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刀の良さを受け止める器が出来ているか?

以前刀剣店の店主から「なぜ初心者ほど現代刀、新々刀、新刀を好むんだと思う?」と聞かれて、「健全で刃もはっきり見えるからですか?」と聞いた事があります。
その回答は「刀の良さを受け止める器が出来ているかどうかの違い」という深いものでした。
その話が面白いなと感じたので紹介します。

①初めての人は持った時にがっしりして銘の入った物を好む傾向がある、らしい

刀を初めて買う時に私もそうだったのですが、疵がとにかく気になりました。頭では古いものなんだから疵は入っていて当たり前、という事は分かるんです。
分かるんですが出来れば入っていない物が欲しい。
作者もはっきりしている物が良い。
当然偽銘は気持ち的に嫌。
偽銘は嫌なのでネットオークションは避け、刀剣店で探しました。
お店の刀を綺麗だなぁといくつか見てるうちにいつの間にか疵が目にとまるようになり、気が付けば疵ばかり探してしまう。
その刀の良い所よりも欠点に目がいってしまう。
そして疵の少ない物を買おうとすると必然的に新刀以降の刀、とりわけ新々刀以降になります。

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②刀の良さを受け止めるとはどういうことか

これは言い換えれば、疵などの欠点ではなくその刀の良い所(例えばここの刃文が好きとか、地景が好き、姿が好きなど)をどれだけ見つけて自分の中で消化出来るかという事。
その刀の欠点を気持ち的にカバーして受け止めるだけの器が自分の中に出来ているか、という事らしいです。
古刀で健全な物は本当に少ないので、必然的にその器が出来ていない状態で古刀を買う事はなかなか難しく、それが初めての人が古刀を買わない理由なようです。


③段々と古刀好きになっていく人は多い?

刀屋さん曰く、現代刀、新々刀、新刀からスタートした場合、大体10年程すると古刀へ移行する人が多いようです。
古刀は疵がとかく多いのですが、それ以上に刃の働きや地鉄、茎などに時代を感じる良さがあるのも事実です。
毎日刀を見る中でどちらが飽きづらいか?と聞かれれば、賛否両論あると思いますが私は全体的に古刀の方が飽きづらいと思う。
それは地と刃の変化が多く、見る所が多いのが理由です。
以下がその比較です。

↓新刀

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↓古刀

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全体的にという表現したのは、いつの時代も名工と言われる方の作は飽きづらい物なので。
恐らく最初のうちはぱっと見の全体の美しさ(刃文が明るく入っていていかにも切れそうとか、がっしりしていて研ぎ減っていない)に惹かれるのに対して、慣れてくると段々と刀の隅々まで見ていくようになるので、全体の美しさも勿論ですが、それ以上に色々な変化を楽しみたいという欲求が加わるのかもしれません。


④終わりに

ヒケ疵も入っていないような無疵の刀は現代刀でも難しい。
それすら嫌な人は研いだ直後の刀を大切に愛でるしかありません。
鍛え割れや刃欠けなど、古刀には沢山疵があります。
細かく見ていけばそれこそキリがない。
買ってから「あ、ここにも疵が。あ、ここにもあった。」という事が結構続きます。
そこで後悔するかしないかはやはり買う前に良いなと思ったその刀の良さをどれだけ自分の中で受け止める事が出来るか、これが大事なのでしょう。
疵が多い日本刀もそれも歴史の一つ、疵一つ一つを始めから受け止められている方を見ると尊敬します。
私も古刀を実際に買って毎日見るまで、なかなか受け止める事は出来ませんでした。

そういえば刀を初めて買う際に店主の方が「一周すると新々刀や新刀も良く思える」と仰っていたのを思い出したので改めてその話を店主の方にすると、「今中村さんは古刀以外買う気が起きないでしょ?」と。
「今のところはそうですね」と答えると、「新々刀や新刀にも同じくその良さを受け止める器があるんだよ」と。

いやぁ、なるほど。
実に深いお話でした。
刀の良さを受け入れる器、簡単そうで難しいですが自分の中でその器を大きくしていきたいものです。

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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