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刀を海外へ送る上での意外な問題点

日本刀が海外へ流れる、これを聞いて漠然と嫌だなぁと感じる人はいるかもしれません。
実は海外へ刀を発送する上で起こりうる問題があります。
発送時の破損や盗難リスクも勿論ありますが、それではなくもっと別の事です。
今回はそれについて書こうと思います。

①海外へ刀を送る方法

海外の方が日本に旅行に来て刀剣店で刀を購入、海外へ持ち出したい場合を考えてみます。
刀を買ったらまず、「輸出許可」を取る必要があります。
申請してから輸出許可が下りるまで大体20日~1か月程度かかるそうです。

■輸出許可の取り方
①文化庁文化財部美術学芸課に連絡をして申請用紙を貰う
②申請用紙と刀剣写真4枚(刀身全体写真の表裏、茎の表裏)、銃砲刀剣類登録証を合わせて文化庁文化財部美術学芸課に提出
③輸出禁止品(後述)に該当しないと判断された場合は「輸出許可証」を発行してくれる

(※刀をそもそも送れない国もあります。その後の発送などを考えると正直私達素人にはハードルが高いので、もし送りたい場合は刀剣店などプロにお任せしましょう。海外に送る際の破損や盗難リスクなどもあるので)


②輸出禁止品とは

刀には海外へ持ち出せない物があります。
それは「国指定」のもの。
国指定とは、国宝、重要文化財、重要美術品を指します。
これらに指定されている刀は海外への持ち出しが出来ません。
つまり三日月宗近などが海外へ出る事はありません。
(但し、重要美術品などは指定取り消し申請をすれば持ちだす事が出来てしまいます。実際に申請を出して取り消しされている重美の刀もあります)

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③海外へ刀を送ると発生しうる問題

ここが個人的に盲点に感じた部分です。
と言うのも私も今日刀屋さんから聞いて初めて知りました。

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(画像転載元:https://iidakoendo.com/faq/faq01/)

まず、申請時に銃砲刀剣類登録証(上記)も合わせて提出するのですが、こちらはもう返ってきません。
つまり文化庁に登録証を返還する事になります。
もし一度海外へ送った刀を日本に戻す場合は、再度登録証を取る必要があります。
その時、以前の登録番号を引き継ぐことがどうやら出来ないらしく、新規の登録番号になります。

これの何が問題か?
日本刀には日本美術刀剣保存協会(日刀保)の鑑定書が付いている場合が多いです。
保存刀剣、特別保存刀剣、重要刀剣、特別重要刀剣という指定がそれです。

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(画像転載元:https://kougetsudo.info/kanteisho/)

上記が付いているとその刀は偽物ではなく本物と見なされる為、その鑑定書が言わばその刀の価値の証明になっていると言っても過言ではありません。
そしてこの鑑定書は刀の登録証番号とリンクされています
もうお気づきになったとは思いますが、登録証の番号が変わると鑑定書との繋がりがなくなり、その刀と鑑定書の繋がりを証明出来なくなってしまうのです。
それを防ぐ為に以前の登録証のコピーを持っておくなど、大切にセットで保管されていれば良いのですが、コピーを紛失してしまうと大変です。
これが海外に刀を送る事で起こりうる問題(盲点?)です。


④終わりに

海外へ刀が流れる事について、私は発送時の破損や盗難リスク、後は海外の所有者の方が亡くなった場合にその刀がどこに行ったのか補足しづらくなるという問題点は以前から感じていましたが、今回の登録証と鑑定書のリンク問題は盲点でした。
海外で刀剣の委託販売がしづらいのはこういった理由もあるのですね。

因みに海外へ刀が流れる事について。
私はなるべくなら日本のものは日本に残って欲しいとは思いますが、日本にあっても誰にも所持されない位なら海外の熱心な刀剣好きな方の手に渡るのはそれはそれで良い気がします。
日本には海外の方に比べてポンと買える人は少ないですし流れるのもしょうがないと思っています。

・刀を海外に流すなんて悲しい、嫌だ!という方へ

国指定品でない刀を日本に留める確実な方法は自分で買う以外にありません。
刀は安い物であれば10万円位から買えます。
決して手が届かない額ではありません。
手入れが難しそうで手が出せない、自分がその刀を傷つけてしまいそうで怖いという方も良く見かけますが、心配し過ぎに思います。
手入れは誰でも簡単に出来ます。
そもそも10万円位の刀であれば傷はもとから沢山付いているので、疵をつけてしまうかも!と神経質になる必要はありません。
そしてそういった刀は刀屋さんなどでも研がずに放置されている(研ぐと利益が出ない為)事もあるので、それを綺麗に研いであげて大切にしていくというのも素晴らしい考え方に思います。
錆びて放置されていた刀が貴方が所持した事によって綺麗になる、刀にとってはそちらの方が幸せな気がしますよね。
刀にまつわる多くの誤解が無くなって日本人が刀を多く買う時代がまた来ると嬉しいなぁ…。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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