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常と違う工夫の凝らされた日本刀の茎

日本刀の茎には通常作者の銘や製作年紀が刻まれますが、そこには稀に面白い試みをしている刀工も。
今回は今まで見てきた資料や作品の中で個性を感じたものを紹介します。

刀の茎には通常、作者銘や年紀、裁断銘のみが刻まれます


・虎徹

虎徹の刀や脇差、短刀の中で恐らく現状はこの1振りのみ(小刀にはある)と思われるのですが、周りを彫り文字が浮き出るように彫られた銘のものがあります。
他の刀工を見てもこのような作は見た事がなく、非常に個性的で面白い試みに感じます。

「第11回特別重要刀剣図譜」より


・水心子正秀

こちらは茎にスタンプを押したような刻印があります。
偽物対策の1つでしょうか。
こうした物を用いたのは恐らく水心子が初めてだと思うのですが、他にご存じの方いましたら是非コメントで教えてください。
因みに現代刀匠では無鑑査の河内國平さんもこのような刻印を用いられています。

(画像出典:刀剣ワールド

・作者不明

これはつい最近見つけた物ですがこんなものも。
なんと茎に絵が彫られています。三日月は金象嵌。
嫁入り道中の絵でしょうか。
茎の写真しかないので推測でしかないですが大摺り上げっぽく見えます。後世にこの刀を送る際に彫り込まれたのでしょうか。
いずれにしてもここまで振りきった作は他に見た事がなく驚くと共に、今までの茎の概念を払拭してくれる非常に良い作に感じました。

「目の眼2008年8月号」より

またXで非常に洒落た考察をしてくださった方がいたので載せておきます。


・現代刀匠 河内國平さん

そして現代刀匠さんにも1人洒落た事をされる方がいらっしゃいます。
それが無鑑査刀匠の河内國平さん。
なんと梅の花を茎尻に彫り、「春を待つ」と入れてあります。
こうした作者の気持ちがちょっと伝わってくる茎もほっこりして良いですね。
例えば長光の銘の上にこのように書かれていて「春を待つ長光」とあったら少しほっこりしますよね。


・終わりに

江戸時代には罪人の死体を重ねてどの位切れたかを茎に刻んだ裁断銘なども流行り今もそうした刀が多く残っていますが、あれは戦の無くなった平和時代でも切れる刀を持ちたいという武士の気概を上手く利用して虎徹や山田浅右衛門などがタッグを組み刀の価値を高めるようなブランディングの一種だったと個人的には認識しています。
そうした時代があったように、実用を離れて茎が見える状態で展示される事が多くなった現代においては茎に絵などを施すのもまた平和な今の時代らしく一つの時代を象徴する面白い試みになり得たりするのかもしれませんね。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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