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新刀の重要と特重の差が分からない

本日珠玉の名品展第3期を見てきました。
やはりこの展示に並ぶ刀というのはもう別格というかどれも夢に出てきそうな名刀ばかりです。

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珠玉の名品展とは、民間指定(日刀保指定)の最高峰の指定である特別重要刀剣の中でも更に出来が傑出しているもののみを選出したいわば民間にある刀の頂点を並べた展示会です。
明日2021/12/22まで刀剣博物館で行われています。
勿論全てが国の重要文化財に匹敵するでしょうし、中には国宝クラスの物もあります。ちなみに展示品は室町時代以前の古刀が9割以上を占め、新刀や新々刀は少なかったです。

ところで刀は「健全さ」と「出来」という2つが美術品としての評価を高める重要な要素となっています。
800年前の刀と400年前の刀が同じ状態、同じ出来で残っていたとしたら、800年前の刀の方が評価は高いのは言うまでもありません。
故に古刀と新刀どちらが優れているなどの話ではなく、新刀の方が歴史が浅い分、古刀に比べると特重などの指定数が減るというのはいわば当たり前かもしれません。
裏を返せば新刀で特別重要刀剣に指定されるというのはそれだけ同時代の物と比べても出来が傑出している事に他なりません。(新刀は重要刀剣指定を受けていればそもそも健全なので。他にも伝来の差というのもあるかも)

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ですが、この新刀の出来の差が私はイマイチよく分かりません。
言い換えれば、新刀の重要刀剣と特別重要刀剣の差が分かりません。
古刀であれば健全という点で他の重刀などと差別化が出来たりします。
なのでとても健全な古刀があれば特重かな?なんて何となく分かるのですが。それだけ古刀で健全な物は少ないので。
出来についても地刃が明るいとか、地鉄に潤いがあるとか、匂口が柔らかいなどなど何となくですが分かる気がします。

しかし新刀は全く分からない。
健全さは先に挙げたように重要でも充分に健全な物は沢山あります。
なので健全さが重要と特重の主な差ではないはず。
やはり出来の差なのだろう。
何となく古刀にも言えるような地刃が明るいとか、地鉄に潤いがあるとか、そんな作が選ばれているような気もする。
でも重要刀剣の中にも似たような作はあり、それらと明確な差は何かと言われればよく分からない。
具体的に書けば特重の助広の濤瀾刃と、重刀の助広の濤瀾刃の違いが分からない。両方匂い口はふわっと柔らかく深いし刃も明るい。

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助広に限らず他の刀工も分からない。
違いが分からないので刀剣本などで評価の高い新刀作を探してみると、「この国広の作は貞宗を彷彿とさせるような出来で国広の技量の高さを感じる」とかいった表現をよく見かけるし、そういった作が昔から高く評価を受けている気もする。
あくまでそんな気がするだけなので、実際の選別基準は分からない。

しかし古名刀のように見えるから素晴らしいという基準であったとしたら、美の基準は古刀基準になっている気もする。
でもそれであれば古刀だけ特重に指定していれば良いはずだ。
しかしそんな事はありえない。
それはやはり新刀には新刀の良さがあるからだ。

もしかすると新刀の美というのは、それまでの古刀の美とはまた別の所にあり、古刀とは別の視点で見ない限り分からないのではないか。
長い戦の時代が終わりようやく平和な時代へと移り変わる中で、武士の思想や刀の扱われ方が変化し、その中で新しい形となって適応したのが新刀という時代。
一方で古刀はまさに戦ばかりの時代に生まれた刀。
2つを同様の視点で比べる事自体が可笑しなことなのかもしれない。

確かに新刀の時代に古名刀の写しが多々存在しているのは確かで、古名刀の技術力の高さを当時の人が認めていたという可能性は高い。
でもだからといって美の視点を古刀と同じ所に持ってしまうと古刀第一主義となってしまい段々と新刀の美がどこにあるのかが分からなくなってしまうのかもしれない。まさに今の私の状況。

そういえば昔刀屋さんが「多くの人は現代刀や新刀などから入って段々と古刀にいく。そして一周すると新々刀や新刀もまた良く思える」と仰っていたのを思い出す。
その時に店主が「今中村さんは古刀以外買う気が起きないでしょ?」と仰り、「今のところはそうですね」と答えると、「新々刀や新刀にも同じくその良さを受け止める器があるんだよ」という深い話をされていましたが、要するに突き詰めるとそれが答えなのかもしれない。

と今回の珠玉の名品展を見て感じました。

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当時の刀屋さんの話は以下に書いていますので、よろしければご覧ください。


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