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腰反りと輪反りの違い

刀の姿で個人的に最も判断が難しく出来なかったのが「輪反り(中反り、京反り、鳥居反り)」と言われる反りです。
来国行や来国光などの来物(京物)に多いことから京反りとも呼ばれます。
呼び名が多いのでこの記事では輪反りと表現を統一します。
腰反りは腰(茎に近い所)から反りが始まっているのに対して、輪反りは刀身の真ん中あたりで反ります。
だから中反りとも言われるんですね。

と文章で書くとなるほどねぇ!と分かった気になれるのですが、実際の刀を見た時にこれは何反り?と聞かれると判断が難しい。
例えばよく言われるように地面に対して区が平行になるように茎を立てて姿を見比べるとどう見えるか?

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うーん…どっちも同じ!
(因みに左が腰反り、右が輪反りです)

という事で私自身もこの腰反りと輪反りにはえらく混乱させられました。
最近は切っ先あたりの反りを見たり、切っ先の大きさや身幅などにも目が行くようになってきたのでまだ判断が以前よりは少し付くようになってきた気がしますが、まだまだ間違えます。
という事でこの記事を読んだ人がせめて写真を見て腰反りか輪反りかが8割くらい判断できるようになれれば嬉しいなと思い書きました。


①そもそも反りとはどこの事?

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(画像転載元:https://www.touken-world.jp/tips/53884/)

例えば「反り2㎝」と書かれている場合は、上の写真の矢印部分の距離が2㎝という事です。
(棟区から切っ先を直線で結んで一番距離が離れている所を計測)


②腰反りから輪反り姿へ変化した時代背景

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輪反りは来国行などの鎌倉初期~中期にかけて出てきた反りですが、それより前の平安後期~鎌倉初期の太刀(三条や五条、安綱など)は腰反り姿が主流でした。
腰反り姿の太刀は得てして重ね(厚み)が薄く切っ先も小さいなど(研ぎ減りが影響している事もあるでしょうが)、俗にいう優美な姿をしています。

それが重ねも厚くなり切っ先も大きくなる輪反り姿になったのは、蒙古襲来という今までに類を見ない事態が起こった事で、それに対応できるような強さや頑丈さがより刀に求められるようになったことが考えられているようです。


③腰反りと輪反りの比較

まずは先ほどの腰反りと輪反りを並べた写真です。
左が腰反り、右が輪反りです。

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これだと分かりにくいので、少し角度を変えます。

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では次に反り位置を見るために棟区と切っ先を直線で結んでみましょう。

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反りは直線から一番距離のあるところで見るんでしたよね。

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…あれどちらも真ん中位ですね。
という事で今度は茎先と切っ先を直線で結んで距離の一番離れたところを比較してみます。

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腰反りの方は下の方に「↔(反りのピーク)」が来ているのに対して、輪反りは丁度刀身の真ん中くらいにあります。
こうすると「輪反りは真ん中あたりで反っている」という説明がなんとなく分かるのではないでしょうか。
この見方を推奨するわけでは決してないのですが、個人的にはこの見方がしっくりきます。
但しこれは「うぶ姿」に限られます。
すりあげられていると茎先の位置が狂う為です。
なので最後はやはり物を複数見て頭に反り具合を記憶するしかないのかもしれません。


④クイズ これは腰反り?輪反り?

・第1問

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(画像転載元:https://kougetsudo.info/doujigiri-yasutsuna/)


腰反りです。
童子切安綱の太刀です。


・第2問

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(画像転載元:https://www.touken.or.jp/museum/about/collection.html?itemid=18&dispmid=650)


輪反りとされています。
明石国行の太刀です。


・第3問

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(画像転載元:https://www.touken-sato.com/event/katana/2014/04/K-rai_kunimitsu-02.html)


輪反りです。
来国光の太刀(大摺り上げ)です。
大摺り上げなので、すり上げられる前の形を頭の中で想像する必要があります。



⑤終わりに

腰反りか輪反りかを判断するのは個人的には結構難しいと思うのですが如何でしょうか?
では最後にもっと混乱するお話を…
それが室町期の姿です。
一番右に追加してみました。(盛光の太刀)

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この時代は先反りと言って刀身上半に反りのピークがきます。
腰反りの刀は切っ先らへんがまっすぐ伸びているのに対して、室町期の先反りの刀は切っ先あたりに反りが加わっているように見えるのが鑑定の見所とされています。

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…どうでしょう?
分かりますか?
腰反り姿(一番左)との区別は切っ先当たりの反りを見ればまだ判断つくかもしれません。

では輪反り(真ん中)と先反り(一番右)の姿は?
この2つを重ねてみました。

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確かに先の方で反りが最大になっていると言えばそうも見えます。
が、、…私には肉眼でこの差を100%当てる事は出来ません。

参考までに腰反りと先反りも重ねてみます。
こう見てみると、先反りの刀は腰反りでない事は分かりやすいですね。

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でもこれを手に持って判断するのはまたとても難しい。
奥深い世界ですね。。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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