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製作している刀展示ケース、どのような環境下で、どのように使用しているか?

現在私は刀の展示ケースを製作していますが、購入頂いた方や検討中の方から、どのような環境下で展示しているのか知りたいというお問い合わせを頂きますので、今回はそれについて詳しく回答します。

①展示ケースに使用している調湿剤について

製作している刀展示ケースには竹活性炭を使った調湿剤を入れています。
調湿材は展示ケース購入時に同梱しています。
(moku以外。mokuは桧を使っており桧自体が調湿効果がある為)
メーカーによると2〜3ヶ月に一度日干しすることで効果が戻るので半永久的に使えるそうです。
また化学物質により除湿するわけではないので刀にも影響はありません。
しかし、調湿剤はあくまでサポートであり、また展示ケースを密閉しているわけではないので、自動で湿度を一定に保ってくれるものではありません。
それを踏まえて、次のように刀展示ケースを設置、使用しています。

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②私はこのように刀展示ケースを展示、使用している

先に私の住んでいる場所の環境について書きます。
例えば新築の家と築50年の家を並べて同列に話をする事は出来ませんし、沖縄と北海道で同列に話をする事も出来ない為です。

■展示環境について

・神奈川県神奈川区(海近くではない)の築10年ほどのマンション

最近のマンションなどは断熱材なども進化していると聞きますし、築年数を記載させて頂きました。
また、潮風が当たると鉄は直ぐ錆びてしまうそうです。
その為「海近くではない」と書かせて頂きました。
海近くの家にお住いの方で展示ケースを飾る場合は、まず部屋自体に潮風が入らないようにしてください
先にも書きましたが、ケースは密閉されているわけではないので潮風により錆びる可能性があります。

・窓から1m以上は離して展示ケースを設置している

次に部屋の中でも窓は寒暖差で一番結露しやすい場所です。
インナーサッシなど2重窓になっている所はまだ良いですが、1枚窓の場合は結露する可能性が高いです。
その為、念のため窓から1m位は離して設置しています。
但し離す事が必ず必要か、この1mという数字が正しいのか、はまだ分かりません。
あくまで念のために離しているという感じですが、この環境下ではまだ錆びたりなどはしていません。(因みにこの位置の卓上刀箱に飾っているのは現代刀)

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■展示刀について

現代刀金田國真作2振(日刀保玉鋼使用)、堀川国広(慶長新刀)、相州行光(鎌倉古刀)、綾小路(鎌倉古刀)です。
聞いた話ですが洋鉄を混ぜて使った刀は和鉄のみの刀よりも錆びやすいと聞きます。
その為、展示している刀によっては同じ住環境でも錆びたりなどが起こる可能性はゼロではない為、私の家で飾っている刀がどのようなものかを書かせて頂きました。
展示刀については以下からそれぞの刀の詳細が見れるのでよろしければご覧ください。
(記事一番下まで行くと次の愛刀紹介に飛べます)


■展示方法について

温湿度計をいれて部屋の環境を必要に応じて整える

まず展示ケース内に温湿度計を入れます。
市販のもの何でも構いませんのでこれは是非とも入れて下さい。

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そして大体50~55%位の間に納まるように、冬場は加湿したり梅雨時は除湿したりなど部屋の環境を整えています。
こう書くとかなり厳密に調整しているような印象を持たれるかもしれませんが、全然そんなことはなく結構ざっくりなので実際は40~65%位の範囲でブレがあります。
拵えを買う前までは、「湿度60%以下」だけを目安にしていましたので、例えば部屋の湿度が40%以下になっていても気にしていなかったのですが、拵えを買ってからは加湿するようになりました。

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毎回加湿するのが難しい方は、刀の傍にコップに水を入れて置いておくのも効果的なようです。
因みに飾る物が刀身だけの頃は湿度は低い方が望ましいので、梅雨時で部屋の湿度が70%超えるような時だけ除湿していました。


刀身に油は塗っていない

良く聞かれますが、刀身に油は塗っていません。
(現代刀のみ(まだ茎が錆びておらずピカピカなので)、ケースに入れる際に茎を持つので、指紋をふき取り刀油をティッシュに染み込ませて軽く拭いています。)

聞いた話では美術館でも刀身には油を塗らないで展示される事が一般的なようです。
但し美術館などでは湿度が展示物毎に厳しく管理され(刀剣であれば50~55%)、更に展示期間が2ヵ月など明確に決まっているので、その後は油を塗って鞘に保管されているなどの違いはあります。

■刀を展示ケースから取り出す頻度

刀によりけりなのですが、頻繁に出すものはそれこそ1~2日に一度は出して鑑賞を楽しんでいます。
いくら展示ケースでいつでも見れるといってもやはり刀を手に持って鑑賞する時間というのは何にも代えがたい時間です。
あまり出さない刀は現代刀の短刀になり、こちらは1~2ヶ月に1回位出している感じでしょうか。
その期間はずっと卓上短刀箱に入れています。
因みに出したからといって油を塗ったりはしません。
柔らかい布で1~2回拭ってケースに戻しています。
そんな感じですが、私の今回紹介した環境、方法においてはこの2年間一度も錆びたりはしてません。


③終わりに

いわゆる大手が様々な試験をするようにして様々なデータを取っているわけではないので、あくまで私の住環境で、展示刀で、という凄く狭い範囲での一結果しか示せないのですが、一つのモデルパターンとして参考になれば幸いです。
展示ケースに入れる事で少なくとも毎日刀を見ることは出来るので、仮に錆の初期傾向(白っぽくなるなど)が出たとしても鞘に入れて保管しているよりは気づきやすいのかなとは思います。
是非ケースに入れたら終わりではなく、少なくとも1~2週間に一回くらいは手に取って鑑賞を楽しんでもらえれば嬉しいです。

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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