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刀が武器であるという認識について

日本刀の良さを広める、と一言に言っても沢山の方法があるように感じる。
愛刀の写真などを撮影しながらSNSで発信するという事であれば刀に触るのは自分自身だけであり気楽で良いのであるが、実際に刀を初心者かつ見知らぬ人に持ってもらうとなると一気にハードルが上がる。

これは刀が人を殺傷出来る武器である事による為であるが、例えば万が一初心者講座や刀鑑賞会の場に人を斬ってみたいと考えるサイコパスが混じるだけで大事件に発展する可能性があるわけで、主催者や責任者はこの最悪のリスクを如何に抑えるか、危険人物を参加させないかに注力しなければならない。
勿論そのような可能性は限りなくゼロに近いとは思うし、今までの長い歴史の中でも一度も起こった事はない。
起こったことがないのは、先人が常に最悪のリスクに備え行動してきた結果であるようにも思う。
それらに加えて鑑賞する刀も借用してくるものが多くなるので、刀に疵が付くリスク(参加者が鑑賞中にぶつけたり、落下させてしまったり)なども主催者や責任者としては極力抑えていかなければならない。

そんな武器であるからこそ、例えば支部での初心者講座やマナー講座が念入りに行われたり、マナー講座に遅刻してくるような人は刀を持つ事を禁止、というように厳しく行われる事も個人的には賛成。
賛成というか最悪命にかかわる事であるので当たり前の事に感じている。(大げさに取られるかもしれないが。)

和気あいあいと楽しく鑑賞する会というのは私も理想でありそこを目指したいと常々思うが、それは刀が武器であるという前提を持った人のみが集う場だからこそ実現するのだとも思うし、その認識を欠いた人が多く参加する場はやはり後々何かしらの事故に繋がる気がして怖い。

とはいえ99%の人は本物の刀を前にすれば背筋が伸びて慎重に刀を持つし、時には手汗をかいたり手を震わせながら鑑賞する。
これは私自身も勿論経験した事であるし、今まで刀屋さん見学会などを開催してきて参加者の方を見てきてもそう思う。
そうした状態は刀を武器として認識しているからこそであり、最初から「ふーん。」と刀を初めて持つにも関わらずクルクルクルクル慣れたような手つきで持つ人より遥かに健全で良い事に感じる。
しかし先にも書いたように問題は99%の正常な人ではなく、1%のヤバい人をどう防ぐか、なのである。


話は変わるが、少し前にある人が展示会で刀を刀掛けから取ろうと手を伸ばした際に服が別の刀に引っ掛かり落下、太ももに刺さるという事故を目の前で見てしまった。僅か10㎝、15㎝程の高さから落下した刀を咄嗟に足で受け止めようとしていただけに見えたが、たったそれだけの事でかなり深く切ってしまっていたようでズボンに血が滲みさらに地面にボタボタと…。
それ以降、刀の殺傷力が目に焼き付いてしまいどうも刀の怖さを以前にも増して感じてしまうようになってしまった。
自分が怪我をしたわけではないのだが、刀を手に持ち鑑賞する度にその時の光景が脳裏をよぎるようになってしまった。
それだけ殺傷力のある刀で体を斬られたとしたらそりゃ生きる事は出来ないなと直感的に感じてしまう。


所属している横浜支部も支部長が数年前に病で亡くなった事で人数も減ってしまい、新しい体制に切り替わりつつあるところでもある。
支部のページなどもこれから新しくなっていく。
先にも書いたが私自身も和気あいあいと刀鑑賞出来るような場になってほしいと思うが、安全にそうした場にする為には刀が武器であるという当たり前といえば当たり前のことを、どう心の底から認識してもらうのか、というのはこの先長い目で見て大事になってくるような、そんな気がした次第。

かくいう私も刀は武器と頭では分かっているつもりではいましたが、その刀が足に刺さる事故現場を目の前で見て以降刀を以前より怖く感じてしまっているあたり、やはり認識が甘かったのかもしれません。


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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。


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