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無銘刀の伝来調査は頗る難しい

無銘の刀は大摺上げされている分、在銘に比べて値段も半分位と安い。
刃文や地鉄だけ楽しめれば銘など無くても良いという人であれば「無銘刀」は頗るお得な刀である事は間違いない。

さて無銘にも名品は沢山あり、大名家伝来品などもあったりする。
初めから伝来品と分かって買う場合は悩む問題ではないが、伝来を調査したい場合は在銘品に比べて一気に難易度が上がるという問題がある。
手掛かりの一つである「押形」を調べようにも掲載品の殆どは在銘の品であり、中には金象嵌や朱銘などの物も一部あるが全くの無銘品の掲載はほぼ無い。

となると、次は以下の書籍などを頼るわけでありますが。。

見てみても残念ながら以下の様に、「刃長」と「摺上げ無銘」程度しか書かれていないものが殆ど。中には刀身彫の特徴や目釘孔の数なども描かれている場合があるが、刃長と目釘孔の数が合ったからといってその刀とは断定できず、あくまでも「かもしれない」の域を出ない。
せめて折紙が付帯していれば伝来調査も信憑性が増すとは思うが、折紙の付いている無銘刀の方が頗る珍しいし、何より折紙も本物か分からないという点もある。

という事でここでも確証が得られないので、次は大名家の売立目録などを見ていくわけです。ここに刀身の写真が掲載されていて合致すれば「おめでとう」なのですが、まぁ稀でしょう。

その他としては登録証の登録地と番号というのもある程度は手掛かりになるかもしれない。例えば池田家伝来の刀が鳥取県で昭和26年3月など早い登録になっていれば可能性はあるかもしれません。それでも当然伝来を裏付けるものではない。
(登録証の番号で大名登録などと呼ばれるものがありますが、それについては以下の一江左かさねさんの記事を読まれると分かり易いかと思います)


他にも白鞘に○○家伝来と書かれていて如何にも凄そうな見た目のものもありますが、まぁこちらは当てにしない方が良いかと。
という事でこうして見て行くと伝来調査が頗る難しく、どれも決め手に欠ける事が分かります。

とはいえ重要刀剣や特別重要刀剣に指定されている物であれば、指定書内に文言で○○家伝来と記載されているものがあり、そうした物であれば、審査時に伝来を裏付ける資料が共に提出されたと思われ、まず伝来品で間違いない。
こうした物は何か伝来を裏付ける資料があるのは間違いないはずで、そういう意味では伝来調査の必要は無いのかもしれませんが。

という事で無銘品の伝来は「かもしれない」と頭の中で妄想する位が楽しいのかもしれません。大名家ではなくとも必ずどこかの家に伝来してきた刀だから今に残っているわけですので…。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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