽ花壇を見流しながら歩いてたんだ。そしたら、一つだけ明らかに変なのがあるの。
バラが咲いてんだ。しかも花びらがきっちり束になってホント、サマになってるやつ。
バラ変じゃなくね?って思うじゃん?
バラってさ、虫にすぐやられるし肥料の調整も難しくて育てんの大変なんだ。花は詳しくないんだけど、母親が昔育ててたのもあって唯一バラだけ知ってたの。
それも変じゃん?なんでいっつも気づかない花がよりによって自分の知ってる種類なんだ〜って。
でも、そん時はソシャゲの周回で忙しかったからそんなことまで頭回ってなかったんだけど。今思うと、誘い水だったのかもしらんな。
で、「バラじゃん」と思って花壇のある家をなんとなく見上げたの。案の定、電気はついてなかった。その家、夜目が慣れるとわりと豪華な家で。お前も見た?
ベランダがついた教会って感じのオシャレな家だった。「俺もこんな家住みて〜」ってつい出ちゃった。
そしたら、急に電気がフッて点いて、人影が見えたの。
窓もいつの間にか開いてて。俺はヤバいと思ったけど見てるしかなかった。
今度は、笛の音がするんだ。音の出所なんて一つしかない。俺の見てるその影。でも、笛なんて持ってない。
聞き間違えとかじゃないんだって!リコーダーやオカリナとも違うもっと軽い音で。そう!口笛に似てる。生き物の呼吸に近い音なんだけどもっと深いところから出てんだ。聞いたことない音だったよ。
だからだろうな。俺はすぐに思い出したよ。小学生の時見せたろ?首に穴が6つ空いてるやつ。俺が見せたキャラクター、首笛男。あいつに違いないってね。
だから、なりふり構わず全力疾走。周回のことなんてモチロン忘れて。なんでもいい、とにかく、とにかく逃げないとって。近くのファミレスに滑り込んだの。
だって、ホントにあいつが首笛音だとしたらさ。俺がつけた設定通りのことを俺がされるわけだ。それが怖くて怖くて……。
夜中なのに呼んでホントごめん。お前、今住んでるとこも近いからつい。いや、マジでごめん。
なんか飲むか。
すみません!誰かいませんか!
すいませーん!
あの、注文お願いしたいんですけど。

ピンポーン

ピー♪ピー♪ピーポポピー♪
頭の大きい乳母車♪
いつぞやのお迎え ホイホ ホイホ♪
なき子は やまぬ♪
ペインシュルトの峰越えど♪
ハンミュの花束 こさえても♪
葦の人魚に 連れられる 連れられる♪
手放しゃ ホイホ ホイホ♪
呼べば ホイホホ ホイホホ♪
首穴今日も 吸い吸い吸い♪

ホイホ ホイホ♪

ホイホホ ホイホ♪
首穴呪わば 104号室♪
ホイホホ ホイホ♪ ホイホホ ホイホ♪
首穴啜れば 一等賞♪

ホイホホ ホイホ♪ ホイホホ ホイホ♪
ホイホホ ホイホ♪ ホイホホ ホイホ♪ ホイホホ ホイホ♪ ホイホホ ホイホ♪ ホイホホ ホイホ♪ ホイホホ ホイホ……………。
(おわり)

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