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目貫の面白さについて感じた点など

最近目貫にも手を出し始めたのですが、鑑賞会などにいくとこの小さな目貫をルーペを使って夢中でのぞき込んでいる方がいます。
ずっと何を見ているのか、疑問に思っていたのですが、なるほどこれは奥が深い…と最近感じたので目貫の面白さについて感じた事を書きます。

①目貫とは

目貫は柄の中央部あたりに装着されている金具の事です。
本来は茎孔を通して柄と刀身を固定する目釘の用途として使用されていましたが、段々と目釘の役割は無くなり装飾性が高くなります。
デザインは龍や虎、植物、動物、道具など様々で材質も金、銀、素銅、赤銅、山銅、四分一、真鍮、鉄など様々です。

最近購入した桃山時代頃の後藤家の二匹獅子の目貫


②目貫には見所が沢山

最近上の後藤家の獅子目貫を買った事もあり、もっと後藤の知識をつけたいと思い大正2年に発刊された本を買ってみました。
この中に載っている後藤家家彫亀鑑が目的です。(この本自体が歴史…)

後藤家は室町時代から将軍家に仕えた金工の名門で幕末まで17代続きますが、特に3代までは無銘物しかなく極めた物しかありません。(4~6代もほぼ全て無銘)
その極めを行っていたのも後藤家であり、代々祖先の作の見極め所をメモしていたようで、それがこの本に載っています。
伝書は過去に何度か写し直しを行っているので間違っている箇所もあるらしいのですがだいぶ正確らしいです。
このような感じでスケッチ風の絵と共に祐乗(初代)はこう、宗乗(二代)はこう…みたいな感じで微妙な違いなどが記されています。

因みに以下が後藤家初代祐乗の目貫です。

(画像出典:特別展 戦国武将のよそおい)

これを「後藤家彫亀鑑」を読んでみて見極め所(見所)に赤丸をすると、なんと以下のような状態に…。
最近の研究結果などを合わせれば更に多いかもしれません。

(画像出典:特別展 戦国武将のよそおい)

昔後藤家の龍目貫を並べて違いが全く分からん…みたいな記事を書いたのですが、なるほどこういう点を1点1点細かく見ていけば確かに胸の模様が違うとか、玉の形が違う、鱗の形が、尻尾の形が…などと違いに気づけるのかもしれない。
たった3cm程度の中にこれだけの作者の個性が詰め込まれているのだ。
鱗一つをとっても一つ一つを鏨で立体的に繊細に表現しているまさに超絶技巧が目貫なのである。
そして表だけでなく、それ以上に裏も大事な見所だったりする。
目貫の縁の薄さや高低差、根の形など。

勿論安い物は型で抜いてお終い、という物もある。
しかし手間をかけた目貫は刀同様に作者がその時代に紛れもなく命を懸けて作ったものであり、その魂が作品に詰め込まれ、特徴が隅々まで現れているのだ。
鑑賞会でルーペ片手にじっくり鑑賞されている玄人の方はそういった特徴をきっとルーペで探し出しているのだ。


③終わりに

「図譜を買うなら大きな写真の物が良い。」
昔教えて頂いた事だが今なら理由が分かる。
そして目貫の両面の写真が載っていないと意味がない。
出来れば色々な角度からの写真が欲しい。
正面と裏からだけでは見えない部分も沢山ある。

そういった視点で購入した以下の目貫を見てみると、作者の特徴が結構現れているようにも思う。
ただこの辺りはまだ後藤家の実物をみた経験が頗る低いのでそれらを沢山見てから自分なりの考えをまとめようと思う。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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