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偽銘(偽物)が嫌な理由

日本刀には、有名な刀工の銘を茎に刻んだ偽物が沢山あり、これを偽銘といいます。
例えば虎徹は100振あったら本物は1振と言われるほどに偽物が多いそうです。そしてとても巧妙な偽物が多いそう。
偽物を見極める際には茎の銘や鑢目以外にも、刀身の姿や出来を見る事が大切らしく、どんなに銘が良くても作風があまりに違うのであれば疑わないといけないとのこと。
そして出来の良い偽物は本物に紛れる程で、銘も良ければ出来も良く刀剣商の方ですら見破るのが難しいらしいです。
因みに以下はどちらかが偽銘か分かりますか?
恐らく殆どの人は分からないのではないでしょうか。
私も当然分かりません。

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(「新日本刀の鑑定入門~刃文と銘と真偽~」より)

本物は①でした。
因みに偽銘の刀はお店を構えている刀剣店で売られる事は普通はありません。
あったとしても「~と銘がある」「未鑑定品」などとそれとなく匂わせるような記載がされています。
そしてこれらの値段は得てして本物に比べて遥かに安いです。
例えば虎徹の偽物ならヤフオクなどで100万円以内で買えるかもしれません。(本物は1500万円以上する)

偽物だけど安くて出来の良い物が手に入る、そんな事もあり偽銘でも作風が気に入ったなら安いから欲しいという人はいます。
(有名な刀工の銘も入っているので普段刀を見ない人であれば容易に信じるでしょうし、自慢したいだけであれば偽銘で充分かもしれません)

因みに古い刀で出来が良い刀などは偽銘のまま安く売るのではなく、大抵は銘を消して無銘にする事で作者を分からなくして有名刀工の鑑定が付くのを狙うという手法が取られる事が多いです。
有名刀工に極まるかは鑑定次第ですが、無銘にすれば作者不明となり少なくとも偽物ではなくなります。
そして無事有名刀工の鑑定が付けば高く売れることになります。
そういう事は歴史の中でも多くされて来たようです。

話は戻り偽銘はどうかと聞かれれば私は間違いなく「嫌い」と答えます。
どんなに出来が良くても偽銘は嫌です。
なのでお金を出して買う以上は値が高くてもしっかりした正真作(鑑定書が付いてる&信頼出来る刀剣商の人が間違いないと言っている作)を買いたいです。

①偽銘の何が嫌か?

刀を戦で使う道具としてだけにフォーカスして見れば、折れやすい可能性があるなどは別として偽銘の刀でも戦えはするでしょう。
なので切るという側面だけ見れば別に偽銘でも良いと思うですが、嫌なのは刀から感じる精神的な部分です。

②精神面で見た刀の用途

日本刀が槍や薙刀に比べても圧倒的に現存しているのはあまり実践では使われなかった事を示しているのではないでしょうか。
刀屋さんなどでよく聞くのは戦での死因の殆どが、銃や弓、槍や投石などによるもので、刀が死因となるのはほんの数%だそうです。

では刀はなぜ携え、そして何に使っていたのか?
実際の所は分かりませんが、私は2つあると思っていて、1つが本当にいざと言う時の護身用として、2つ目が精神的な支え(精神統一の道具)としてです。
刀を見る事で何かしらの決意を固めていたかもしれません。

刀は政治的な道具としても沢山利用されてきた歴史もありますが、本来は刀工が使う人の事を考え(折れず曲がらず良く切れるを追求する)、刀工自身も打つ前は身体を清め邪心を祓い製作してきたといいます。
そこに刀を持つ人の崇高な精神性が絡まることで極限の鋭さや緊張感の中に日本刀の本当の美しさが生まれるのではないか、と考えています。

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③偽銘が感じさせるもの

しかし偽銘は人を騙して儲けてやろうという魂胆が見え隠れします。
有名な刀工の作にそっくりなものを意図的に作りこれは一流刀工が作ったと言って売るわけですから。
ただ偽物を作る人の気持ちも分からなくもないです。
刀匠としての生活が苦しく偽物作りをしないと生活費が稼げない人もいた事でしょう。
でも少なからずお金を払って買うのであればどんなに値段が安くても買いたくありません。

刀を買うとそれこそ毎日のようにその刀を見る事になりますが、その度に人間のこういった腹黒い一面を刀から感じたく無いのです。
人間性が引きづられそうで。

なので私は偽銘の刀が嫌いです。


④終わりに

何を持って偽銘と判断するかは非常に難しい問題だと思います。
本当は成分分析などからAI鑑定など出来れば正確性も増しそうな気もしますが、刀の鑑定は未だに人が行っています。
その為見る人によって意見は変わるでしょうし、100%正確な鑑定というのは現時点では出来ないはずです。
なので私には何かを偽物と決めつけて銘を無くすなどの行為は恐れ多くて出来ません。
あらかじめ無銘で鑑定で極まっている刀か、在銘で正真の作を買って余計な事を考える事なくその刀に集中して鑑賞したいです。


偽銘についてもっと覗いてみたい方は以下もどうぞ。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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