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刀の彫でよく見かける「八幡大菩薩」。どんな意味が込められているのか?

長光、兼光、広光、秋広、信国、宇多国宗、堀川国広などなど非常に多くの日本刀に「八幡大菩薩」と彫られたものを見かけます。

刀の彫り物には武士の信仰心などが現れていますが、この八幡大菩薩という彫り物にはどんな意味が込められているのか調べてみました。

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(画像出典:日本刀の彫物 著:佐藤良樹、中宮好郎)


①八幡大菩薩は武家にとって武神「八幡神」

日本で信仰される神に「八幡神」がいます。
別名、誉田別命(ほんだわけのみこと)とも呼ばれ、応神天皇と同一とされ、清和源氏や桓武平氏など全国の武家から武神として崇敬を集めました。

東大寺の大仏を建造中(749年)「宇佐八幡の禰宜の尼が上京して八幡神が大仏建造に協力しようと託宣したと伝えた」と記録にあり、早くから神仏習合(神道と仏教が融合して1つの信仰体系として再構成)していた事が分かるそうです。
因みに、神仏習合により「やはた」という訓読から「はちまん」と音読に変化したらしい。(参考:wiki)

781年に朝廷は宇佐八幡に鎮護国家、仏教守護の神として「八幡大菩薩」の神号を贈っています。(因みに神道では八幡神は応神天皇を主神として、応神天皇の母である神功皇后、比売神を合わせて八幡三神として祀っている)
これにより、全国の寺の鎮守神として八幡神が勧請されるようになり、八幡神が全国に広まることになったようです。


②八幡神が武人から如何に信仰されていたか

(参考:wiki八幡神、日本刀大百科事典)

・清和源氏は八幡神を氏神として崇敬し、日本全国各地に勧請。

・平将門は「将門記」では939年に上野の国庁で八幡大菩薩によって「新皇」の地位を保証されたとされている。

・源頼義(988~1075)は、河内国壷井(現在の大阪府)に勧請して壺井八幡宮を河内源氏の氏神とした。

・源頼義の子である平安後期の武将、源義家(1039〜1106)は、父の頼義が八幡神から剣を賜るという夢を見て生まれたといい、石清水八幡宮で元服、
八幡太郎義家と名乗る。

・その子孫である源頼朝(1147~1199)も八幡神を尊崇し、鎌倉に鶴岡八幡宮を創設。「吾妻鏡」には鎮守府八幡宮への参詣の様子も記されているらしい。頼朝が鳩作りの刀を大切にしたのも、鳩が八幡神の使いという信仰があったからとの事。(鳩作りの刀が何を指しているかは調べたが分からなかった)

八幡神は武家を王朝的秩序から解放し、天照大神とは異なる世界を創る大きな役割があったとされ、そのことが、武家が守護神として八幡神を奉ずる理由であったようです。(引用元:wiki八幡神

そして蒙古襲来(元寇、1274~1281)の際、朝廷では山城の石清水八幡宮に敵国降伏を祈ったが、元軍が大敗したのはその為というので八幡信仰がますます高まり、刀にもよく刻まれるようになったらしい。
以下は1289年の長光の作で、七柱の神(八幡三所、伊豆箱根権現、住吉大明神、諏訪大明神、吉備津宮大明神、三嶋大明神、宇都宮大明神、日吉権現)が彫り付けてある。
「八幡三所」は、豊前の宇佐、山城の石清水、相模の鶴岡など三か所の八幡宮の事。

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(画像出典:日本刀大百科事典 著:福永酔剣)


他にも足利義教(1429~1441)は「八幡宮縁起」を絵師に描かせ自ら詞書を記し、1433年に誉田八幡宮に寄進するなど信仰の高さが伺えます。

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(画像出典:八幡宮縁起

更に更に八幡大菩薩の信仰が高まると、倭寇(13~16世紀にかけて朝鮮半島や中国大陸の沿岸部や一部内陸、及び東アジア諸地域において活動した日本の海賊)の名で呼ばれる海賊船までが旗印に「八幡大菩薩」と掲げたので、これを八幡船と呼ぶようになったといいます。
倭寇たちが貿易品として持って行った刀剣の中では備前刀が良品とされ、それらには八幡大菩薩、春日大明神、天照皇大神などの彫り物があった事が
茅元儀の「武備志」や鄭若曽の「籌海図編」などに記されているようです。


③終わりに

このように八幡大菩薩はとりわけ武人(中でも源氏?)たちの間で信仰が厚かったようです。
しかしこの辺りは仏教や神道などについて深い知識が無ければ真の意味を理解する事は到底出来なさそうで私自身まだまだ勉強が必要です。
という事で、八幡大菩薩について何となく武人から崇敬されていたのだな程度にしかまだ分かってはいないのですが、恐らくこれからも想像以上に八幡大菩薩の彫は見かけると思うので、その都度今回の話を思い出して日本刀に込めた当時の武士の精神や息吹を感じて見ようと思います。


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